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音響学入門:スピーカーのダンパー・スパイダー構造
スピーカーのダンパー・スパイダー構造とその設計思想を解説
スピーカーの振動板を適切に支える「ダンパー」や「スパイダー」は、音響特性や耐久性に大きな影響を与える重要な部品です。本記事では、低音用スピーカー(ウーファー)および高音用スピーカーのダンパー・スパイダー設計のポイントを解説します。
ダンパー・スパイダーとは
ダンパーやスパイダーは、振動板とボイスコイルを支え、正確な振動を実現するための部品です。振動板が動作する際、安定した支持力を提供すると同時に、不要な振動を抑える役割を担います。
低音用スピーカーのダンパー・スパイダー設計
アコースティックエアサスペンション方式とダンパー設計
アコースティックエアサスペンション方式は、低音再生を向上させるために振動板の共振周波数
特徴
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柔軟性(ハイコンプライアンス):
- 振動系の支持部は非常に柔らかく設計され、低共振周波数を実現します。
- これにより、深い低音域の再生が可能となります。
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耐久性:
- 長時間の使用でも変形や「ダレ」が発生しないように設計。
- 通気性の良いメッシュ状の織物を樹脂成型して製造される。
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音響特性の最適化:
- ダンパー自体が音を放射しないよう、不要な振動が発生しにくい素材と構造が選定される。
ギャザー度形ダンパー
- 振動系の柔軟性と耐久性を両立するために考案された特殊な形状。
- コルゲーション(ひだ)を設けることで柔軟性を確保しつつ、剛性も持たせた設計。
ストリングダンパー
- 小口径スピーカーにおいて、さらに低共振周波数を実現するために考案された方式。
- ボイスコイルを糸で吊り下げる構造を採用し、独特の低音特性を生み出します。
- 実用化された事例は少ないものの、ユニークな設計思想を反映しています。
高音用スピーカーのダンパー・スパイダー設計
ドーム形スピーカーとワンサスペンション方式
高音用スピーカーでは、振動板の軽量化と精密な動作が求められます。このため、ダンパーやスパイダーにも以下の工夫が施されています:
特徴
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横揺れや共振の防止:
- ダンパーやスパイダーが横揺れや不要な共振を引き起こさないよう、サイズや形状が厳密に設計されます。
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高共振周波数
の実現:f_0 - 振動板の共振周波数を高音域に適合させるため、金属板を使用したり、振動板と一体化した構造が採用されます。
設計の工夫
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金属板の使用:
- 高剛性な金属材料をダンパーに採用することで、不要な共振を防ぎ、高音域特性を向上。
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一体構造:
- 振動板とダンパーを一体化することで、軽量化と効率的な振動伝達を実現。
ダンパー・スパイダーの設計における注意点
ダンパーやスパイダーの設計は、スピーカー全体の性能を最適化する上で重要です。以下の点に注意が必要です:
-
柔軟性と剛性のバランス:
- 振動板の動きを正確に支える剛性を確保しつつ、柔軟性を持たせて不要な共振を防ぐ。
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素材選定:
- 通気性が高く、耐久性に優れた材料を使用。
- 振動系の特性に応じて金属や樹脂などを組み合わせる。
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形状の工夫:
- コルゲーションやギャザー度形状で柔軟性を高める。
- ストリング方式や一体構造で特定用途に対応。
まとめ
スピーカーのダンパーやスパイダーは、振動板の動作を支え、不要な共振や歪みを防ぐ重要な部品です。
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低音用スピーカー:
- ハイコンプライアンス設計で深い低音を再生。
- ギャザー度形状やストリングダンパーを活用して性能を向上。
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高音用スピーカー:
- 横揺れや共振を防ぐための設計が重要。
- 金属板や一体構造で高音域性能を最適化。
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設計の工夫:
- 素材と形状の選定がスピーカーの性能を左右する。
- 耐久性、通気性、柔軟性をバランスよく設計することが求められる。
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