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RestfulなAPI設計について考える

2025/02/10に公開

はじめに

今回業務委託先のコーディングテストにてRestful APIの設計の課題が科されたので改めてもう一度Restfulってそもそもどんなものだったっけ、具体的にどう設計すればいいんだっけといった疑問から備忘録としてOutputとして執筆します。

そもそもRESTの基本原則とは

REST(Representational State Transfer)は、Webサービスをシンプルかつ拡張性高く設計するためのアーキテクチャスタイルです。RESTの基本原則は、以下の6つの制約(あるいは原則)にまとめられます。これらによって、シンプルで拡張性・保守性の高いAPI設計を実現します。ここでは各原則の背景と、その実践上のポイントについて詳しく見ていきます。

1. クライアント・サーバー

概要
クライアントとサーバーの分離により、ユーザーインターフェース(クライアント側)とデータ処理・保存(サーバー側)の役割が明確になります。
メリット

  • セキュリティやスケーラビリティの向上
  • 両者が独立して進化できるため、保守性が高まる
    実例
  • 良い例:フロントエンドはREST APIからデータを取得し、サーバー側はデータベース操作やビジネスロジックに専念する
  • 悪い例:クライアント側で状態管理や処理ロジックが過度に実装され、サーバーと密に結合している場合

2. ステートレス性

概要
各リクエストは独立しており、サーバーはリクエスト間でセッションや状態情報を保持しません。
メリット

  • サーバーの負荷分散が容易になり、スケールアウトがしやすい
  • キャッシュの利用が可能となるため、応答速度が向上する
    実例
  • 良い例:認証情報(Bearerトークンなど)を各リクエストに含め、サーバーは過去のリクエストに依存せず処理する
  • 悪い例:セッション管理に依存し、サーバーがリクエスト間で状態を持つ実装(例:Cookieやサーバー側セッションストアに依存する)

3. キャッシュ可能性

概要
レスポンスにキャッシュ可能な情報を含めることで、同じリソースへの再アクセス時に通信負荷を軽減できます。
メリット

  • ネットワーク帯域の節約と応答速度の向上
  • クライアント側での効率的なデータ利用が可能
    実例
  • 良い例:HTTPヘッダー(ETag、Cache-Control、Last-Modified)を適切に設定し、静的なリソースに対してキャッシュを有効にする
  • 悪い例:キャッシュ制御が不十分なため、同じリソースに対して毎回重複したデータを取得してしまう

4. 統一インターフェース

概要
RESTの最も重要な制約のひとつであり、URIをリソース(名詞)として統一し、HTTPメソッドで操作内容(動詞相当)を表現することで、API全体の一貫性と直感性を保ちます。
メリット

  • 利用者がAPIの使い方を容易に理解できる
  • クライアントとサーバー間の相互運用性が向上する
    実例
  • 良い例
    • GET /users/123 でユーザー情報の取得
    • POST /users で新規ユーザーの作成
    • PATCH /users/123 で部分更新
  • 悪い例
    • GET /getUserById?id=123POST /createUser など、URLに動詞が含まれている場合
    • 複数の操作がひとつのエンドポイント(例:/users/action)に混在している場合

5. レイヤードシステム

概要
システムを複数のレイヤーに分割することで、各レイヤーが特定の役割(セキュリティ、キャッシュ、ロードバランシングなど)を担い、全体として柔軟性と拡張性が確保されます。
メリット

  • セキュリティや監視のための中間レイヤーの導入が可能
  • システム全体の複雑性を局所化できる
    実例
  • 良い例:APIゲートウェイを介してリクエストを各マイクロサービスに振り分ける
  • 悪い例:システム全体が単一サーバー上にあり、拡張性・冗長性が確保されていない設計

6. Code-On-Demand(オプション)

概要
クライアントに必要なコードをサーバーから提供し、クライアント側で実行させることが可能ですが、これは必須ではありません。
メリット

  • クライアント側の機能拡張が容易になる場合がある
    実例
  • 良い例:WebブラウザにJavaScriptを配信し、インタラクティブな機能を実装する
  • 悪い例:セキュリティ対策が十分でない状態でコードを配信し、予期せぬ動作や脆弱性を招く場合

良いAPIと悪いAPIの実際の例の比較表

以下の表は、各設計原則における良いAPIと悪いAPIの具体例と、それぞれがもたらす影響を整理したものです。

設計項目 良いAPIの実例 悪いAPIの実例 影響・改善点
リソース命名 GET /users/123
(名詞・複数形を使用しており、どのリソースが扱われるかが直感的に分かる)
GET /getUser?id=123
(動詞が含まれており、URIに操作の意味が混在している)
統一インターフェースの実現により、API利用者がエンドポイントの意味を即座に理解でき、保守性が向上する。
HTTPメソッドの使い分け - GET /users:ユーザー一覧の取得
- POST /users:新規作成
- PATCH /users/123:部分更新
- DELETE /users/123:削除
- POST /createUser(URLに操作名が含まれている)
- POST /users/123/update(PUTやPATCHで置き換え可能な操作を別エンドポイントに分割)
メソッド本来の意味に沿った設計により、RESTのステートレス性とべき等性を保ち、システム全体の予測可能性と信頼性が向上する。
ステートレス性 各リクエストに必要な認証情報(例:Authorization: Bearer <token>)を含むため、サーバーはリクエスト毎に独立して処理する サーバー側でセッション情報を保持し、リクエスト間で依存関係が生じる。例:セッションIDに依存してユーザー情報を取得する 独立したリクエスト設計により、スケーラビリティとキャッシュ活用が可能になり、全体のパフォーマンスと障害耐性が向上する。
エラーハンドリング エラー発生時は適切なHTTPステータスコード(例:404 Not Found、400 Bad Request)とともに、具体的なエラーメッセージをJSON形式で返す 常に200 OKを返し、エラー情報はレスポンスボディの中に埋め込む。例:{"status": "failure", "error": "User not found"} クライアントがエラー状況を容易に把握でき、迅速な問題解決につながる。正しいステータスコードの利用はシステムの透明性とユーザビリティを高める。
キャッシュ設計 静的リソースに対してETagやCache-Controlヘッダーを設定。例:ETag: "abc123"
(リソースが更新されない場合は304 Not Modifiedを返す)
キャッシュ制御が不十分で、毎回同じデータを取得するため、無駄な通信が発生する。 適切なキャッシュ設定により、ネットワーク負荷を軽減し、応答速度を向上。
URIの階層構造 関連リソースをシンプルに表現。例:GET /users/123/posts(ユーザー123の投稿一覧を取得) 過剰なネストや不明瞭な階層構造。例:GET /users/123/all_posts_and_comments(1つのエンドポイントに複数のリソースを混在させる) 階層が明確であれば、API利用者がリソース間の関係を直感的に理解でき、開発・保守の効率が向上する。
バージョニング URIにバージョン番号を明示。例:GET /v1/users/123(バージョン1のAPIでユーザー情報を取得) バージョン管理がなく、変更があった場合に既存利用者に影響を与える。例:同じURIで仕様変更が行われ、動作が不安定になる 明示的なバージョニングにより、APIの進化時にも既存のクライアントと互換性を保つ。
柔軟なレスポンス設計(fields) クエリパラメータで返すフィールドを指定。例:GET /users/123?fields=name,icon,follow_count(必要な情報だけを返す) エンドポイントごとに異なるレスポンス設計をしてしまい、同じリソースでも複数の実装が存在する。例:/users/123/simple_users/123で内容が重複し管理が煩雑 一つのエンドポイントで必要な情報のみを返す仕組みを導入することで、API設計がシンプルになり、クライアント側の実装も統一される。

RESTful API設計ルールがソフトウェア品質に与える影響

RESTful API設計ルールがソフトウェア品質に与える影響とは以下のように表せられます。

  • 使いやすさ(Usability)
    統一インターフェースや一貫したURI設計により、API利用者が容易にAPIの操作方法を理解できるため、開発速度とエラー対応が向上します。

  • 保守性(Maintainability)
    ステートレス設計や明確なエラーハンドリング、バージョニングの実装は、長期的な保守や拡張の際に、既存コードへの影響を最小限に抑えます。

  • 互換性(Compatibility)
    REST原則に基づいた設計は、異なるプラットフォームや言語間での連携を容易にし、APIの普遍的な利用を促進します。

リソースごとにURIがあり、HTTPメソッドを適切に使うレベまでの設計ルールを最も重要視していることが示されています。これにより、APIの使い勝手、保守性、そして互換性が大幅に向上することが確認されています。


まとめ

RESTの基本原則に則ったAPI設計は、以下の点でソフトウェア品質を向上させます。

  • 直感的で一貫性のあるインターフェース:利用者が容易に理解できるため、開発の効率とエラー対応が向上。
  • スケーラブルな設計:ステートレス性やキャッシュの活用により、システム全体のパフォーマンスと信頼性が向上。
  • 保守性と拡張性:バージョニングや階層的なURI設計により、将来の変更に柔軟に対応可能。
  • 明確なエラーハンドリング:適切なHTTPステータスコードを用いることで、問題の早期検出と対応が可能となる。

上記の詳細な実例と比較表を参考に、良いRESTful API設計を実践することで、開発者・利用者双方にとって使いやすく、保守性や拡張性に優れたシステムを実現できるでしょう。


【参考】

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