エンジニアの成長には「脳内キラーフレーズ」を使いなさい。仕事の長所を伸ばし、弱点を克服する方法。メンタルモデルの作り方。
弱点にボディブローをかませ
たとえば僕の場合「ストーリーの優先度の扱いが弱い」という弱点がある。
それに対してのキラーフレーズはこれだ。
あなたの脳に直接ささやきます。「今やるべきことなの?」
これを脳内フレーズにできれば、優先度の扱いがうまくなれる気がした。
(そして忘れないうちに、今Qiitaに筆を取ったわけだ)
平坦な言葉から、立体的なフレーズへと。
この話だけだと、なんだかよく分からないかもしれない。簡単に通り過ぎてしまうと、なんだか大事なことが伝わっていないような気がする。
こうやって文章にしてしまえば、「今やるべきことなの?」なんて、ただのキーワードに過ぎないのだから。僕の中に「響いてきた」キーワードの感じが、肌感覚として、あなたにも伝わるとは思わない。
だが僕には、この「今やるべきことなの?」というフレーズが、うまくはまった。「平坦な言葉」ではなくて「立体的な、影響力のある言葉」として、有効に働きそうな感じがする。
ストッパーとしてのキラーフレーズ
僕が実装にはまりこみそうな時、些末なストーリーに調査の時間を費やそうとする時、「今やるべきことなの?」というフレーズは、何度でも頭に響いて、ストッパーになってくれる、大事な価値基準を思い出させてくれる感じがしたのだ。
しかも、キラーフレーズを頭がつぶやくのに1秒もかからない。
キラーフレーズの分解
なぜこんなに短いフレーズが有効に働いているのか。考えてみる。
- 今 (時間が明らかだ、気をつけるのはいつでも、今。未来のいつかではない)
- やる (行動にフォーカスしている。「やっている自分」にフォーカスしている)
- べき (「べき」「べきでない」の判断基準がある。オンオフ、ゼロイチで判断できるようになっている)
- こと (「やっている対象」が含まれている)
- なの? (最後が疑問形で終わり、自分への質問になっている)
よく見てみると、たった1個のセンテンスの中に、これだけの情報、角度が詰め込まれているのが分かる。
なぜキラーフレーズが必要なのか
- 「言葉が変われば、行動が変わる」
- 「脳内フレーズが変わると、価値観の組み換えが起こる」
これを嘘だと思うだろうか。嘘だと思うのは嘘だろう。
キレーフレーズと価値観
振り返ってみれば、1個の人間において「キラーフレーズ」が自らに影響を及ぼしている事柄は、非常に多いと気づく。
- 練習すれば上手くなる ( 「柔軟なマインドセット」 )
- 石の上にも三年 ( ことわざはキラーフレーズだ )
- 人を見たら泥棒と思え ( 性悪説のキラーフレーズ )
というよりも、僕らの価値観そのものが、多くの「キラーフレーズ」によって構成されていると言っても過言ではない。ただ、あまりにも個人の価値観の根本にべったりと生えているので、自分が「キラーフレーズ」を持っているということにさえ気づかないだけで。
価値観は単に「価値観」というぼんやりとした空間にあるわけではない。必ず何らかのフレーズ、言葉、音やイメージと共に「何度も生産」されるものだ。
「毒にも薬にもならない標語」は毒にも薬にもならない
たとえば「優先度の扱いに気をつけよう」というような「弱いフレーズ」を使ったとしよう。
これは本当に役に立たない。
弱いフレーズでは、自分の弱点をカバーできない。なぜなら、自分の頭のなかで囁かれる、他の多くの「習慣的なフレーズ」に、たやすく押し流されてしまうからだ。これは競合の問題だ。1%でも強いほうが勝つ。49対51なら51の方が勝つ。なので「弱いフレーズ」は「習慣的なフレーズ」に対抗できない。
だけどキラーフレーズは「一般的な標語」よりも、100倍ぐらい威力があるような気がした。
何度も頭の中でささやかれる声。ささやく声。
キラーフレーズと脳科学
僕はこの話に証拠を提示していない。
だが科学的に誰かが研究しているのは確実だったように思う。昨今の人間行動研究、社会理心理学の、目覚ましい発展を見よ。
エンジニアであれば「すべてを理論的に説明したい」と思う気持ちがあるかもしれない。
だけど僕ら人間はそもそも、僕らの脳の働きについてほとんど理解していない。脳科学者たちが技術の粋を集めても分からないことだらけだ。
だから脳の働きについて、一介のエンジニア、一介の個人が、言葉で正確に説明することは不可能なレベルだと思う。
たとえば「言葉が人間の行動に与える影響」というテーマだけで、本が100万冊は書けるんじゃないだろうか。これを理論的に説明しようとすると、生涯あっても足りない。
なので僕らにできることは 実感を優先する ことだけだ。「確かに、言葉が、自分の価値観の組み換えをおこなうようだ」という「現実の現象」を観察してみる。自分そのものを実験体にしてみる。
キラーフレーズの盗み方 – 「人から言われた言葉」を使う
僕の場合は、チームメンバーがよく言ってるフレーズから拝借した。
というより「この言葉が、自分にとって、一番キラーフレーズとしての威力が高いな」と、ふと思いついた。
ところで「人から言われた言葉」をキラーフレーズにする場合、良い副作用もある。それは、キラーフレーズがその人の「声」と共に流れてくるので、より脳の注意を引きやすくなるという点だ。
なので、僕らの脳内に響いてくる声をよく聞いて、その声が「どこから流れてくるか」「誰の声で流れてくるか」「どんな抑揚で流れてくるか」に敏感になっておくのが良いと思う。
キラーフレーズの創造 - 「何に似ている?」と自分で考える
あれこれと考えて、自分でキャッチフレーズを作ってみる。
コツとしては 「他のものに例える」 のはおすすめだ。
「この問題は、何に似ている?」 って考えてみよう。
メンタルモデルを構築しよう。
思い出してみてほしい。「石の上にも三年」ということわざ、キラーフレーズにも「石」という「もののたとえ」が使われていることを。
- 「優先度の順位を考える」
- なんだか弱いな
- 優先度って何に似てるだろう?
- 「積み木」に似てるかもしれない
- 「積み木を思い出せ!」っていうのはどうだろうか
- 具体的な行動が示されてないし、なんだかぼやっとしてるな
- 「大きな木から積もう!」っていうのはどうだろうか
- なんだか良い感じがする、さしあたっての「キラーフレーズ」として採用しよう
メンタルモデル(英: mental model)とは、人間が実世界で何かがどのように作用するかを思考する際のプロセスを表現したものである。表象 (representation) と密接な関係を持つ[1]。
キラーフレーズは伝染する
たとえば新人育成などで人に教えるときも、何かキラーフレーズを作って教えるのは効果的だと思う。
なにか問題や課題が見つかるたびに、その本質を考えて、キラーフレーズを思い浮かべるのだ。
メンターとビギナーの間で、共通のキーワードを作って、短いフレーズでメンタルモデルのやり取りが出来るようにしておく。
具体例
- リリースはクリスマスプレゼント。
- ラッピングして、嬉しいプレゼントにしよう。
- 歴史改竄主義はやめよう。
- 「考慮できていなかったこと」は「考慮できてなかった」と認めよう。「分かっていなかったこと」を「分かっていたこと」にしないようにしよう。
このキラーフレーズを読んだ人は、このキラーフレーズも読んでいます
キラーフレーズについて書かれた本があったような気がするが、どの本かは忘れてしまった。ごめん、思い出したら追記する。
人間の社会的行動に関してはマルコム・グラッドウェルの一連の本が本当にエキサイティングで参考になる。社会心理学は人生観を変える。
「キラーフレーズの名人」になろう
この記事みたいに、ひとつひとつの物事に対してキラーフレーズをつけていく。
特にアンチパターンに「症候群」とか「依存症」とかいうキラーフレーズを作ってあげるのは、非常に有用だ。
- Google依存症
- すぐできる・なんでもできる病
- 雑用ホイホイ症候群
- 放置プレイ依存症
- オープンソース・ライブラリ依存症
- 似非プロフェッショナリズム病
- 自分しかできない病
20代エンジニアの成長を阻む7つのパターン(まとめ記事) - Qiita
僕も自分の記事でコードレビューを焼き肉に例えて、難しいものは「ホルモン」簡単なものは「カルビ」と呼んだりした。
コードレビューと焼肉の関係 〜難しいコードレビューのコツ〜 - Qiita
量産型キラーフレーズ
キラーフレーズを量産していこう。どんどん生み出そう。
「メンタルモデルを言い表すためのキラーフレーズ」はいくつあっても邪魔にはならない。
上手なフレーズであれば人や自分の記憶に残る。だから使われ続ける。
下手なフレーズであれば人や自分の記憶に残らない。忘れられる。
だからどちらにしてもOKだ。こいつは実験だ。ラボだ。
「スティッキー」な人の記憶に残りやすいフレーズを使おう
どんなフレーズを選んだら良いの? と思ったら「スティッキー・レベル」で選ぶのが良い。つまり「人の記憶にひっつく強さ」「忘れられないレベル」を基準にする。
ちなみにこの記事の各見出しも「スティッキー」なフレーズに変更した。
はじめの見出しを変えた例。
- たとえば、自分の弱点に対して
+ 弱点にボディブローをかませ
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公開日時
2018-11-01
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