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社長だけど、AIのお陰で昔みたいにプロトタイプ作って客先に行けるようになった話

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この記事は2025 ZAICO アドベントカレンダーの6日目の記事です。

自己紹介

こんにちは。株式会社ZAICOの代表をやっているzaicotamuraです。簡単に私について話すと新卒でSIerに入り、その後クラウド会計スタートアップに入り、実家の倉庫業の手伝いを経て在庫管理のスタートアップを始めました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

最近の悩み

創業から数年の間はまだ会社も小さく、事業も手探りだったため、お客さんに「こんなのないの?」と言われたら、2〜3日かけてコーディングして簡単なプロトタイプを作って、お客さんに見せに行くということをよくやっていました。この時は会社のサイズも小さく、社長としての管理業務も少なかったので業務時間の多くの部分をプログラミングに充てられたし、1つの作業に集中する時間が確保できました。

しかし、ZAICO社のメンバーも70人を超えるようになり、役割上、エンジニアリング以外の業務をより多く行う必要がでてきたため、ここ2〜3年は私自身が製品本体のプログラミングをすることはなくなってしまいました。(趣味がてらこっそり便利ツールを土日に作って、補助ツールとしてリリースすると言う事はやっていましたが)

こういう状況だとあるアイデアがあったとしても、Googleスライドにその概要をまとめて、お客さんに見せるということぐらいでしたアイデアの検証ができない状態でした。もちろん、資料でアイデアを十分に伝えられる力というのは非常に重要なスキルである一方、資料ベースでやりとりすると、

「なんか良さそう。でも本当に使えるかどうかは実際に使ってみないとわからないから、モノができたら検討するね」

といった会話になってしまうことが多いです。やはり簡単でもいいから、実際に動くもの、お客さんが明確にイメージできるものがあると話は一気に進みます。

本題

そんなモヤモヤを抱えていた時、新しいお客さんの現場に訪問できると言う機会を得ました。棚に積まれた大量の部品を自動的に在庫管理できないかと言う課題をお持ちのお客様でした。

※現場のイメージ

この課題をいただいた時、これは画像認識を行って在庫数量を類推することができるなと考えました。昔であれば三日三晩部屋に閉じこもってその検証用のプロトタイプが作れたけれども、Googleカレンダーの予定を見ると、なかなかその余裕はなさそうです。

一方で、バックエンドまで含めて作ろうとすると時間かかりそうだけれども、そこはzaico API に任せて画像の取得及び画像認識を実行するフロントエンドの部分だけをAIで作れば、そこまで時間がかからないのではないかと思い、最近のAIの進化を知るためにも、ちょっとやってみました。

余談ですが、私は最低でも月一回は必ずお客さんの現場に足を運ぶようにしています。そうしないとお客さんの実像を忘れてしまい、事業判断を誤るのではないかという恐怖から、欠かさずやっています。

作ったもの

  • パソコンに接続されたウェブカメラから棚の様子を撮影
  • 物品の数量が0個の場合、半分の場合、満タンの場合の画像をカメラを動かさずに取得。これらを教師データとする
  • 任意のタイミングで撮影された棚の様子と、事前に取得しておいた教師データをAIに比較させて、現在の在庫数を推定させる
  • 在庫数量の記録先はzaicoを使い、そのデータの取得登録はzaico APIを経由して行う
  • 画像の比較による推定にはGemini APIを利用する

上記の仕様をより詳細に書いたプロンプトを作り、GeminiのCanvasに放り込みました。

すると、いきなりそのチャット上で動作するそれっぽいものが作れたので驚きました。もちろん考えていたものと違った部分があったので、その部分はチャットラリーして直していきました。しかし、15ラリーほどしたらコンテキストの上限に達したのか、実行エラーが出るようになったので、そこまでできたソースコードをダウンロードしてローカルにそのソースコードを置き、続きの作業をGemini CLIでやるようにしました。会社でGoogle Workspaceを契約しており、Geminiが存分に使えたので、それを使い倒そうと考えました。

そして、できたのがこちら↓



もっと作り込むことができたと思いますが、お客さんの現場で試してコンセプトを検証するには十分な出来となりました。ウェブカメラからの画像の取得周りなど、もしAIがなければ、とても自分では作りきれなかったなと感じています。試行錯誤を含めて4時間でプロトタイプが作れたのは驚きです。

実戦投入

さて顧客訪問当日を迎え、このプロトタイプを実際のお客さんの現場で試させてもらいました。

確かに在庫数推定について一定の精度が出ましたが、実際にお客さんと一緒に操作したところ、1つの物品に対して教師データを何枚も撮影して設定すると言うのが現場スタッフにとっては難しいため活用するのは難しい、フィードバックをもらいました。エンジニア出身の身からすれば、1物品3枚程度の学習データで、ある程度在庫数が一定以上の精度で推定できるのは、昔の画像認識技術に比べればかなり画期的かなと思いましたが、お客さんの現場ではそれは通用しないということが確認できました。そういったやりとりの中でお客さんと深い会話ができ、より踏み込んだ議論ができたので、結果的に別の提案が生まれ、次に繋がりました。

もしこれがGoogleスライド等で作った資料で、このコンセプトを紹介したら「良さそうですね。今度できたら試させてください」→「実際に作ってみる」→「やっぱりダメとなる」とかなりコスト高になるところ、1度の訪問で提案から仮説検証まで行うことができた費用対効果がとても高い出張となりました。

学び

これだけだと何か自分語りのようで申し訳ないので、自分の学びを共有します。

最初のイメージの具現化はGeminiのCanvasがおすすめ

アイデアが思いついたら、Web版のGeminiのCanvasでサクッとプロトタイプを作ってみるのはオススメです。細かい環境設定をしなくても一通りそのチャット内で動作するプロトタイプを作ってくれるます。後から作り込まなければならないところを、よしなにスタブして作ってくれるので。

プロンプトを書く過程でアイデアが磨かれる

アイデアを動くものにしようとプロンプトを作っていると、必然的に紙の資料に書くよりも細かい粒度での言語化が求められるので、自分のアイデアが整理されます。

バックエンドに自社の公開APIを利用するとすぐ作れる

zaico APIと言うバックエンドが既に存在しているのは非常に作りやすかったです。今後も、在庫管理に関する簡単なツールはzaico APIをバックエンドとすれば、かなり高速に開発できるのではないかと思います。「バックエンドは既存のAPI」という縛りがAIが生成するコードの幅を良い意味で狭め、早期のアプトプットに繋がります。

AI使ってもそこそこ時間はかかる

一方で、AIを使ったプロトタイピングといえども、4時間ほど時間を消費してしまったため、まだ解くべき課題が不明確だったり、自分のアイデアに確信がない段階では、簡単なポンチ絵を書いて、会社の人やお客さんにフィードバックをもらった方が良いと思います。今回は顧客課題が一定以上明確で、ソリューションをどうするかという問いだったため、プロトタイピングが適していました。

感謝

いろいろ書きましたが、動くものを作って、それをお客さんに当てて、あーでもないこうでもないと議論し、それが次の事業やアイデアへと繋がっていくのは、シンプルにとても楽しいです。ありがとう、AIコーディング。

次回の担当はhamayouさんです。ぜひお楽しみに!

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