建築設備の基礎:給排水衛生設備
給排水衛生設備
・生活に欠かせない給水排水衛生設備。一級建築士の設計製図試験において,年々細かく図面や計画の要点を記述するようになっている。
過去の試験では給排水衛生設備の室名と大きさが要求室欄に書かれていたが,最近(2024年)の試験傾向を見ると,運営に必要な室などを適切に設けるための知識が問われている。
様々な建築設備の中から,ここでは給排水衛生設備について,一級建築士設計製図試験に必要な基礎的内容をまとめる。
給排水衛生設備の種類
給排水衛生設備の種類を(表1)に示す。次に各方式について詳しく述べていく。
給水設備
各方式について特徴を箇条式に示し,図を使い断面の基本的な考え方を学んでいく。
(1)水道直結直圧方式
・最も水質汚染が少ない。
・給水能力が水道本管の圧力に応じて変化する。
図1 水道直結直圧方式
(2)水道直結増圧方式
・水道本管の圧力不足を増圧ポンプ(=給水ポンプ)によって補う。
・ポンプ室は管理・更新のためスペースを確保する。
図2 水道直結増圧方式
(3)ポンプ直送方式(受水槽方式)
・給水量不足,圧力不足に対応している。
・受水槽に貯水されて直送ポンプ(=給水ポンプ)から給水栓に給水される。
図3 ポンプ直送方式(受水槽方式)
受水槽の設計方法を示す。
・受水槽の貯水量を求め80%の貯水量を受水槽のサイズとする。
貯水量:建築物全体の1日の使用水量の1/2程度。
受水槽の算定例
・1日の使用水量を100tの場合。(1t=1m^2=1000L)
受水槽(貯水量)= 100t × 1/2 ÷ 0.8 = 62.5 ~63t
7 × 4.5 × 2 ~63t
図4 受水槽の概略
排水設備
汚水と雑排水は原則として重力排水方式とし,排水は敷地内の排水桝を介して下水道本管へと放流する。ここでは維持更新を考慮した汚水と雑排水を分ける屋内分流方式を示す。
図5 排水系統図
汚水:「し尿」を含む便所洗浄排水,雑排水:厨房や洗面台などからの排水,雨水:降雨や湧水の排水
掃除口の設置位置:排水横管の基点,排水縦管の最下部,長い配管の途中,合流場所。
排水系統:逆流させないため配管を分ける。
通気口:最低1箇所設ける。
PS位置:各階の位置は1スパン以内を基準に配置する。
給湯設備
各方式について特徴を箇条式に示し,図を使い断面の基本的な考え方を学んでいく。
局所給湯方式
給湯箇所ごとに小型の瞬間式給湯機を分散配置する。
ガス瞬間式給湯方式
・瞬間式給湯器で加熱する。大量の湯が必要な箇所には適さない。
図6 ガス瞬間式給湯方式
中央給湯方式
・1箇所の熱源機器から複数の給湯箇所に給湯する方式。安定した給湯温度を維持。
・大量の湯の供給にも対応可能。
ガスボイラー給湯方式
・一度に大量の湯が必要な部分に用いる。(プール,大浴場等)
図7 ガスボイラー給湯方式
空冷ヒートポンプ給湯方式
・CO2の削減により,環境負荷低減に優れている。
図8 空冷ヒートポンプ給湯方式
ガス瞬間マルチ給湯方式
・瞬間式給湯機を複数台連結した方式。台数制御運転ができるため,省エネルギー。また給湯器毎の交換が可能なので維持更新が行いやすい。
図9 ガス瞬間マルチ給湯方式
まとめ
給排水衛生設備について,一級建築士設計製図試験に必要な基礎的内容をまとめた。
何かわからないことや,間違った記述などがあったらご連絡ください。
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