音響学入門:バイワイヤリング方式と音質への影響
バイワイヤリング方式と音質への影響
スピーカーシステムの設計では、駆動アンプの内部インピーダンスやスピーカーケーブルの特性が音質に影響を与える ことが知られています。特に、ネットワーク回路内で発生する相互干渉は、スピーカーの性能を低下させる要因となります。
本記事では、バイワイヤリング方式 を採用することで スピーカーの相互干渉を抑え、クリアな音質を得る仕組み について詳しく解説します。
1. スピーカーシステムにおける相互干渉
通常のスピーカーシステムでは、ネットワーク回路が内部に組み込まれており、1本のスピーカーケーブルで低域・中域・高域のユニットをまとめて駆動 しています。この方式では、以下のような問題が発生することがあります。
(1) スピーカーケーブルとアンプの内部インピーダンスの影響
-
スピーカーケーブルのインピーダンスが高い場合
- スピーカーの動作による逆起電力がケーブルを通じて影響を及ぼし、相互干渉が発生する。
- 駆動アンプのダンピングファクターが低くなり、スピーカーの制動が不十分になる。
-
駆動アンプの内部インピーダンスが高い場合
- スピーカーやネットワーク内で発生した歪みが増幅され、音質が劣化 する。
(2) ネットワーク回路内での相互干渉
- スピーカーのネットワーク回路には、帯域ごとに異なるフィルター(ローパス・バンドパス・ハイパス) が配置されている。
- 1本のケーブルを通じてすべての帯域を駆動すると、帯域間で相互干渉が発生し、音の明瞭さが失われる。
2. バイワイヤリング方式とは?
(1) バイワイヤリングの基本概念
バイワイヤリング方式(Bi-Wiring)とは、スピーカーのネットワーク回路に直接接続するために、帯域ごとに独立したスピーカーケーブルを駆動アンプの出力端子に接続する方式 です。
通常のシングルワイヤ接続では、1本のスピーカーケーブルがスピーカー全体を駆動しますが、バイワイヤリング方式では以下のように接続されます。
✅ 低音域(ローパスフィルター) → アンプの専用端子へ接続
✅ 中音域・高音域(バンドパス・ハイパスフィルター) → 別のアンプ端子へ接続
これにより、低音ユニットの逆起電力が中高音ユニットに影響を与えず、相互干渉が大幅に軽減 されます。
(2) バイワイヤリング方式のメリット
項目 | メリット |
---|---|
相互干渉の低減 | 帯域ごとに独立したケーブルを使用するため、帯域間の影響が少なくなる。 |
ダンピングファクターの向上 | アンプがスピーカーをより適切に制御でき、特に低音の制動が良くなる。 |
音の明瞭度向上 | 低域・中域・高域がクリアに分離され、音の分解能が向上する。 |
(3) バイワイヤリングとバイアンプの違い
-
バイワイヤリング(Bi-Wiring)
- 1台のアンプ を使用し、スピーカーケーブルを分ける方式。
- 相互干渉を軽減し、音質を向上させる。
- 比較的安価で導入可能。
-
バイアンプ(Bi-Amping)
- 2台のアンプ(低域専用・高域専用)を使用する方式。
- さらに高精度な帯域分割が可能になり、より優れた音質を実現できる。
- しかし、コストが高くなる。
3. バイワイヤリング方式の接続方法
(1) スピーカー端子の構成
バイワイヤリング対応のスピーカーには、通常 2組(計4つ)の入力端子 が搭載されています。
[LOW] —— 〇 〇 —— [HIGH] | | スピーカー
- LOW(低域用端子)
- HIGH(中高域用端子)
- 通常、LOWとHIGHの端子は ジャンパープレート(ブリッジ) で接続されています。
(2) 接続の手順
-
ジャンパープレート(ブリッジ)を外す
- バイワイヤリングを行う場合、LOWとHIGHの端子を分離する必要がある。
-
スピーカーケーブルを2本用意する
- 1本目 → 低域用の端子(LOW)に接続
- 2本目 → 中高域用の端子(HIGH)に接続
-
アンプの出力端子に接続
- アンプのスピーカー出力から、それぞれのケーブルをLOW・HIGHに対応させる。
4. まとめ
バイワイヤリング方式は、スピーカーシステムの相互干渉を低減し、より明瞭な音質を実現する手法 です。
✅ バイワイヤリングのメリット
- 低域・中高域の相互干渉を防ぐ
- スピーカーのダンピングファクターを向上させる
- 音の分解能が向上し、明瞭な音質になる
✅ 接続のポイント
- バイワイヤリング対応スピーカーは4つの端子を持つ(LOW/HIGH)
- LOWとHIGHのジャンパーを必ず外して ケーブルを接続する
- 1本のアンプで駆動できるため、バイアンプより導入しやすい
Discussion