自律的なキャリア形成を促す:スキル目標管理でエンジニアリングチームを強化
はじめに
私の所属する企業では、全社的にスキル評価制度が整えられていて、スキル評価を年に1回行い、必要に応じて上長からフィードバックをもらえる仕組みとなっており、昇格などのキャリアアップにスキル評価の評点を用いる仕組みとなっています。
実態として年に1回去年の評価点と見比べながら被評価者が自己評価を入力し、評価者が1次評価(課長クラス以上)~2次評価(部長クラス以上)を入力して、「今年昇格候補に挙がるか否か」のフィードバックがされるという運用をしていました。
この制度は、一定の評価基準に基づいて個々のメンバーの前回評価からの成長を評価することは可能であるものの、チーム全体での共通のスキル目標の意識合わせや中長期的なキャリア形成に向かって自律的に行われるにはプロセスの不足を感じていました。
そこで私は、スキル目標管理に関わる新たなプロセスを導入する取り組みを行うことにしました。
単なるスキル評価ではなく、メンバーが自身の成長と教育に積極的に取り組む文化を醸成し、それがチームの強みとなる環境を作り出すことをモチベーションとしています。
前提
私=エンジニアリーダー(役割 Not 役職)
評価者(課長以上の役職)は別の人
目標管理(MBO)とは
会社から言われて当たり前にやっているけど、そもそも目標管理って何なの?というところが気になったので、調べてみたところ
もしドラでおなじみのドラッカー氏が提唱したMBO(Management by Objectives and Self-control)を日本では目標管理として多くの企業で使っていること
「Objectives(共通の目標)」と「Self-control(自律的な改善)」を「Management(管理)」して最大の成果を得よ!というお話と理解しました。
Self-controlの部分が日本語訳で抜け落ちてるの罠だと思います
Objectives(共通の目標)を持つための施策
施策:スキル評価項目のカスタマイズ
共通の目標を持つための施策として、スキル評価項目をチーム内で業務内容に合わせて具体化を行いました。
スキル評価項目と評価点は全社レベルで定められたものだったので、抽象度がどうしても高くなってしまいます。そのため、そのまま使うと、個人レベルで解釈がわかれたり、チームの業務内容と合わない部分がるなどの不具合が発生していると考えました。
この施策により、メンバーのスキルや貢献度を正確に反映できるようになったと思っています。
工夫ポイント
- 全社の評価項目を作った部署にカスタマイズして使用することの了承を得る
- 評価項目作成時の関係者にヒアリングし、評価項目・基準作成時の意図や思いを確認する
- 評価項目の認識合わせの打ち合わせはチーム全員で行い、決定事項はドキュメントに残す
- 評価過程で認識合わせなどが行われた場合、ドキュメントを継続的に更新していく
Self-control(自律的な改善)を行うための施策
メンバーが自律的に成長し、自己改善を進めるための施策として、期初にメンバーそれぞれが中長期的なキャリアビジョンを基に、今年のスキル評価時に達成したい点数を宣言するプロセスを導入しました。
具体的なプロセス
- キャリアビジョンの設定とスキル目標の宣言
- 期初に各メンバーが自身の中長期的なキャリアビジョンを明確にし、将来どのようなスキルを習得し、どのようなポジションを目指すかを具体的に描きます。そこから逆算し、今年のスキル評価時に達成したい点数を宣言します。
- 1on1ミーティング
- エンジニアリーダーである私がメンバーのスキル目標に対する進捗状況を確認します。2週間に1回30分でショートに行い、スキル目標の達成に向けて障害となっていることがないか、何かサポートできることはあるかという観点で会話を行っています。
- スキル評価入力前の面談
- これまでは、スキル評価者の評価後にフィードバックが行われる仕組みでしたが、評価が確定した後では何を言っても覆ることがないため納得感がないと考え。スキル評価のタイミングで、自身のスキル評価点数の達成度とスキル向上項目に対する考えを評価者に説明する機会を設けました
よかったこと
- メンバーからはモチベーションが向上し自己成長に対する意欲が高まったという声をもらえた。
- エンジニアリーダーとしても、ティーチング・コーチング時に会話する軸ができることで、「~さんが成長して、この項目の点数が挙がった」などある種ゲーミフィケーション的にほめることが行えて楽しかった。
反省点
- 「エンジニアのスキル向上により生産性が~向上した」のようなわかりやすい定量的な測定指標を事前に考えておけばよかった
- 私(エンジニアリーダー)と評価者(課長・部長クラス以上)が異なるため、1on1で認識あわせしながら進めた評点が評価時に覆ることがあり、納得感を最大化できなかったメンバーもいた
- 課長・部長クラス以上の評価観点をなるべくフィードバックしてもらい吸収することで、次年度同じことが起こらないように改善していきたい
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