[Cloudflare Workers] HonoにJSXミドルウェアが追加されました
Cloudflare Workers向けのフレームワーク「Hono」にJSXミドルウェアが追加されたので、その紹介をします。HonoはCloudflare Workers向けのWebフレームワークです。Honoはビルトインミドルウェアが豊富で、今回紹介するものはそのひとつです。
概要
簡単に紹介すると、JSXのシンタックスとテンプレートリテラルでHTMLをかっこよく書けます。そして、非常に高速にSSRされます。以下のコードを見てください。これがCloudflare Workersのエッジで動くのです。
import { Hono } from 'hono'
import { html } from 'hono/html'
import { jsx } from 'hono/jsx'
const app = new Hono()
const Layout = (props: { children?: any }) => html`<!DOCTYPE html>
<html>
<body>
${props.children}
</body>
</html>`
const Content = (props: { name: string }) => (
<Layout>
<h1>Hello {props.name}!</h1>
</Layout>
)
app.get('/hello/:name', (c) => {
const { name } = c.req.param()
return c.html(<Content name={name} />)
})
app.fire()
SSRのためのJSX
JSXミドルウェアは、HTMLをレンダリングするためのテンプレートエンジンを探していたところ、その代替として、@usualomaさんが提案してくれました(そしてそのまま彼がほとんど実装してくれました。すげえ!感謝!)。HonoにはMustacheのミドルウェアもありますが、ようはMustacheとかHandlebarとかejsとかそういうテンプレートエンジンの類いとしてJSXを使うという試みです。つまり「Server-Side-RenderingのためにJSXシンタックスを使う」というものです。なので、仮想DOMを作らず文字列を扱うだけです。クライアントサイドのことは一切面倒をみません。これがキモです。
TypeScriptではJSXの構文をもともとサポートしていて、タイプチェックを経て、JavaScriptへコンパイルされます。HonoのJSXミドルウェアはTypeScriptで書かれることのみ想定しています。JSXというと「Reactのもの」と思われがちですが、JSXはReactに限りません。今回のミドルウェアはReactではないのです。
加えると、Cloudflare Workersにはファイルシステムがありません。テンプレート「ファイル」よりも、一度JSにコンパイルされた方が使いやすいので、JSXが適していると言えます。
HonoはCloudflare Workersで動作する高速なフレームワークです。Cloudflare Workersではスクリプトの容量が1MB以内でなくてはいけなかったりと制限が強いので、HTMLをベースとした「Webサイト」を作るのには向きません。現に、Workersの他に「Cloudflare Pages」というプロダクトもあります。どちらかというと機能の少ないWeb APIに向いていると思います。Honoは基本的にそのユースケースにフィットするでしょう。また、Cloudflare Workers対応フレームワークではRemixがありますので、Workersである程度大きさのWebサイトを作りたい方はそちらを使うのがよいでしょう。
それに対し、今回のミドルウェアは「気軽に静的なHTMLページを作る」、というユースケースを想定して作ったものです。JSXで書けたとしても、クライアントサイドのコードは吐かないし、Hydrationもしません。SSRするだけです。その代わり、高速に動作します。また、後述する「htmlミドルウェア」と組み合わせれば、非常に見通しよくHTMLページを配信することができるでしょう。
Getting Started
では、JSXミドルウェアを使ってみましょう。プロジェクトを初期化して、Honoをインストールします。
mkdir jsx-example
cd jsx-example
npx wrangler init -y
npm i hono
次に、tsconfig.jsonで最低限の設定をします。jsx
の値はreact
モードにします。
{
"compilerOptions": {
"jsx": "react",
"jsxFactory": "jsx",
"jsxFragmentFactory": "Fragment"
}
}
その上で、ファイルの拡張子を「.tsx」として、コードを書き始めればOKです。import { jsx } from 'hono/jsx
と書くだけで、ミドルウェアがオンになり、JSXを書けるし、それをそのまま文字列として扱えます。c.html
メソッドの引数に渡すことができます。
import { Hono } from 'hono'
import { jsx } from 'hono/jsx'
const app = new Hono()
app.get('/', (c) => {
return c.html(
<html>
<p>Hono!</p>
</html>
)
})
app.fire()
使用例
いわゆる「Function Component」を作ることもできますし、そこにprops
も渡せます。children
が渡ってくるので、下記で言うLayout
みたいなことができます。
import { Hono } from 'hono'
import { jsx } from 'hono/jsx'
const app = new Hono()
const Layout = (props: { children?: string }) => {
return (
<html>
<body>{props.children}</body>
</html>
)
}
const Top = (props: { messages: string[] }) => {
return (
<Layout>
<h1>Hello Hono!</h1>
<ul>
{props.messages.map((message) => {
return <li>{message}!!</li>
})}
</ul>
</Layout>
)
}
app.get('/', (c) => {
const messages = ['Good Morning', 'Good Evening', 'Good Night']
return c.htm(<Top messages={messages} />)
})
app.fire()
Fragment
Fragmentにも対応します。当然、<></>
でもOK。
import { jsx, Fragment } from 'hono/jsx'
const List = () => (
<Fragment>
<p>first child</p>
<p>second child</p>
<p>third child</p>
</Fragment>
)
memo
React.memoのようなmemo
もあります。再計算しないので、対象のコンポーネントに関しては高速に動作します。プロパティが変更されないようなものはmemo化しておくといいかもしれません。
import { jsx, memo } from 'hono/jsx'
const Header = memo(() => <header>Welcome to Hono</header>)
const Footer = memo(() => <footer>Powered by Hono</footer>)
const Layout = (
<div>
<Header />
<p>Hono is cool!</p>
<Footer />
</div>
)
dangerouslySetInnerHTML
変数をエスケープせずに埋め込めるdangerouslySetInnerHTML
も実装されています。
app.get('/foo', (c) => {
const inner = { __html: 'JSX · SSR' }
const Div = <div dangerouslySetInnerHTML={inner} />
})
htmlミドルウェアと組み合わせる
ほぼ同時期に「htmlミドルウェア」も追加されました(これも@usualomaさんが作ってくれました!)。これは、HTMLを作るためのhtml
メソッドを提供します。ようは変数をエスケープするテンプレートリテラルが書けます。
import { Hono } from 'hono'
import { html } from 'hono/html'
const app = new Hono()
app.get('/:username', (c) => {
const { username } = c.req.param()
return c.html(
html`<!DOCTYPE html>
<h1>Hello! ${username}!</h1>`
)
})
app.fire()
小粒な機能ですが、これがとても使えます。まず、面白いのは、こちらの拡張を使えば、VS Codeでバッククォーテーションの中もシンタックスハイライトと補完が効くのです。
これをJSXミドルウェアと組み合わせると色んなことができます。
JSXの中にスニペットを挿入する
JSXでは表現できないスニペットをリテラルで書いてJSXの{snippet}
に挿入しています。
const snippet = html`
<script async src="https://www.googletagmanager.com/gtag/js?id=MEASUREMENT_ID"></script>
<script>
window.dataLayer = window.dataLayer || []
function gtag() {
dataLayer.push(arguments)
}
gtag('js', new Date())
gtag('config', 'MEASUREMENT_ID')
</script>
`
app.get('/', (c) => {
return c.html(
<html>
<head>
<title>Test Site</title>
{snippet}
</head>
<body>Hello!</body>
</html>
)
})
スクリプトを挿入する
JavaScriptのスクリプトをインラインで挿入するのをdangerouslySetInnerHTML
なしでできます。
app.get('/', (c) => {
return c.html(
<html>
<head>
<title>Test Site</title>
{html`
<script>
// ここにスクリプトを書く。エスケープされない。
</script>
`}
</head>
<body>Hello!</body>
</html>
)
})
memo
なしでも速い
Function Componentライクに書けます。こうすればJSXのmemo
相当のことができます。
const Footer = () => html`
<footer>
<address>My Address...</address>
</footer>
`
プロパティをもらう
アウターの<!DOCTYPE html>
、html
、head
、body
...タグをhtmlテンプレートリテラルで書いて、レイアウトとして使いつつ、headタグの中のtitle要素の値はプロパティでもらう、なんてこともできますね。これはよく使うパターンになるでしょう。
import { Hono } from 'hono'
import { html } from 'hono/html'
import { jsx } from 'hono/jsx'
const app = new Hono()
interface SiteData {
title: string
children?: any
}
const Layout = (props: SiteData) => html`<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>${props.title}</title>
</head>
<body>
${props.children}
</body>
</html>`
const Content = (props: { siteData: SiteData; name: string }) => (
<Layout {...props.siteData}>
<h1>Hello {props.name}</h1>
</Layout>
)
app.get('/:name', (c) => {
const { name } = c.req.param()
const props = {
name: name,
siteData: {
title: 'JSX with html sample',
},
}
return c.html(<Content {...props} />)
})
app.fire()
開発環境
Cloudflare Workersと言えば、Wranglerで開発しますが、JSXミドルウェアを使う場合は、Miniflare+esbuildの組み合わせが好みです(この2つはWranglerの中でも使われています)。Miniflareなのでlive-reloadが効きます。
Example
以前はnano-jsxというライブラリを使ってSSRを試していたExampleがありますが、それを今回のJSXミドルウェアに書き変えたので、見てみてください。コードがだいぶスッキリしました。
パフォーマンス
当然ですが、Remixより速いです。以下はRemixがただ一つのルートから文字列を返すだけ。Honoがルートがいくつかある中、動的にHTMLをレンダリングする、という条件でベンチした結果です。
まとめ
以上、HonoのJSXミドルウェアとhtmlミドルウェアを紹介しました。このミドルウェアがある前は、HonoはWebサイトには向かない、と思っていましたが、この2つの使い勝手が良いので、重宝するかもしれません。SSRしかしないので、クライアント側で動きがある時にどうしようかと思っていますが、例えば、Honoの場合かなり「MVC」っぽいので、Railsを真似て、Hotwireを使うってのも面白いです。他になにかいい方法があれば教えて下さい。
JSXミドルウェアは簡単に使い始めることができます。興味のある方は是非、使ってみてください。
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