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音響学入門:スピーカーのダンパー・スパイダー構造

2025/02/24に公開

スピーカーのダンパー・スパイダー構造とその設計思想を解説

スピーカーの振動板を適切に支える「ダンパー」や「スパイダー」は、音響特性や耐久性に大きな影響を与える重要な部品です。本記事では、低音用スピーカー(ウーファー)および高音用スピーカーのダンパー・スパイダー設計のポイントを解説します。


ダンパー・スパイダーとは

ダンパーやスパイダーは、振動板とボイスコイルを支え、正確な振動を実現するための部品です。振動板が動作する際、安定した支持力を提供すると同時に、不要な振動を抑える役割を担います。


低音用スピーカーのダンパー・スパイダー設計

アコースティックエアサスペンション方式とダンパー設計

アコースティックエアサスペンション方式は、低音再生を向上させるために振動板の共振周波数f_0を15~20 Hzと非常に低く設定します。この方式に対応するダンパー・スパイダーの設計には以下の特徴があります:

特徴

  1. 柔軟性(ハイコンプライアンス):

    • 振動系の支持部は非常に柔らかく設計され、低共振周波数を実現します。
    • これにより、深い低音域の再生が可能となります。
  2. 耐久性:

    • 長時間の使用でも変形や「ダレ」が発生しないように設計。
    • 通気性の良いメッシュ状の織物を樹脂成型して製造される。
  3. 音響特性の最適化:

    • ダンパー自体が音を放射しないよう、不要な振動が発生しにくい素材と構造が選定される。

ギャザー度形ダンパー

  • 振動系の柔軟性と耐久性を両立するために考案された特殊な形状。
  • コルゲーション(ひだ)を設けることで柔軟性を確保しつつ、剛性も持たせた設計。

ストリングダンパー

  • 小口径スピーカーにおいて、さらに低共振周波数を実現するために考案された方式。
  • ボイスコイルを糸で吊り下げる構造を採用し、独特の低音特性を生み出します。
  • 実用化された事例は少ないものの、ユニークな設計思想を反映しています。

高音用スピーカーのダンパー・スパイダー設計

ドーム形スピーカーとワンサスペンション方式

高音用スピーカーでは、振動板の軽量化と精密な動作が求められます。このため、ダンパーやスパイダーにも以下の工夫が施されています:

特徴

  1. 横揺れや共振の防止:

    • ダンパーやスパイダーが横揺れや不要な共振を引き起こさないよう、サイズや形状が厳密に設計されます。
  2. 高共振周波数f_0の実現:

    • 振動板の共振周波数を高音域に適合させるため、金属板を使用したり、振動板と一体化した構造が採用されます。

設計の工夫

  • 金属板の使用:
    • 高剛性な金属材料をダンパーに採用することで、不要な共振を防ぎ、高音域特性を向上。
  • 一体構造:
    • 振動板とダンパーを一体化することで、軽量化と効率的な振動伝達を実現。

ダンパー・スパイダーの設計における注意点

ダンパーやスパイダーの設計は、スピーカー全体の性能を最適化する上で重要です。以下の点に注意が必要です:

  1. 柔軟性と剛性のバランス:

    • 振動板の動きを正確に支える剛性を確保しつつ、柔軟性を持たせて不要な共振を防ぐ。
  2. 素材選定:

    • 通気性が高く、耐久性に優れた材料を使用。
    • 振動系の特性に応じて金属や樹脂などを組み合わせる。
  3. 形状の工夫:

    • コルゲーションやギャザー度形状で柔軟性を高める。
    • ストリング方式や一体構造で特定用途に対応。

まとめ

スピーカーのダンパーやスパイダーは、振動板の動作を支え、不要な共振や歪みを防ぐ重要な部品です。

  1. 低音用スピーカー:

    • ハイコンプライアンス設計で深い低音を再生。
    • ギャザー度形状やストリングダンパーを活用して性能を向上。
  2. 高音用スピーカー:

    • 横揺れや共振を防ぐための設計が重要。
    • 金属板や一体構造で高音域性能を最適化。
  3. 設計の工夫:

    • 素材と形状の選定がスピーカーの性能を左右する。
    • 耐久性、通気性、柔軟性をバランスよく設計することが求められる。

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