エンジニアを困らせない。生成AIで作る「PRD(要件定義書)」の構造的記述法とテンプレート
はじめに
プロダクト開発において、エンジニアのパフォーマンスを最大化するためにPdMができる最大の貢献は**「迷わせないドキュメント(PRD)を書くこと」**です。
「ここってどうなるんですか?」
「エラー時の挙動が決まってないので止まってます」
こうしたコミュニケーションコストは、開発速度を著しく低下させます。
本記事では、手戻りを防ぎ、実装スピードを加速させるための**「構造化されたPRDの記述フォーマット」**を共有します。
アンチパターン:自然言語での丸投げ
近年の生成AIブームにより、ChatGPT等に「仕様書を書いて」と指示するケースが増えていますが、多くの場合、出力されるのは以下のような"浅い"文章です。
「ユーザーがログインボタンを押すと、マイページに遷移します。適切なエラー処理を行います。」
これでは実装できません。
- 遷移時のローディング表示は?
- 通信エラー時のリトライ処理は?
- 「適切」とは具体的にどのようなUIか?
エンジニアが必要としているのは「雰囲気」ではなく**「確定したロジック(Criteria)」**です。
解決策:5つの必須項目を埋める
私は実務において、以下の5項目をテンプレート化し、必ず埋めてからエンジニアに渡すようにしています。
1. Context & Why(背景と目的)
「何を作るか」の前に「なぜ今それが必要か」を定義します。
ここが明確であれば、仕様の矛盾が生じた際にエンジニアが自律的に最適解を判断できます。
2. User Story(ユーザーストーリー)
ユーザーの一連の操作フローを時系列で記述します。
- 前提条件(Pre-condition):ログイン済みであること
- トリガー(Trigger):保存ボタンを押下
- 結果(Result):トーストが表示され、一覧画面へ遷移
3. Acceptance Criteria(受入基準)
ここが最も重要です。Gherkin記法(Given/When/Then)などを参考に、完了条件を明確にします。
-
正常系: データが正しく保存され、DBの
updated_atが更新されること - 異常系: ネットワーク切断時、"再試行してください"というダイアログが出ること
4. Impact & Risk(影響範囲)
既存機能へのサイドエフェクトや、データマイグレーションの必要性を記述します。
5. Metrics(計測指標)
リリース後に何を追うのか。埋め込むべきログイベント名とパラメータを定義します。
まとめ
ドキュメント作成は「文章力」ではなく**「構造化能力」**です。
毎回ゼロから書くのではなく、チームで合意した「型(テンプレート)」を用意し、そこに必要な情報を流し込むフローに変えるだけで、開発効率は劇的に向上します。
▼ 実装テンプレートの配布
本記事で紹介した「PRD完全フォーマット」や「リリース前チェックリスト」など、実務ですぐに使えるNotionテンプレートをnoteで公開しています。
ドキュメント作成の時間を短縮したい方は、以下を参照してください。
(AIへの指示プロンプトの雛形としても利用可能です)
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