React Server Componentsを理解したい
はじめに
App Router はこれまでの React や Pages Router による書き方と大きく異なります。これは、React Server Components(RSC) というアーキテクチャが導入され、開発の考え方が大きく変化したからです。そのため、App Router を理解するためには RSC の理解が必要になります。
しかし、私は RSC の理解に苦戦しました。
この記事は、そんな私が RSC の理解を深めるために様々な記事から学んだ内容を言語化したものです。
まず初めに、CSR や SSR といったこれまでのレンダリング手法について復習し、これらが抱える問題を確認します。その後、その問題を解決する RSC が何者なのか?を理解します。
CSR の復習
React では CSR 戦略が用いられてきました。
CSR では、クライアントが受け取るのは次のような中身のない空の HTML ファイルでした。
<!DOCTYPE html>
<html>
<body>
<div id="root"></div>
<script src="/static/js/bundle.js"></script>
</body>
</html>
bundle.js
には、React アプリケーションを構築するために必要なものが全て含まれています。
JS がダウンロードされて解析が完了すると、React が動作し始め、アプリケーション全体のすべての DOM ノードを呼び出し、それを空の <div id="root">
に格納します。
引用:https://nextjs.org/learn-pages-router/basics/data-fetching/pre-rendering
処理の流れ
- クライアントからリクエストが送られる
- サーバーから空の HTML と共に、CSS、JS が送信される
- JS を実行して初期レンダリング
- 必要なデータは API を叩いてフェッチする
- データ取得後、際レンダリング
問題点
とてもシンプルではありますが、CSR にはJS バンドルが大きく、UI の初期表示に時間がかかる という問題があります。
UI が表示されるまでの間、ユーザーは白い画面を見続けることになります。そして、この問題は開発が進み JS のコード量が大きくなるにつれて悪化する傾向にあります。
Web ページのパフォーマンス指標
Web ページのパフォーマンス指標として、以下があります。
-
FCP(First Contentful Paint)
- ブラウザが最初のテキストや画像などのコンテンツを描画するまでの時間
- 真っ白な画面ではなく、何かしらの表示(レイアウトなど)がある状態
-
LCP(Largest Contentful Paint)
- ページの主要なコンテンツが表示されるまでの時間
- ユーザが関心のあるコンテンツが含まれている
- DB からデータを取得し、UI にレンダリングされた状態
-
TTI(Time To Interactive)
- ページが完全にインタラクティブになるまでの時間
- React がダウンロードされ、アプリケーションがレンダリングされ、ハイドレーションが行われる
- ページ上の UI コンポーネントが反応し始め、ユーザーが入力できる状態
CSR では、FCP が遅くなってしまうのが問題です。そして、この問題を解決するのが SSR です。
SSR の復習
CSR の問題を解決するために設計されたアプローチです。
空の HTML ファイルを送信する代わりにサーバー側で初期の HTML を生成し、ハイドレーション用のミニマルな JS と共にクライアントへ送信します。
HTML には CSR と同様に <script>
タグが含まれており、その JS でハイドレーションが行われ、サイトがインタラクティブな状態になります。
引用:https://nextjs.org/learn-pages-router/basics/data-fetching/pre-rendering
SSR では初期ロードの時点である程度のコンテンツが表示されるため、バンドルされた JS がダウンロードされ解析されている間でも、ユーザーは真っ白なページを見続ける必要はありません。そのため、CSR と比べて FCP が改善します。
処理の流れ
- クライアントからリクエストが送られる
- 初期表示に必要なデータをサーバー側で API コール
- API からのレスポンスによりデータを取得
- サーバー側でレンダリングを行い、HTML を生成
- HTML、CSS、JS をクライアントに送信
- クライアントは HTML を表示し、ロードした JS を実行してハイドレードする
ハイドレーションは何をしているのか?
ハイドレーションとは、バンドルされた JS をクライアント側で実行し、以下 2 つを行う処理のことです。
-
インタラクティブ性の追加
サーバー側で生成された HTML に対し、イベントハンドラーやその他のスクリプトを結び付けます。これにより、静的なページがインタラクティブなアプリケーションとして機能するようになります。 -
仮想DOMの生成と実DOMの同期
バンドルされる JS はページのインタラクティブ性を担うものだけではありません。サーバー側で生成された HTML を基に構築される DOM をクライアント側でも構築するためのコードも含まれています。
クライアント側は JS で仮想 DOM を構築し、サーバー側で生成された HTML を基に構築された 実 DOM と比較します。比較によりサーバー側でレンダリングされたコンテンツと、クライアント側でレンダリングされたコンテンツが同一であるかを確認し、同一でなければクライアント側で DOM の再構築が行われます。
詳しくは下記リンクを参照するのがオススメです。
よって、先程の手順 ④〜⑤ を詳細に説明すると、次のようになります。
-
サーバー側でのレンダリング
- サーバ側で React を実行し、HTML を生成する
-
インタラクティブ用&DOM 再構築用の JS バンドルを用意
- サーバーで生成された HTML に対しインタラクティブ性を追加するためのコード(イベントハンドラなど)と、クライアント側で仮想 DOM を構築し、実 DOM と同期するためのコードが含まれる
-
HTML とバンドル JS の送信
- 生成された HTML と JS バンドルをクライアントに送信する
-
クライアント側で DOM の構築と表示
- サーバーから受け取った HTML を基に DOM を構築し、描画処理を行う
- この時点において、ページにはインタラクティブ性はないが、すぐにユーザに見える形で表示される
-
バンドル JS の実行と仮想 DOM の構築
- バンドル JS を基に仮想 DOM を構築する
- 構築した仮想 DOM と実 DOM に不一致がないか比較する
-
DOM の比較と必要に応じた更新
- 比較により不一致があれば DOM を再構築する
-
インタラクティブ性の追加
- バンドル JS を基にスクリプトが DOM 要素に結び付けられ、ページがインタラクティブになる
- これにより、ユーザがページと対話可能になる
SSR の魅力
SSR の大きな利点は、FCP だけでなく LCP の改善も可能であることです。
SSR ではプリレンダリングにより FCP が改善されています。真っ白な画面ではなく、何かしらの表示(レイアウトなど)がある状態を素早く提供できるようになりました。
しかし、必要なデータをクライアント側で取得している状態だと、LCP は改善されません。
ユーザーはローディング画面を見るためにサイトにアクセスしているのではありません。ユーザーが望むのは、DB から取得した情報が表示されている UI です。
Next.js をはじめとするフレームワークでは、この問題を解決するためにサーバー側でのデータ取得を可能にしています。
// pages/products.js
import axios from "axios";
function Products({ products }) {
return (
<div>
<h1>Available Products</h1>
<ul>
{products.map((product) => (
<li key={product.id}>{product.name}</li>
))}
</ul>
</div>
);
}
export async function getServerSideProps() {
const res = await axios.get("https://api.example.com/products");
const products = res.data;
return {
props: { products }, // will be passed to the page component as props
};
}
export default Products;
getServerSideProps
はサーバー上で実行されます。この関数が実行された結果が props としてコンポーネントに渡り、プリレンダリングが開始します。
これにより、でユーザーが関心のあるコンテンツが初期表示時に含まれているため、LCP の問題が改善されます。
SSR の問題点
SSR により、CSR が抱える問題を改善できましたが、まだ問題は残っています。
-
ページ単位という制限
- SSR では、サーバー側でのデータ取得とレンダリングがページ単位でしか機能しません
- そのため、データ取得などが原因でサーバー側の処理が重くなると、プリレンダリングに時間がかかります
- SSR ではプリレンダリングが完了するまでブラウザには何も表示されないため、FCP が遅くなる可能性があります
-
SSR 手法が標準化されていない
- SSR は Next.js、Gatsby、Remix などのフレームワークがそれぞれ独自の方法を採用しています
- この非標準化は、技術選択や移行に際しての複雑性を増大させます
-
常にクライアント上でハイドレーションを行う
- SSR を使用しても、最終的にはクライアント上で JS によるハイドレーションが必要です
- 全てのコンポーネントは、たとえ不要な場合でも実 DOM との比較のために仮想 DOM の構築処理が行われます
これらの問題を解決するために生み出されたのが React Server Components です。
React Server Components とは?
React Server Component(RSC)とは、React コンポーネントのレンダリングプロセスにおけるアーキテクチャで、CSR や SSR といったレンダリング手法の問題点を解決するために生まれました。
RSC では、Server Components(SC)という新たな概念を持つコンポーネントが登場します。
SC とは、サーバー側でのみ実行されるコンポーネントです。サーバー側でのみ実行されるので、JS バンドルには含まれません。そのため、SSR の問題点であった「常にクライアント上でハイドレーションを行う」を解決できます。
SC では、以下のように非同期関数で書くことが可能です。
export default async function ServerComponent() {
const res = await fetch("https://example.com/posts");
const posts = await res.json();
return (
<div>
<h1>投稿一覧</h1>
<ul>
{posts.map(() => (
<li>
<a href={post.url}>{post.title}</a>
</li>
))}
</ul>
</div>
);
}
そのため、コンポーネント上から直接外部 API のデータを取得してレンダリングすることが可能になり、コンポーネント単位でのデータ取得&レンダリングをサーバー側で行うことができます。これは、SSR の問題点である「ページ単位という制限」を解決しています。
クライアントコンポーネント(CC)
SC ではない、従来の React コンポーネントのことです。SC と区別するために、これまでのコンポーネントを CC と呼ぶようになりました。
そのため、ライアント上でのみ実行されるコンポーネントのことではありません。
SSR の場合、CC はサーバー側でも実行されるため、クライアントとサーバーの両方で実行できます。
Renders on server? | Renders on client? | |
---|---|---|
SC | ⭕️ | ❌ |
CC | ⭕️ | ⭕️ |
RSC を採用したレンダリングプロセス
RSC を採用すると、React ツリーは以下のように SC と CC が混在するようになります。
この新たなアーキテクチャは一体、どのようなプロセス経てブラウザの画面に描画されるのでしょうか?
RSC のレンダリングは、2 つの段階(stage0 と stage1)に分けて考えることができます。
- stage0 : SC のレンダリング
- stage1 : CC のレンダリング
最初に stage0 である SC がサーバー側で実行され、その後 stage1 である CC がレンダリングされます。stage0 → stage1 の順で段階的に実行されます。この「段階的に実行される」ということを具体例を通して見てみましょう。
// Server Component
async function Notes() {
const notes = await db.notes.getAll();
return (
<div>
{notes.map((note) => (
<Expandable key={note.id}>
<p note={note} />
</Expandable>
))}
</div>
);
}
// Client Component
export default function Expandable({ children }) {
const [expanded, setExpanded] = useState(false);
return (
<div>
<button onClick={() => setExpanded(!expanded)}>Toggle</button>
{expanded && children}
</div>
);
}
Notes
は SC、Expandable
は CC です。2 つのコンポーネントは親子関係にあります。
まず初めに、stage0 を実行して、SC をレンダリングします。すると、以下のような結果となります。
<div>
<Expandable key={1}>
<p>this is the first note</p>
</Expandable>
<Expandable key={2}>
<p>this is the second note</p>
</Expandable>
<!-- 省略 -->
</div>
SC である Notes
コンポーネントが stage0 として実行され、ただの HTML になりました。一方、Expandable
はコンポーネントのままです。Expandable
は CC であり、stage1 で実行されるからです。
それでは次に、stage1 を実行して CC をレンダリングします。すると、以下のような結果となります。
<div>
<div>
<button onClick={イベントハンドラ}>Toggle</button>
<p>this is the first note</p>
</div>
<div>
<button onClick={イベントハンドラ}>Toggle</button>
<p>this is the second note</p>
</div>
<!--...-->
</div>
これですべてのコンポーネントのレンダリングが完了し、HTMl タグに変換されました。
このように、RSC におけるレンダリングは「多段階計算」と捉えることができます。(この考え方はこちらの記事が非常に参考になります)
stage0 は SC のレンダリングなので、サーバー側でしか実行されません。
stage1 は CC のレンダリングなので、クライアント側では必ず実行されますが、場合によってはサーバー側でも実行されます。
何処で何が実行されるのかは以下のように整理できます。
サーバー側 | クライアント側 | |
---|---|---|
従来型(SSR なし) | - | stage1 |
従来型(SSR あり) | stage1 | stage1 |
RSC(SSR なし) | stage0 | stage1 |
RSC(SSR あり) | stage0 + stage1 | stage1 |
「従来型(SSR なし)」は、CSR のことです。クライアント側だけでレンダリングされます。
「従来型(SSR あり)」は、これまでの SSR です。SSR では、一度サーバー側で実行することで HTML を生成し、その後クライアント側で実行してハイドレーションを行います。
従来型は SC が存在しないので、当然 stage0 はありません。従来型と RSC を見比べると、サーバー側に stage0 が追加されただけです。
そのため、RSC は「従来のレンダリングプロセスの前に新たなステージが追加されたもの」であると理解できます。
SC のレンダリングプロセス
stage0 の実行内容である、SC のレンダリングプロセスについて解説します。
React におけるレンダリングプロセスをざっくり復習
-
React 要素の生成:
React.createElement
関数により React 要素を生成します。React 要素はオブジェクト形式のデータであり、type
(コンポーネントの種類や HTML タグなど)、props
(プロパティや子要素を含む)、およびkey
やref
などの特別なプロパティを含んでいます。例として、以下のような計 2 つのコンポーネントの場合、
function Greeting({ name }) { return <h1 className="greeting">Hello!</h1>; } export default function App() { return <Greeting name="Taylor" />; }
createElement
により以下のようなオブジェクトが生成されます。// App { type: Greeting, props: { name: 'Taylor' }, key: null, ref: null, } // Greeting { type: "div", {className: "greeting!"}, "Hello!", }
-
React ツリーの構築:
React 要素は、親子関係を持つツリー構造(React ツリー)を形成します。
このツリーはアプリケーション内すべてのコンポーネントの階層関係を表しています。 -
仮想 DOM の構築:
React ツリーは仮想 DOM の基盤となります。仮想 DOM は React ツリーから生成され、それは React が UI の状態を効率的に管理し、変更を追跡するための内部的な表現です。仮想 DOM は実際の DOM とは独立して操作が行われるため、パフォーマンスが向上します。 -
Diffing アルゴリズムによる変更点の検出:
コンポーネントの状態やプロパティが更新されると、新しい React ツリーが生成され、新旧の仮想 DOM が比較されます。この比較プロセスは、変更が必要な DOM ノードだけを特定するために行われます。 -
実 DOM への更新:
変更が必要な部分が特定された後、React はそれらの変更を実 DOM に反映します。このステップは効率的に行われるため、パフォーマンスの低下を最小限に抑えつつ、ユーザーインターフェースが更新されます。
RSC は以下のような流れでレンダリングされます。
- サーバーがレンダリングリクエストを受け取る
- サーバーが React 要素を生成し、React ツリーを構築する
- 構築した React ツリーをシリアライズする
SC をレンダリングした(stage0 を実行した)ことによる最終成果物はReact ツリーをシリアライズしたものです。Next.jsでは、これを「RSC ペイロード」と呼称しています。
1. サーバーがレンダリングリクエストを受け取る
HTTP リクエストによってコンポーネントのレンダリングが開始します。
サーバーは、リクエストに含まれる情報をもとに、使用する SC と props を判断します。
このリクエストは通常、特定の URL でページリクエストの形式によりで届きます。
URL 内のパスやクエリ文字列が props に対応します。
2. サーバーが React 要素を生成し、React ツリーを構築する
React.createElement()
により生成されるのは React 要素を構成するオブジェクトです。
type
には、文字列なら "div"
のような HTML タグ名が、関数なら React コンポーネントのインスタンスが入ります。
// <div>oh my</div> を返す場合
> React.createElement("div", { title: "oh my" })
{
$$typeof: Symbol(react.element),
type: "div",
props: { title: "oh my" },
...
}
// <MyComponent>oh my</MyComponent> を返す場合
> function MyComponent({children}) {
return <div>{children}</div>;
}
> React.createElement(MyComponent, { children: "oh my" });
{
$$typeof: Symbol(react.element),
type: MyComponent // MyComponent 関数への参照 function
props: { children: "oh my" },
...
}
type
に HTML タグではなくコンポーネントを指定した場合、type
はコンポーネントとして定義した関数を参照する。
しかし、関数はシリアライズできません。SC のレンダリング結果は React ツリーをシリアライズした RSC ペイロードです。よって、構築するツリーはシリアライズ可能である必要があります。
そのため、type
で指定された値がコンポーネント関数である場合、シリアライズ可能な文字列に変換します。
具体的には、type
に指定された値に対し、以下の処理を行います。
-
HTML タグの場合
type
には"div"
といった文字列が入っているため、既にシリアライズ可能であり、特別な処理は必要ありません。 -
SC の場合
type
に指定されている SC 関数とその props を呼び出し、ただの HTML に変換します。これは、実質的に SC のレンダリングに相当します。 -
CC の場合
CC はサーバーではレンダリングされないため、type
にはコンポーネント関数ではなくモジュール参照オブジェクトが格納されています。これはシリアライズ可能であるため、特別な処理は必要ありません。
モジュール参照オブジェクトとは?
RSC では、React.createElement()
により React 要素を生成する際、 type
フィールドに「モジュール参照オブジェクト」と呼ばれるオブジェクトを導入できます。これは、コンポーネント関数の代わりに、コンポーネント関数へシリアライズ可能な「参照」を渡しています。
例えば、ClientComponent
という要素は以下のようになります。
{
$$typeof: Symbol(react.element),
// type フィールドが、実際のコンポーネント関数の代わりに参照オブジェクトを持つ
type: {
$$typeof: Symbol(react.module.reference),
// ClientComponent は以下のファイルから default export される
name: "default",
// ClientComponent を default export しているファイルのパス
filename: "./src/ClientComponent.client.js"
},
props: { children: "oh my" },
}
モジュール参照オブジェクトの変換はバンドラーが行なっています。
SC が CC をインポートする際、実際のインポート対象を取得する代わりに、そのファイル名とエクスポート名が含まれたモジュール参照オブジェクトだけを取得しています。
これにより、シリアライズ可能な React ツリーがサーバー側で構築されます。
このツリーは、HTML タグとクライアントコンポーネントへの参照で構成されています。
引用:https://postd.cc/how-react-server-components-work/
3. 構築した React ツリーをシリアライズする
サーバー側で構築した React ツリーは以下のような形式でシリアライズされ、RSC ペイロードが生成されます。(詳しくはこちらの記事を参照)
M1:{"id":"./src/ClientComponent.client.js","chunks":["client1"],"name":""}
J0:["$","@1",null,{"children":["$","span",null,{"children":"Hello from server land"}]}]
RSC(SSR なし)のレンダリングプロセス
-
サーバー側で SC をレンダリング
stage0 を実行して SC をレンダリングし、RSC ペイロードを生成します。 -
空の HTML、CC の JS バンドル、RSC ペイロードをクライアントに送信する
SSR なしなので、CSR と同様、空の HTML が返却されます。
JS バンドルに含まれるのは CC だけです。SC はサーバー側で実行が完了しているため、バンドルには含まれません。
RSC ペイロードには以下のデータが含まれています。- SC のレンダリング結果(HTMl タグなど、DOM を構築するための情報)
- CC がレンダリングされる場所のプレースホルダと、その JS ファイルへの参照
- SC から CC に渡されるすべての props
-
クライアント側で React ツリーを再構築する
クライアントは RSC ペイロードとバンドル JS を基に React ツリーの再構築を行います。
RSC ペイロードのtype
フィールドが CC のモジュール参照である要素に遭遇したら、それを実際の CC 関数への参照に置き換えます。 React ツリーが再構築されると、SC により事前計算された HTML タグと CC が混合した状態になります。
引用 : https://postd.cc/how-react-server-components-work/ -
DOM を構築し、描画する
あとはこれまで通り、仮想 DOM 構築 → 実 DOM 構築 → 描画を行います。
ここまでの流れを図示すると、以下のようになります。
RSC(SSR あり)のレンダリングプロセス
ここでは Next.js を使用した際のレンダリングプロセスを説明します。
-
サーバー側で SC をレンダリング
stage0 を実行して SC をレンダリングし、RSC ペイロードを生成します。 -
RSC ペイロードと CC の JS を使用して、HTML を生成する
SSR の場合、サーバー側でも stage1 を実行します。
ここでは、RSC ペイロードを参照しつつ React ツリーを再構築します。
その結果を HTML として生成します。 -
生成した HTML と RSC ペイロード、 CC の JS バンドルをクライアントに送信する
SSR では、サーバー側で stage1 を実行した結果である HTML を返却します。 JS バンドルの中身は、SSR なしのときと同様、CC のハイドレーション用です。 -
クライアントは受け取った HTML をブラウザレンダリングする
この HTML は、高速に非インタラクティブなプレビューを表示するために使用されます。 -
React ツリーを再構築する
SSR なしのときと同様、RSC ペイロードと JS バンドルを基に React ツリーを再構築し、その後仮想 DOM を構築します。 -
DOM の比較と必要に応じた更新
構築した仮想 DOM と実 DOM に不一致がないか比較します。
比較により不一致があれば DOM の再構築を行います。 - バンドル JS を基に CC をインタラクティブにする
ここまでの流れを図示すると、以下のようになります。
SC と CC の境界
RSC では、すべてのコンポーネントが、デフォルトで SC とみなされます。CC を使用したい場合、"use client"
ディレクティブを宣言する必要があります。
"use client";
export const Button = () => {
return <button onClick={() => console.log("clicked")}>click me!!</button>;
};
"use client"
は、宣言したファイル内のコンポーネントが CC であり、JS バンドルに含める必要があることを React に知らせます。
"use client"
を宣言するうえで重要なのは、SC と CC の境界となるコンポーネントファイルで使用することです。すべてのコンポーネントファイルに対し、ディレクティブを宣言する必要はありません。
実は、CC から import されたコンポーネントは、自動的に CC になります。
そのため、上記の IconButton
コンポーネントのような汎用性の高いコンポーネントは SC/CC どちらにもなり得ます。
以上をまとめると、以下になります。
- 何も宣言しなければ SC になる
-
"use client"
を宣言すれば CC になる - CC に import されると、そのコンポーネントは CC になる
CC 上で SC を import できず、import されたコンポーネントは CC になると説明しました。では、どのようにして 以下のように SC と CC が混在したツリーを実現するのでしょうか?どうすれば、CC の子に SC を配置することができるのでしょうか?
引用 : https://postd.cc/how-react-server-components-work/
CC(親)→ SC(子)の関係を実現するには、SC を CC の props として渡します。
具体的には、React の children
prop を使用します。
"use client";
import { useState } from "react";
export default function ClientComponent({
children,
}: {
children: React.ReactNode;
}) {
const [count, setCount] = useState(0);
return (
<>
<button onClick={() => setCount(count + 1)}>{count}</button>
{children}
</>
);
}
children
には、SC のレンダリング結果が入ります。上記コンポーネントが実行されるときにはすでに stage0 が完了しており、SC は存在しません。
// このパターンは動作する:
// Client ComponentのchildまたはpropとしてServer Componentを渡す
import ClientComponent from "./client-component";
import ServerComponent from "./server-component";
export default function Page() {
return (
<ClientComponent>
<ServerComponent />
</ClientComponent>
);
}
よって、上記のように SC → CC → SC となる場合、クライアント側で ClientComponent
を実行するときには以下のような状態になっています。
<ClientComponent>
<div>
<p>SCのレンダリング結果</p>
</div>
</ClientComponent>
図で表すと以下のイメージです。
引用 : https://demystifying-rsc.vercel.app/client-components/server-children/
RSC の制約
CC は SC をインポートできない
これまでの内容を理解していれば、当然ですよね。
CC のレンダリングは SC のレンダリング後に行われます。そのため、CC をレンダリングする段階では既に SC は存在せず、ただの HTML 要素に変換されています。
そのため、以下のような使用はできません。
"use client";
// You cannot import a Server Component into a Client Component.
import ServerComponent from "./Server-Component";
export default function ClientComponent({
children,
}: {
children: React.ReactNode;
}) {
const [count, setCount] = useState(0);
return (
<>
<button onClick={() => setCount(count + 1)}>{count}</button>
<ServerComponent />
</>
);
}
SC が受け取る props は全てシリアライズ可能であること
SC は RSC ペイロードにシリアライズされるため、子コンポーネントや HTML タグに渡す props もシリアライズ可能でなければならなりません。
そのため、以下のように SC からイベントハンドラを props として渡すことはできません。
// 悪い例: サーバーコンポーネントは props として子孫コンポーネントに関数を渡すことができません。なぜなら関数はシリアライズできないからです。
function SomeServerComponent() {
return <button onClick={() => alert("OHHAI")}>Click me!</button>;
}
その他の制約
SC はクライアント側で実行されることがないという性質上、以下のような制限もあります。
- 状態管理(
useState
)や副作用(useEffect
)は使用できない - ブラウザ専用の API を使用できない
Streaming HTML と RSC
SSR の問題点
SSR の問題点として、「サーバー側でのデータ取得とレンダリングがページ単位でしか機能しない」がありました。そのため、以下 2 点の問題を抱えています。
-
サーバー側での処理が遅れた場合、FCP が遅延する
サーバー側で行うデータ取得処理が遅れた場合、HTML の生成・クライアントへの送信も当然遅れます。遅れている間はブラウザには何も映らないため、CSR と同様、真っ白の画面が表示され続けます。
引用 : https://nextjs.org/docs/app/building-your-application/routing/loading-ui-and-streaming -
クライアント側で一部のハイドレーションが遅れた場合、TTI が遅延する
SSR では、JS がすべてロードされてからハイドレートされます。そのため、ロードする JS のサイズが大きい場合、ハイドレートまでの時間がかかります。
また、JS ロード後、ハイドレートを開始するとツリー全体に対して処理されるまで終了することができません。既にハイドレードが完了しているヘッダーやナビゲーションがあっても、他のコンポーネントが完了していなければアプリケーションはインタラクティブな状態になりません。
Streaming HTML の登場
Streaming HTML は、サーバーが HTML を小さな部分(チャンク)に分割して順番にブラウザに送信する技術です。の方法により、ブラウザはページ全体がサーバーから送信されるのを待たずに、受信したチャンクを順に処理し、ユーザーに表示することができます。これにより、FCP がさらに向上し、ユーザー体験が改善されます。
引用 : https://nextjs.org/docs/app/building-your-application/routing/loading-ui-and-streaming
Streaming HTML では、優先度の高いコンポーネントやデータに依存しないコンポーネントは最初に送信でき、早期にハイドレーションが開始されます。これにより、TTI も改善されます。
SC との組み合わせ
SC は従来の SSR では出来なかったコンポーネント単位のデータ取得が可能なため、Streaming HTML との相性が非常に良いです。
import { Suspense } from "react";
export default function Home() {
return (
<Container>
<NavBar />
<SideBar />
<Suspense fallback={<Spinner />}>
<ServerComponent />
</Suspense>
</Container>
);
}
上記のように <Suspence />
で SC をラップすることで、<ServerComponent />
以外の部分が先に送信され、描画を行います。
<ServerComponent />
の非同期処理が完了するまでは、fallback
にしている <Spinner />
がレンダリングされローディング UI を表示できます。
そして、<ServerComponent />
の非同期処理・レンダリングが完了すると、追加の HTML を送信します。
RSC のメリット
結局、RSC により何が嬉しくなるのか?をまとめると以下になります。
- JS のバンドルサイズの削減
- データフェッチスピードの高速化
- 初期表示の改善
- セキュリティ
- 設計面のメリット
JS のバンドルサイズの削減
SC の処理はサーバー側で簡潔するため、SC 用の JS はクライアント側には必要ありません。よって、クライアントに送信する JS バンドルを削減でき、パフォーマンスが向上します。
これは、インターネットの速度が遅いユーザーや性能の低いデバイスを使用しているユーザーにとって有益です。
データフェッチスピードの高速化
SC 上でデータフェッチする場合、クライアント側でのフェッチと比べると当然データソースへの距離も近くなります。これにより、レンダリングに必要なデータのフェッチにかかる時間が短縮され、クライアントが行うデータリクエストの量も削減できます。
初期表示の改善
Streaming HTML との組み合わせにより、FCP や TTI を改善できます。
セキュリティ
トークンや API キーなどの機密データやロジックをサーバだけで完結できます。クライアントへ公開することによるリスクがなくなり、サービスの安全性が向上します。
設計面のメリット
データの取得処理とそのデータを用いた DOM の表現が簡潔になります。
これまでのデータフェッチは以下のような実装を行う必要がありました。
const Component = (id) => {
const [data, setData] = useState(null);
useEffect(() => {
axios.get(`/endpoints/${id}`).then((result) => {
setData(result.data);
});
}, []);
return data ? <div>Hello {data.name}</div> : null;
};
上記では、データ取得 → 表示までに
- 状態(
useState
) - 副作用(
useEffect
)
という二つの概念を意識して実装する必要があります。
また、このコードはブラウザで実行されるため、
- DB へ直接アクセスできない
- 故に、API を用意してアクセスする必要がある
という問題もあります。
SC ではこの「データアクセス → DOM を構築」というプロセスをより簡潔かつコンポーネントという単位に閉じた実装が可能になります。
const ServerComponent = async ({ id }) => {
const { data } = await axios.get(`/endpoints/${id}`)
return(
<ClientComponent data={data} />
)
}
const ServerComponents = ({ data }) => {
return <div>Hello {data.name}</div>;
};
SC と CC の使い分け
ポイントとして、UX を実現するための JS が必要な場合のみ CC にすると考えれば良いでしょう。UX に関係ないコンポーネントは基本サーバー側の処理だけで完結するので、JS バンドル削減のためにも SC にするのが適切です。
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