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音響学入門:密閉型スピーカーのエンクロージャーと基準容積Vc

2025/03/29に公開

密閉型スピーカーのエンクロージャーと基準容積Vc

スピーカーのエンクロージャー設計において、密閉型(sealed enclosure) は、最もシンプルでありながら優れた音響特性を持つ方式の一つです。密閉型スピーカーでは、エンクロージャー内部の空気バネ(アコースティック・スプリング) が振動板の動作に影響を与え、低音域の挙動を決定します。

本記事では、密閉型スピーカーの動作原理、エンクロージャー内部の空気の影響、そして基準容積 VcV_cの計算方法について解説します。


1. 密閉型エンクロージャーの特性

(1) 密閉型の動作原理

密閉型スピーカーでは、振動板の背後の空間が完全に閉じられており、振動板の動作がエンクロージャー内の空気の圧縮・膨張に支配される 仕組みとなっています。

  • 振動板が前後に動くと、エンクロージャー内部の空気が圧縮・膨張し、ばね(スティフネス)として機能 します。
  • エンクロージャーの空気のスティフネスが、スピーカーユニットの低域共振周波数 f0f_0 を押し上げる 効果を持つ。
  • 空気の容積が大きいほどスティフネスの影響が減り、f0f_0 の上昇が抑えられる。

(2) 基準容積 VcV_c の定義

スピーカーの持つ本来の低域共振周波数 f0f_0 を維持できる限界のエンクロージャー容積を 基準容積 VcV_c と定義します。これは、スピーカーの特性値から次の式で求めることができます。

Vc=(3.5×105)a4f02m0×1(1/2Q031) V_c = \frac{(3.5 \times 10^5) \cdot a^4}{f_0^2 m_0} \times \frac{1}{(1 / 2Q_0^3 - 1)}

(3) 各パラメータの意味

記号 説明
f0f_0 スピーカーの共振周波数 [Hz]
aa スピーカーの有効振動半径 [cm]
m0m_0 スピーカーの振動系の質量 [g]
Q0Q_0 スピーカーの振動系のQ

この式から、スピーカーの有効振動半径 aa が大きくなると VcV_c が大きくなり、エンクロージャーの容積を増やす必要がある ことがわかります。また、共振周波数 f0f_0 が高いほど VcV_c は小さくなり、小型のエンクロージャーで適応可能 となります。


2. 密閉型エンクロージャーの設計と注意点

密閉型エンクロージャーを設計する際には、以下の点に注意する必要があります。

(1) 低域共振周波数の影響

  • エンクロージャーの容積が小さすぎると、内部空気のスティフネスが大きくなり、共振周波数 f0f_0が過度に上昇してしまいます。
  • 一方、容積を大きく取りすぎると、スピーカーの制御が効かなくなり、低音の応答がダラダラとしたものになりやすい。

(2) エンクロージャー内の吸音材

  • 吸音材を適切に配置することで、内部定在波を抑制し、より自然な低音を実現可能
  • ただし、吸音材の使用量が過剰になると、内部の空気ばねの効果を弱め、低音の応答が悪化する可能性がある

(3) エンクロージャーの剛性

  • 密閉型エンクロージャーでは内圧の変化が大きいため、箱の剛性を高める必要がある
  • MDF(中密度繊維板)や合板を用いることで、不要な振動を抑え、スムーズな低音を実現できる。

3. まとめ

密閉型スピーカーのエンクロージャーは、シンプルでありながらも、内部の空気スティフネスが低域共振周波数を押し上げる特性 を持っています。そのため、適切な設計を行わないと、意図しない音響特性の変化が生じる可能性があります。

密閉型エンクロージャーの特徴

  • 内部の空気のスティフネスが共振周波数 f0f_0 を押し上げる
  • 基準容積 VcV_c を超えないように設計することで、スピーカー本来の低域特性を維持できる。

基準容積 VcV_c の計算式

Vc=(3.5×105)a4f02m0×1(1/2Q021) V_c = \frac{(3.5 \times 10^5) \cdot a^4}{f_0^2 m_0} \times \frac{1}{(1 / 2Q_0^2 - 1)}
  • 有効振動半径 aa が大きいほど、エンクロージャー容積が大きく必要になる
  • 共振周波数 f0f_0 が高いほど、小型エンクロージャーでも適応可能

設計時の注意点

  • エンクロージャーの容積を適切に設定し、低域特性のバランスを取る
  • 吸音材の使いすぎに注意し、自然な低音を保つ
  • 剛性の高い素材を使用し、不要な共鳴を防ぐ

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