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音響学入門:スピーカーシステムにおけるタイムアライメントと指向性制御の技術

2025/03/14に公開

スピーカーシステムにおけるタイムアライメントと指向性制御の技術

スピーカーシステムの設計において、タイムアライメント(Time Alignment) は、リスナーに正確な音像定位を提供するための重要な技術です。また、指向性制御技術 によって、特定の音場環境に適した音の拡散を実現することが可能です。本記事では、タイムアライメントの原理と、さまざまな指向性制御技術について解説します。


1. タイムアライメントとは?

(1) 定義

タイムアライメント とは、低音から高音までのすべての周波数成分が、リスナーに同時に到達するように調整する技術 です。

  • スピーカーの物理的な配置や電子的なディレイ調整を用いて、各帯域の音が同じ時間で届くように制御します。
  • タイムアライメントが適切に設定されていない場合、低音と高音が異なるタイミングで到達し、音像がぼやけたり定位が崩れる ことがあります。

2. トールボーイ型スピーカーの特性と課題

(1) トールボーイ型の利点

  • トールボーイ型スピーカーは、縦長の形状 を持ち、低音域の再生能力が向上します。
  • スピーカーユニットを縦方向に配置できるため、指向性が広く、音の拡散が良好 になります。

(2) トールボーイ型の課題

  • 縦長の形状のため、内部の定在波の周波数が低くなり、吸音材の効果が低減する周波数帯が発生 します。
  • 適切な吸音材の選定と配置が必要 であり、定在波の影響を最小限に抑える工夫が求められます。

3. SR/PAスピーカーシステムの設計

(1) SR/PAスピーカーの特徴

SR(Sound Reinforcement)/PA(Public Address)システムでは、複数のスピーカーユニットを1つのパッケージに収めたワンボックス型 で構成されます。

  • 低音から高音までのユニットがコンパクトに詰め込まれている ため、シンプルな設置が可能。
  • 高音域のスピーカーは左右非対称の配置 になっており、他の高音スピーカーとの干渉を防ぐ設計がされています。

(2) ラインアレイシステム

  • J形ラインアレイ に組み上げ、フライング方式で吊り下げることで広範囲に均一な音を届ける ことができます。
  • 特に高音域はホーンユニットを使用し、鋭い垂直指向性を確保 することで、明瞭な音響を提供します。また波の干渉を極力減らしています。

4. 調指向性スピーカーシステム

(1) 直線配列アレイスピーカー

直線状にスピーカーを配置することで、ラインソース型 の音響特性を実現します。

  • 指向性はスピーカー間隔 dd と音波の波長 λ\lambda の比 d/λd/\lambda に従います。
  • 高音域では波長が短くなるため、非常に鋭い指向性を持つ ことが特徴です。

5. 指向性制御型スピーカーシステム

(1) 局面反射板型スピーカー

  • 局面を持つ反射円盤 を使用し、スピーカーの音を特定方向へ放射する方式。
  • 音の拡散をコントロールしつつ、特定のリスニングエリアに均一な音圧を提供することが可能。

(2) 指向性制御型アレイスピーカー

  • FIR(Finite Impulse Response)フィルターを活用し、ビームの指向性を制御 するスピーカーシステム。
  • 例えば、リスニングエリアの特定範囲にのみ音を集中させる ことで、音の拡散を最適化できます。

6. パラメトリックスピーカーの原理と応用

(1) パラメトリックスピーカーとは?

パラメトリックスピーカーは、超音波をAM変調して放射し、非線形性を利用して可聴音を生成する特殊なスピーカー です。

  • 超音波(例:40kHz)を搬送波とし、可聴音を変調 することで、空気中で変調信号が自己復調し、耳に聞こえる音が生成される。

(2) パラメトリックスピーカーの特性

  • 超指向性を持ち、特定の方向にのみ音を伝達可能(拡散しにくい)。
  • 周囲に音が漏れにくいため、指向性の高いオーディオシステムとして利用 される。

(3) パラメトリックスピーカーの応用

  • 美術館・博物館 の解説用音声ガイド
  • デジタルサイネージ のターゲット音響
  • 音響プライバシー の確保(特定の人にだけ音を届ける技術)

まとめ

スピーカーシステムの設計では、タイムアライメントと指向性制御の技術 が重要です。

  1. タイムアライメント

    • 低音から高音までの音を同じ時間にリスナーへ届けることで、音像の定位感を向上。
  2. トールボーイ型スピーカー

    • 内部定在波の影響を抑えるため、吸音材の適切な配置が必要。
  3. SR/PAスピーカー

    • ワンボックス型 でコンパクトにまとめ、高音域はホーンユニットを用いて干渉を抑制。
  4. 調指向性スピーカー

    • ラインソース型スピーカー では、高音域の指向性が非常に鋭くなる。
  5. 指向性制御型スピーカー

    • FIRフィルターを用いたアクティブ制御により、音の拡散を精密にコントロール。
  6. パラメトリックスピーカー

    • 超音波のAM変調を利用し、超指向性の音響伝達を実現

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