AP2(Agent Payments Protocol)を体験!
AP2(Agent Payments Protocol)とは何か
概要
Googleが発表したAIエージェント向けの決済プロトコルAgent Payments Protocol (AP2)を発表しました。
AP2の特徴は、クレジットカードやデビットカードといった従来の決済手段だけでなく、ステーブルコインや暗号通貨などの新しい支払い方法にも対応している点です。さらに、Agent2Agent (A2A) ProtocolやModel Context Protocol (MCP)との連携も想定されており、既存のエージェントエコシステムとシームレスに統合できる設計となっています。
なぜAP2が必要か
AIエージェントが自律的に決済を行うになるは、以下の3つの課題を解決する必要があります
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承認(Authorization):ユーザーがエージェントにどこまでの購入権限を与えたのかを明確に証明できる仕組み
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真正性(Authenticity):販売者側が「この取引は本当にユーザーの意図したものか」を確信できる仕組み
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説明責任(Accountability):誤った取引や不正な取引が発生した場合、責任の所在を明確にできる仕組み
AP2はこれらの課題を解決し、AIエージェントによる取引においても人間による取引と同等の信頼性と安全性を提供します。
核となる概念:Mandate(委任契約)と検証可能な認証情報
AP2の中核となるのが「Mandate(委任契約)」という概念です。これは暗号的に署名された、ユーザーの意図や条件を明示する契約書のようなもので、2つのタイプが存在します:
- リアルタイム購入(人間が立ち会う場合)
例:「白いランニングシューズを探して」
- ユーザーの依頼からIntent Mandate(意図の委任契約)を作成
- エージェントが商品を提示し、ユーザーが確認
- ユーザーが承認するとCart Mandate(カートの委任契約)に署名
- 支払いを実行
- 委任型タスク(人間が立ち会わない場合)
例:「コンサートチケットが発売されたら自動購入」
- 価格上限や条件を含むIntent Mandateを事前に作成
- 条件に合致したら自動的にCart Mandateを生成
- 自動で支払いを実行
この仕組みにより、「誰が・何を・いつ承認したか」という履歴が暗号的に検証可能な形で記録されます。
AP2デモ体験
セットアップ
- githubのリポジトリをクローンします。
git clone https://github.com/google-agentic-commerce/AP2.git
- Google AI StuidoのAPIキーを発行し、envファイルに設定
echo "GOOGLE_API_KEY=your_key" > .env
- サンプルファイルを実行
bash samples/python/scenarios/a2a/human-present/cards/run.sh
- http://0.0.0.0:8000に接続
デモを体験
今回は黒い革財布を購入するシナリオを試してみました。
左上の 「Select an agent」から「shopping_agent」を選択します。
1. 商品の検索
「財布が欲しいです」とチャットに入力すると、rootエージェントがshopperエージェントに商品検索タスクを委譲します。shopperエージェントが商品の詳細についてヒアリングを始めます。
2. 商品の選択
「黒で本革の財布が欲しいです。ブランドはなんでもいいです」と回答すると、shopperエージェントが以下の処理を実行します:
create_intent_mandateでIntent Mandateを発行
find_productsで商品を検索
レコメンド商品を提示
気に入った商品番号(今回は「2」)を選択すると、update_chosen_cart_mandateでCart Mandateが発行されます。
3. 配送先の設定
shopperエージェントがshipping_address_collectorエージェントに配送先情報の収集タスクを委譲します。今回はクレジットカードに紐付いた住所を使用しました。
4. 決済方法の選択
payment_method_collectorエージェントが決済手続きを担当します。事前に登録済み(という設定)のAmexカードを選択しました。
支払いが完了する
最終確認画面で「商品情報・配送先・支払い方法」を確認し、セキュリティコードを入力すると決済が完了します(デモなので実際の決済は発生しません)。
Appendix
下図は、今回のショッピングフローにおけるエージェントの状態遷移を表しています。rootエージェントがオーケストレーターとして機能し、各専門エージェントやtoolsを適切なタイミングで呼び出していることがわかります。
まとめ
AIエージェントが安全かつ信頼性を持って支払いを行うためのプロトコルであるAgent Payments Protocol (AP2)について解説しました。
OpenAIやGoogleがエージェント開発のベストプラクティスとしている、エージェントのオーケストレーションを垣間見ることができ面白かったです。
まだ試せませんが、公式ブログによるとパーソナライズされた体験(特別クーポンのようなもの?)も実現できるとのことですごく楽しみです!
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