Seleniumと比較したPlaywrightの強味
PlaywrightとSeleniumはどちらもブラウザの自動化フレームワークであり、クロスブラウザ対応やUIテストの自動化、ブラウザ操作のスクリプト化など共通する機能や特徴があります。この記事はすでにSeleniumへの知識があり、Playwrightへの移行を検討している人に向けて、Seleniumと比較した時のPlaywrightの強みをまとめています。
1. 複数のブラウザエンジンに対応
Playwrightは、1つのAPIで以下の複数のブラウザエンジンに対応しているのが大きな特徴です。
- Chromium(Google Chrome、Microsoft Edge)
- Firefox
- WebKit(Safari)
Seleniumも複数のブラウザ(Chrome、Firefox、Edge、Safari)をサポートしていますが、PlaywrightはWebKitエンジンにも対応しているため、Safariに近い挙動を再現することができ、クロスブラウザテストの幅が広がります。
2. 自動的なブラウザのインストール
Playwrightでは、ライブラリのインストール後にブラウザのバイナリを自動的にインストールします。これにより、異なるブラウザエンジンをすぐに使用できる状態になります。
Playwrightのplaywright installコマンドで、対応するブラウザバイナリがインストールされます。
Seleniumでは、ブラウザドライバ(chromedriver, geckodriver, safaridriverなど)を手動でインストールする必要がありました。
3. ネイティブでヘッドレスモード対応
Playwrightはネイティブでヘッドレスモードに対応しており、バックグラウンドで効率的にテストを実行できます。Seleniumもヘッドレスモードをサポートしていますが、Playwrightのヘッドレスモードは非常に高速かつスムーズに動作します。
4. コンテキストとセッションの分離
Playwrightは、ブラウザコンテキストという機能を提供しており、複数のユーザーセッションを1つのブラウザインスタンス内で並行して実行することができます。これにより、複数のウィンドウやタブを管理する場合に、それぞれのコンテキストが分離されているため、簡単に異なるユーザーのシナリオを同時にテストできます。
Seleniumでもセッションを分離することはできますが、通常は別のブラウザインスタンスを起動する必要があるため、リソースの消費が増えます。Playwrightでは、1つのブラウザインスタンスで複数のコンテキストを管理できるため、リソースの効率が良いです。
5. 自動待機機能(Auto-waiting)
Playwrightの大きな強みの一つに自動待機(auto-waiting)機能があります。Playwrightは、要素の表示や非表示、ロード、ナビゲーションが完了するまで自動的に待機します。
Playwrightでは、clickやfillなどの操作が実行される際に、要素が表示されるまで待機するため、手動での明示的な待機の設定が不要です。
Seleniumでも同様のことが可能ですが、開発者が明示的にWebDriverWaitなどを使って待機条件を設定する必要があります。これに比べてPlaywrightは、自動で適切に待機するため、スクリプトがシンプルになります。
6. ネットワークのモックやインターセプト
Playwrightは、ネットワークリクエストのモックやインターセプトを簡単に行うことができ、外部APIへのリクエストをカスタマイズしたり、レスポンスを変更することができます。これにより、リアルな環境とは異なる状況下でのテストが容易です。
例えば、APIからのレスポンスをモックして特定のシナリオをテストしたり、オフラインモードのテストを行うことができます。
Seleniumでは、これを行うためには追加のツールやライブラリが必要なことが多く、Playwrightのようにスムーズに扱うことは難しいです。
7. ページのスクリーンショットやPDF生成が簡単
Playwrightは、ページのスクリーンショットやPDFの生成を簡単に行う機能を提供しています。
スクリーンショット:特定の要素やページ全体のスクリーンショットを簡単に取得できます。
PDF生成:ページをそのままPDF形式に変換して保存する機能もあります。
Seleniumでもスクリーンショットは取得できますが、PDF生成は標準機能としては提供されていません。
8. 速度とパフォーマンス
Playwrightは全体的に高速で、特にヘッドレスモードでの実行が非常に効率的です。
特に、ネットワーク通信やI/O操作において、最適化された内部設計があり、Seleniumと比べて同じタスクをより迅速に実行できることが多いです。
また、ページの操作やリソースの読み込みもスムーズに行えるため、大規模なWebアプリケーションのテストにも適しています。
9. モダンなAPI設計
PlaywrightのAPIは、Seleniumよりもモダンで直感的に設計されています。特に、非同期処理(async / await)をサポートしており、非同期タスクを効率的に扱うことができます。
非同期サポート:Playwrightは、デフォルトで非同期操作に対応しており、複数の操作を同時に行う場合に効率的です。Seleniumでは、非同期処理のサポートはあまり進んでおらず、非同期操作を実現するには手動で工夫する必要があります。
まとめ:Playwrightの強み
- 複数のブラウザエンジン対応:Chromium、Firefox、WebKitを1つのAPIで操作可能。
- 自動インストールのブラウザバイナリ:Playwrightはブラウザドライバを自動で管理・インストール。
- 自動待機機能:要素の準備が整うまで自動で待機するため、明示的な待機設定が不要。
- ネットワークリクエストのモックやインターセプト:リクエストやレスポンスのカスタマイズが簡単。
- 効率的なブラウザコンテキスト管理:複数セッションを1つのブラウザで効率的に管理。
- ページのスクリーンショットやPDF生成が簡単:標準機能として提供。
- 高速で軽量:特にヘッドレスモードでのパフォーマンスが良い。
- モダンで直感的なAPI:非同期処理をサポートし、最新のWeb技術に対応。
番外編:Playwrihgtがseleniumにかなわないポイント
Seleniumは長年にわたって開発・進化してきたツールであり、そのためいくつかの機能や特性はPlaywrightにはまだ対応していない部分があります。以下は、SeleniumにできてPlaywrightにはできない、またはSeleniumが優れている点です。もしこれらのポイントに重点を置いている場合は、Playwrightへの移行は時期尚早かもしれません。
- モバイルブラウザのサポート(Appiumとの統合):
Seleniumは、Appiumとの統合によりモバイルブラウザ(iOS/Android)のテストが可能です。これにより、モバイルアプリの自動テストやモバイル版のWebページのテストができます。
PlaywrightはWebブラウザの自動化に焦点を当てており、ネイティブモバイルアプリやモバイルブラウザのテストには対応していません(ただし、デスクトップブラウザをモバイルデバイス風にエミュレートする機能はあります)。
- 大規模なブラウザサポート:
Seleniumは非常に多くのブラウザやバージョン、プラットフォームをサポートしています。たとえば、Internet Explorerや旧版のブラウザにも対応しており、企業のレガシーシステムで必要とされる場合があります。
Playwrightは主要なモダンブラウザ(Chromium、Firefox、WebKit)に限定されています。
- クラウドテストプラットフォームとの統合が進んでいる:
Seleniumは、Sauce LabsやBrowserStackなどのクラウドベースのテストプラットフォームとの統合が進んでいます。これにより、複数のOSやブラウザ、デバイス上で同時にテストを実行することが容易です。
Playwrightもこれらのプラットフォームに対応していますが、Seleniumほど広範なサポートを受けていない場合があります。
- ブラウザの自動操作のみではない:
Seleniumは、ブラウザだけでなく、特定のブラウザドライバ(WebDriver)を使って、OSレベルの操作やウィンドウ管理なども行えるため、単なるブラウザ操作以上の制御が可能です。
Playwrightは基本的にブラウザ内の操作に特化しています。
- レガシーシステムへの対応:
Seleniumは長い歴史があり、レガシーシステムや古いテストスイートにおいても、互換性が保たれていることが多いです。そのため、企業の長期間運用されているプロジェクトではSeleniumが引き続き利用されています。
Playwrightは比較的新しいフレームワークのため、レガシーシステムや過去のバージョンのブラウザ対応に乏しい場合があります。
おわりに
Seleniumは長年の実績があり、サポートされている環境が多いという強みがありますが、Playwrightは特にモダンなWebアプリケーションのテストや自動化で優れた機能を持っており、開発速度と効率性を重視した場合に強力な選択肢となります。
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