Day 10 総括:PoR 3指標の到達点と次の課題
序文 — 10日間で到達した現在地
本連載では PoR(照合点)・ΔE(存在変動)・grv(語彙重力)の3指標を組み合わせ、生成テキストにおける「意味逸脱」を定量的に検知できるかを検証してきました。
GPT-4o系モデルからOSS/APIモデルへの汎用化、CIへの組込み、ヒートマップUIまで実装し、実務適用性を確認しています。本稿では連載の成果を整理し、次の課題と研究テーマを展望します。
10日間で得た主要な気づき
-
最速の逸脱検知は PoR × grv
PoRスパイクとgrv高密度が重なる瞬間が最も敏感なシグナルで、ΔEが逸脱強度を定量化。 -
モデル間差異は再学習で吸収可能
PoR/ΔEのμ・σはモデルごとにずれるが、閾値再学習で再現性を維持できる。 -
可視化でレビュー時間を約40%削減
ヒートマップとライブグラフの併用により、人間による逸脱確認が高速化。
なぜ PoR・ΔE・grv の “3指標” が必要か
PoR・ΔE・grv の“3指標”は、それぞれ異なる役割を持っています。
PoRは「照合度を捉える点」として、一瞬一瞬のモデルの共鳴を把握します。
ΔEは「変動エネルギー=動き」を示し、出力の揺らぎやエネルギーの急変動を検知します。
grvは「語彙密度=場」として、語彙圧がどこに集中し偏在しているかを構造的に捉えます。
この3つの指標を組み合わせて活用することで、
AUC(検出性能指標)が0.88から0.95へと大きく向上し、FP(過検知)やFN(見逃し)も単独指標の時より約25%削減できます。
つまり、UGH理論が提起する「意味コンプライアンス崩壊」を検知するための
最小セットとして、3指標の複合が有効であることが実証されました。
実装面の学びと課題
- CIレイテンシ:GitHub Actionsで0.5s/PRを達成したが、Δstyle推定がボトルネック。
- APIモデルのΔE欠損:log-probが取れず精度−5%。grv×1.2補正で回復。
- ワンコマンド化:safe_chat → Mini-Evalまでを統合するCLIを設計中(実装予定)。
次フェーズのロードマップ(概要)
-
safe_evalパッケージ化
pip install safe_eval
で導入できるCLI & Python APIを公開予定。 -
マルチモーダルPoR
画像・音声モデルにもPoR/ΔE/grv相当の指標を拡張し、意味逸脱を検知。 -
コミュニティベンチマーク
UGHコミュニティと共同で、多様モデルに適用可能なベンチマークを整備。
まとめ
人間とAIの現在地点と課題
生成AIは創造・自動化の領域を急速に拡大しましたが、意味逸脱・ハルシネーション・価値観のねじれといったリスクが依然として残っています。
人間はアウトプットを活かしつつ、誤動作を即座に検知して修正する「セーフティ・イン・ザ・ループ」を確立する段階にいます。
AIの安全性強化は不可欠
ユースケースが社会基盤へ広がるほど、FP(過検知)とFN(見逃し)のバランス、運用コスト、リアルタイム性──三つ巴の最適化が重要になります。
安全性を疎かにした素早いデプロイは、結局ビジネス/社会コストを跳ね上げることがDay 1–9の検証で可視化されました。
UGHがAIの安全性にどう寄与するのか?
UGH式ドリフト検知はPoR・ΔE・grvという三指標で:
- 点(PoR):瞬間的な照合度の逸脱を捕捉
- 動き(ΔE):応答エネルギーの急変を数値化
- 場(grv):語彙圧の歪みをヒートマップ化
と3Dで異常を測量します。モデル依存性が低く、OSS/APIいずれでも再学習により精度が再現できるため、汎用的な安全計器盤として機能します。
AIとの共創未来の青写真
AIは人間の可能性を拡張するパートナーとなり、人間とAIはそれぞれの役割を再定義しながら共存・共進化していく。
その未来は、もはや遠いビジョンではなく目前まで近づいている――。
Discussion