建築設備の基礎:防災計画
防災計画
・生活に欠かせない防災計画。一級建築士の設計製図試験において,細かく要点を記述するようになっている。また災害が増えている昨今,製図試験にて問われる可能性が高い。
様々な防災設備から,ここでは消火設備,警報設備,避難設備,消防活動用設備,耐震対策,災害時対策,自家発電設備,給水設備,排水設備について,一級建築士設計製図試験に必要な基礎的内容をまとめる。
消防用設備
消火設備,警報設備,避難設備,消防活動用設備をまとめて消防用設備という。
次に各設備について詳細を示す。
消火設備
初期消火により火災を抑制し鎮火させる。
(1)屋内消火栓設備
・一般人が初期消火のために使用する。
・停電時に使用するするため予備電源を設ける。
・1号消火栓(警戒区域範囲25m)と2号消火栓(警戒区域範囲15m)の二種類がある。
・建物の全てをカバーできるように設置する。
・消火ポンプ室は1階又は地階に10m²程度の大きさで計画する
図1 屋内消火栓設備
(2)スプリンクラー設備
・アラームを鳴らし自動的に散水する。初期消火に効果がある。
・スプリンクラー設備には幾つか種類があり,建物の仕様によって使い分ける。
一般ビル:閉鎖型湿式,電算室:閉鎖型予作動式
寒冷地用:閉鎖型乾式,ステージ等高天井:開放型
・アラーム弁は各階1m²程度設ける。
(アラーム弁:流水検知装置のこと。水が流れることで圧力スイッチが押されアラーム(警報)が鳴る。)
図2 スプリンクラー設備
(補助散水栓:スプリンクラーヘッドの未警戒部分に設置する。性能は2号消火栓程度。)
(末端試験弁:スプリンクラーヘッドからの放水を行わずに圧力試験をするもの。)
(3)警報設備
自動火災報知設備
・火災発生時に建物にいる人と消防署に火災が発生したことを報告する設備。
(4)避難設備
避難器具
・建築物内で避難経路が確保できない場合に,ベランダや窓から避難するための設備。
避難梯子,滑り台などがそれに当たる。
誘導標識・誘導灯
・避難場所へ誘導するための標識。適切な位置に設置する。
非常用照明
・停電時に必要な照度を確保するための設備。
(5)消防活動用設備
排煙設備
・煙や有毒ガスを建物に広げないためのものであり,機械排煙方式と自然排煙方式がある。両者の併用をしてはいけない。
・一級建築士製図試験においては自然排煙方式を採用する。
自然排煙
1,床面積500m²以内ごとに防煙壁で区画する。
2,風道に接する部分を不燃材料で仕上げる。
3,天井又は壁の上部から80cm以内の高さに設ける。
4,水平距離が30m以下となるように設ける。
5,排煙口を屋外に開放する。又は排煙風道に直結する。
6,排煙口は区画部分の1/50以上の開口面積を確保する。
7,排煙口の手動開放装置は,壁の場合は床面から80cm以上1.5m以下の高さに設ける。
8,排煙口の手動開放装置は,天井から吊り下げる場合は床面から1.8m程度の高さに設ける。
9,防煙壁を貫通するときは隙間を不燃材料で埋める。
10,電源が必要な場合,予備電源を設ける。
11,廊下の排煙口は窓から30mまでは有効。排煙口を設けない場合は100m²以内であれば排煙設備設置免除できる。
図3 自然排煙口の設置注意事項
排煙の参考資料を共有する。
建築基準法関係で分からないことがある場合,行政等が作成しているWebサイトを確認すると正確な情報を手に入れることが出来るのでお勧めしたい。
連結送水管
消防ポンプ車などからホースを接続し,消火活動を行うための配管設備。消防ポンプ車を建物の近くに止める必要があるので,設置位置に注意を払う必要がある。
耐震対策
地震時による設備の破損を防止するため,固定や変位を吸収する仕組みを組み込む。
機器の転倒防止
・振動しない機器:躯体にアンカー等で固定する。
・振動する機器:防振架台の上に機器を乗せ防振すると共に,耐震ストッパーを取り付け,地震により大きく動いた場合の当たり止めとする。
・落下防止:振れ止めの設置や設備機器を天井の躯体から支持する。
・配管の破損防止:ジョイント部分をフレキシブルジョイントとすることで,振動を吸収させる。
災害時対策
図4 防災対策概念図
図4は設置できるものを全て記載している。過剰設計であり,試験の際は必要なものを取り出して計画してほしい。
電気設備(自家発電設備)
非常用自家発電設備と常用自家発電設備がある。
非常用自家発電設備
・非常時に保安設備へ電気を供給する予備電源のこと。原動機の燃料貯蔵は屋外地中タンクとする。
常用自家発電設備
太陽光発電設備(再生可能エネルギー)
・蓄電池との組み合わせが可能で,災害時に非常用電源として使用可能。
・屋上などの未利用スペースを活用。
・二酸化炭素をカットした環境保全効果。
蓄電池設備
・キュービクルに近接させて計画。
・非常用照明の転倒,受変電設備の操作,防災設備機器や通信設備機器の機能保全。
・ピークカットやピークシフトを行い電気料金の高い時間を避けることで電気料金を節減。
・太陽光発電設備と組み合わせた夜間利用。
・非常用電源。
コージェネレーションシステム
・熱電併給システムが主流で発電時に排出される熱を回収し給湯や暖房に使用。
・二酸化炭素を削減し,省エネルギーによる経済性向上が期待。
・通常の電力供給に連携させ,非常時に必要最低限の電力供給が可能。
給水設備(給湯設備)
緊急遮断弁付き受水槽
受水槽に緊急遮断弁を設け災害時の生活用水を確保する。
雨水貯留槽方式
雑用水(中水)等に利用。
太陽熱給湯システム
給湯や床暖房に利用。
排水設備(災害用トイレ)
マンホールトイレの設置。公共下水道管路直結の直結型と汚水を貯留できる貯留型があ
る。
まとめ
防災計画について,一級建築士設計製図試験に必要な基礎的内容をまとめた。
何かわからないことや,間違った記述などがあったらご連絡よろしくお願いいたします。
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