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チーム発表会用 | 錯覚に学ぶエンジニアの働き方

2023/08/26に公開

参考

「人の心は読めるか?」「思うほど読めてないよ」という趣旨の本。
人間の錯覚や、落とし穴について書かれている。

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ちなみに、よくコンビニとかで売ってる、こういう系の本ではない。

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一、あなたの失敗はそれほど注目されていない


とある実験で「ものすごく目立つTシャツ」を着させられた人が、他の人たちと一同に集められたという。


そこでTシャツを着せられた本人質問。

「どれぐらいの人がTシャツに気付いたと思いますか?」


Tシャツを着た本人の回答 「50%」


実際に気付いた人 「24%」


二倍もの開きがあった。


このように、人間は良くも悪くも、
「自分が注目を浴びている度合い」を高く見積もりがち。


なのでたとえば「自分の失敗」は拡大されやすい。

たとえ他の人の失敗は大きく感じずつ、一瞬で忘れてしまっても、
自分の失敗は大きく印象に残る。


エンジニアは普段から、失敗を属人的にではなく、ロジカルに考える習慣を持っているはず。
だけど同時に人間でもあるので「自分の失敗が拡大される」という働きはゼロではないと思う。


人によって罪悪感を持ちやすい、持ちにくい、という性格の差もあるだろう。


対策


「自分の失敗」は拡大されやすい、ということを理解しておく。

「自分の失敗」に対しても、
「人の失敗」と同じぐらいの冷静さを持っておく。


失敗で萎縮すると、有効な対策も思いつきにくいし、逆に他の失敗を誘発するかもしれない。


一、玄人の落とし穴


知識はいったん手に入れると、持っていない時のことが想像できなくなる


Fのたくさん入った英文を、人に見せるという実験。
そして「この中に、Fがいくつありますか?」という質問をした。


こんなやつ。

FINISHED FILES ARE THE RESULT
OF YEARS OF SCIENTIFIC STUDY
COMBINED WITH THE
EXPERIENCE OF YEARS.


すると英語のネイティブほど、Fを見落とす割合が大きかったという。

OF の文字を頭の中で、濁点つきの「オブ」の発音で読んでしまうので、
それを「エフ」だと認識できないようなのだ。


このような現象を、この本では「玄人のレンズ」と呼んでいる。

この「玄人のレンズ」は顕微鏡のようなもので、より物事が鮮明に見えるかわりに「引きの視点」は失われやすい。


  • 「専門家に話を聞くと、専門用語ばかりでよく分からない」(専門家自身は伝わると思って話している)
  • 「開発者が『こんな味じゃ満足してくれない』と思い込んで、10年開発を続けた食品を、ダメ元で売り出してみたら、お客さんの満足度は非常に高かった」

こんなケースでも玄人のレンズが影響している。


対策


玄人とビギナーの間で、意思疎通の問題が生じた時には、それが「玄人のレンズによるものではないか」と疑う余地がある。


たとえばプロジェクトについて、人に説明する時は、自分の死角に気付くチャンスでもある。

このギャップの中に、開発環境改善や、プロジェクトの運用を見直すチャンスがあるかもしれない。


一、心を読もうとすることについて


どんなにすばらしい手段にも限界がある。
相手の立場になろうと真剣に努力するときは、自己中心性とステレオタイプという、生まれながらにして備わっている二つの道具を総動員することになる。


著者は妻の誕生日プレゼントを考えていた。
長い間、考えに考え尽くして、用意周到に最高のプレゼントを用意した結果、最悪の結果に終わったという。


妻はすごく水族館が好きなので「イルカの一日飼育券」をプレゼントしたのだが、
子供を産んだばかりで、とても外に出る気分ではなかったのだ。


これは「心を読みすぎた失敗」だ。


心は読める部分もあるが、読めないこともある。

特に、情報量が少なかったり、正確な情報収集をしていない場合は、いくら想像を広げても、正確な答えは出ない。
考えれば考えるほど「思い込みの罠」にはまる可能性が高い。


この本では

  • 相手の立場になって想像すること => 「視点取得」
  • 実際に聞いてみたりして、相手の意見を理解すること => 「視点獲得」

と呼んでいる。

(ざっくりとした区別)


三つのアプローチ


アプローチ1. 身体的な洞察

  • 表情やボディランゲージを読み取る
    • 実は精度が低い

アプローチ2. 視点取得

  • 相手の立場になって想像すること
    • 素晴らしい手法だが限界はある

アプローチ3. 視点獲得

  • 直接聞いてみたり、信頼のおけるアンケートを取ったりする

アメリカで、軍に関するひとつの法律(厳密には法律の撤廃)を巡って、二つのアンケートがおこなわれた。


ひとつめ

「退役軍人」に対して「現役軍人への影響と、法律の是非」についてアンケートを取った。
すると「退役軍人」は「現役軍人」のことを想像して、この法律に反対する人が多かった。

(視点取得のアプローチ)


ふたつめ

実際にその法律の影響を受ける対象、「現役軍人」とその配偶者に対して、大規模なアンケートを取った。
すると、ほとんど不安の声は聞こえなかった。

(視点獲得のアプローチ)


対策


想像するより、聞いてみよう。


予想を立てるのも良いけれど、それを真実だと思い込まないようにしよう。


開発でも、重要度が高そうだと思った機能について、いざお客さんに質問してみると、あまり要らないものだったり。

逆に重要度は低そうだと思った機能が、すごく必要だったりすることも多い。


「まあ、こうだろう」という思い込みは、50%ぐらいの確率で外れている気がする。


「昔は必要だったけど、時間が流れて必要なくなった」とか、状況次第でニーズが変わったりもする。
開発の環境にもよると思うが、優先度は時間によっても変化する。


以上


文庫版 / 単行本版 / Kindle版がそれぞれ発売中。

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公開日時

2017-07-05

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