LLMを使った思考・情報設計の新たな可能性:試行錯誤から得た実践的ヒント
はじめに
この記事は、生成AI Advent Calendar 2024 の12日目の記事です。2024年を通じて、私(zawakin)はLLM(大規模言語モデル)をただの質問応答ツールにとどめず、人間の思考や組織運営、知識構造を再考する「思考インフラ」として活用する可能性を探ってきました。
ここで紹介する考え方や手法は、あくまで私の試行錯誤の産物です。すべてが「常識」や「定石」ではありませんが、LLM活用を考える上でのヒントになれば幸いです。
視点の拡張:コンテキスト設計から「座標的」理解まで
コンテキストをUI/UXとして設計する
LLMに情報を渡す際、長い説明を一度にまとめる代わりに、定型質問やYes/No形式などで段階的に理解を深める手法を試しました。これによって、LLMが背景知識をより自然な流れで取り込めるようになり、使う側にとっても「面倒な説明」を少しずつ整理できる感覚が得られました。UI/UXとしての対話設計を意識すると、LLMの理解をスムーズにする効果を実感しています。
抽象的な関係を「座標化」して捉える
経済・文化・歴史といった定性的な事象を、あくまで比喩的に「座標空間」にマッピングして関係性を眺める視点も新鮮でした。正確な数値化ではなく「ざっくりとした位置取り」として捉えることで、概念間の距離感や全体像をイメージしやすくなります。LLMを介してこうした座標的な見方をすると、複雑な情報を整理しやすくなると感じました。
組織評価やモデル連携の実験的アプローチ
微細な情報で組織理解を補完する
KPIやアンケートだけでは把握しづらい組織の「微妙な状態」を、SlackログやコメントをLLMで要約・抽出することで補完できると感じました。表面上うまくいっているようでも、その裏でくすぶる懸念やニュアンスを拾う手助けになり得ます。
上流・下流モデル間のフィードバックループ
戦略立案用のモデル(上流)と、実装サポート用のモデル(下流)を使い分け、その間に参照・修正を繰り返すフィードバックループを敷くことで、一貫性のあるタスク運用が可能になりました。人間同士のやり取りと同様に、LLM間でも適宜振り返りを行うと、混乱が減り、プロセスが滑らかになります。
課題と改善の余地
コンテキスト収集の設計コスト
定型質問の準備など、最初の手間は避けられません。しかし、その労力は後々の対話効率を上げる投資と捉えています。最初さえ乗り越えれば、LLM活用はより直感的なものになるはずです。業務コンテキストをいかに素早く言語化しておく仕組みを作れるかが鍵ですね。
抽象化や情報活用における倫理・プライバシー面
「座標化」や「微細な状態の抽出」は面白い一方、単純化や誤解のリスク、プライバシーへの配慮が必要です。面白さや便利さを追求するあまり、乱暴な使い方をしないよう常に注意が求められます。こういうところをしっかりやり切ることがとても大事だと日々感じています。
LLMを「思考インフラ」に
これらの試行を通じて、LLMは単なる回答装置ではなく、人間の思考様式や知識体系を整理・拡張する「思考インフラ」になり得ると感じています。モデルと共創し、新たな観点やアイデアを引き出していくことで、私たちの知的生産性はさらに高まるでしょう。日々の仕事や学習がちょっとワクワクしたものになるかもしれません。
まとめ
2024年の試行錯誤から得たポイントは、以下の通りです。
- コンテキストをUI/UX的に設計し、LLMが吸収しやすい情報提供を行う
- 抽象概念を比喩的な「座標」として捉え、全体像をイメージしやすくする
- 微細な情報を補完的に活用することで、組織の状態をより多面的に理解する
- モデル間で参照・修正を繰り返すフィードバックループで運用精度を高める
- 倫理・プライバシー面に留意しつつ、LLMを思考インフラとして育てていく
もしこの中に「ちょっと試してみたいな」というアイデアがあれば嬉しいです。今後もこのような試行錯誤を発信していこうと思いますので、共感するところがあれば、ぜひX (@zawawahoge)と繋がってもらえると嬉しいです。一緒に新しい思考インフラを作っていきましょう!
ありがとうございました!!
Discussion