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音響学入門:"ボイスコイルの設計と能率・周波数特性
ボイスコイルの設計と能率・周波数特性への影響
ボイスコイルは、スピーカーの駆動力を決定する重要な要素であり、許容入力、電気インピーダンス、能率、振動系の特性に大きな影響を与えます。本記事では、ボイスコイルの設計とその影響について解説します。
ボイスコイルの役割
ボイスコイルは、磁場中で電流を受けることで力を発生し、振動板を駆動します。その特性は以下の要素に大きく関わります。
- 許容入力・電気インピーダンスの決定
- 能率(音響出力と電気入力の比)
- 振動系のQ特性の調整
- 共振周波数(低域・高域)の制御
- 電磁制動による振動の安定化
特に、ボイスコイルの導体体積と磁束密度の2乗の積は、電気エネルギーや電磁制動抵抗に影響を与え、スピーカーの効率や振動特性を決定します。
ボイスコイルの設計パラメータと影響
ボイスコイルの特性は、以下の要因によって決まります。
1. 自己インダクタンスと重量
-
自己インダクタンス:
- 高周波成分に影響を与え、インピーダンス特性に関係。
- 低音用スピーカーでは高域のインピーダンスが上昇しすぎないよう設計が必要。
-
重量:
- 振動系の総質量の一部を構成。
- 重量が増えると、低音域の共振周波数
が下がるが、高域限界周波数f_0 が低下するため、高音の再生特性が悪化。f_h
2. 電気インピーダンスと周波数特性
- ボイスコイルの巻き数が増えると、直流抵抗が増加し、インピーダンスも増大。
- 高域では自己インダクタンスの影響により、インピーダンスが上昇。
3. ボイスコイルの質量と能率
ボイスコイルの質量は、スピーカーの能率に直接影響を与えます。特に、以下の関係が成り立ちます。
能率の基本式
スピーカーの能率 \eta は以下の式で表されます:
-
: 電気入力 [W]W_e -
: 音響出力 [W]W_a -
: 磁束密度 [ガウス]B -
: 有効振動半径 [cm]a -
: ボイスコイル重量 [g]m_v -
: 振動板重量 [g]m_d -
: 振動板の空気の付加質量 [g]m_a -
: 振動系の総質量 [g]M_0 = m_v + m_d + 2m_a -
: ボイスコイルの導体の比抵抗 [Ω⋅m]\kappa -
: ボイスコイルの導体の密度 [g/cm³]\rho
この式から、以下のことが分かります。
-
ボイスコイルの重量
が増加すると、分母が大きくなるため能率が低下。m_v -
磁束密度
が増えると能率が向上。B -
有効振動半径
が大きいほど、効率が向上。a
能率が最大になる条件
ボイスコイルの重量と振動系の質量バランスが最適化された場合、スピーカーの能率は最大となります。その条件は以下の通りです。
すなわち、ボイスコイルの重量が振動系の総重量の1/2に等しくなるとき、能率が最大になる。
ボイスコイルの重量と周波数特性の関係
f_0 )
1. 低音域(共振周波数 -
ボイスコイルの重量が増加すると、低音の共振周波数
は下がる。f_0 - 低音の再生能力は向上するが、高音域の再生能力が犠牲になる。
f_h )
2. 高音域(限界周波数- ボイスコイルが重くなると、高音域の限界周波数
が下がる。f_h - 高音の伸びが悪くなり、スムーズな再生が困難になる。
まとめ
ボイスコイルの設計は、スピーカーの能率や周波数特性に大きな影響を与えます。適切な設計を行うことで、音響性能を最適化できます。
-
ボイスコイルの重量と能率の関係
- 振動系の総質量の1/2をボイスコイル重量にすると能率が最大になる。
- 重量が増えると低音域は強化されるが、高音域が劣化する。
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インピーダンスと周波数特性
- 巻き数が増えるとインピーダンスが増加し、高音域の能率低下を招く。
-
設計の最適化
- 磁束密度の強化、振動板の最適化、ボイスコイル重量のバランスを調整することで、スピーカーの特性を向上できる。
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