Viteの速さはどこから来るのか?

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この記事の前提

この記事は、これからViteについて本格的に学びたいと考えているエンジニア、特にReactやVue、TypeScriptなどを用いたモダンな開発に関わる方に向けたものです。

以下のような悩みや課題を抱える方に最適です。

  • Viteという名前はよく聞くけど、結局なにがそんなに「速い」の?
  • WebpackやParcelと何が違うの?
  • 設定ファイルが少なくて済むって本当?
  • 開発体験が良いってどういうこと?

理解を深めたいため

表面的な「速い」「便利」といったキーワードにとどまらず、仕組みや設計思想、導入メリット・デメリットを体系的に理解することで、適切な技術選定やプロジェクト設計に役立てることができます。

何となくを減らすため

「とりあえず流行ってるから」「公式が推してるから」という“何となく”で導入すると、後々のトラブルや仕様理解の壁にぶつかる可能性があります。この記事では、「なぜそうなっているのか」を一つ一つ丁寧に解説します。

読者に伝えたいこと

この記事を読むと、以下のことが理解できるようになります。

  • Viteの設計思想と開発の背景
  • なぜViteは速いのか?その技術的根拠
  • Webpackなど他のバンドラーとの違い
  • プロジェクトに導入する際のポイント
  • 実際にViteを用いた開発でどんなメリット・注意点があるのか

Viteとは?

Vite(発音は “ヴィート”)は、Vue.jsの作者であるEvan You氏によって開発された、次世代型フロントエンド開発ツールです。
名前の由来はフランス語で「速い(vite)」に由来しており、その設計思想も「開発をとにかく速く・軽量にする」に重きを置いています。
軽量な開発サーバの上に、実作業に不要なバンドリング処理を極力省くことで、開発フェーズでは即応性の高い体験を提供します。
Vite

NativeESM × HMRで高速起動

Viteの登場以前、開発者たちは Webpack や Parcel といったバンドラーツールを使っていましたが、それらには次のような課題がありました。

  • 初期起動が遅い(数秒〜数十秒)
  • 小さな修正でもビルドが再実行され、開発のテンポが悪くなる
  • 設定ファイルが複雑

Viteはこうした課題を解決するために誕生しました。
開発時にあらかじめバンドルせず、**ブラウザのESモジュール機能(native ESM)**を活用します。HTTPリクエストがモジュールごとに発生し、未加工の .js/.ts ファイルが読み込まれるため、初期起動が爆速。さらに、**Hot Module Replacement(HMR)**により、変更があったファイルだけ差分更新され、ページ全体のリロードなしで状態を維持しつつ反映されます。

「NativeESM」って何? dev serverはどう動いてる?

ESMとは、importexport といった構文をブラウザネイティブで解釈・実行できるモジュール形式のことです。

Viteはdevサーバーを起動すると、依存関係を事前に解析し、node_modules のパッケージはesbuildを使って超高速にプリバンドル・キャッシュし、それ以外のファイル(ソースコード部分)はオンデマンドで読み込むという仕組みを取っています。
esbuild

こうすることで、ファイルを1つ編集しても再ビルドの必要はなく、更新対象のファイルのみを素早くHMRできるのです。

HMRの仕組みと開発体験の良さ

HMR(Hot Module Replacement)とは、ソースコードを編集して保存した際に、ブラウザをリロードせずにその変更内容だけを反映する仕組みです。
ViteではこのHMRも非常に高速で、体感的には保存してすぐ反映されます。

これにより

  • コンポーネントのUI調整がスムーズに進められる
  • リロードによる状態の初期化(フォーム入力のリセットなど)が不要になる
  • 実装中の思考が途切れにくくなる
    これは開発体験(DX)の大きな向上と言えます。

生い立ちとBundler比較

Viteの生い立ち
2020年:初期バージョンがリリース(Vue専用)
2021年:Vite 2でReactやSvelteなど他のフレームワークにも対応
2022年以降:業務利用やOSSでも導入が進み、エコシステムが拡大

リリースノート

Webpacker、Webpackとの違い

特徴 Vite Webpack Webpacker (Rails)
起動時間 数百ミリ秒 数秒〜数十秒 数十秒〜1分以上
HMR速度 高速(保存と同時) そこそこ 遅い
設定のシンプルさ デフォルトで動く 設定が複雑 Railsに依存
ESM対応 完全対応 部分的 不十分

Viteは開発者体験を最大限に重視しており、余計なビルドステップや設定を省いて、すぐに開発を始められるのが魅力です。

なぜ“意図的にバンドラーを分けたのか?”

Viteは開発時のサーバーと、本番ビルドの仕組みを明確に分けているのが特徴です。

**開発時: ネイティブESM + HMR によって超高速に
本番時: Rollup を用いて最適化されたバンドルファイルを生成
**
この“分離設計”により、それぞれの環境に最適化されたアプローチを実現できます。

Webpackのような「開発も本番も同じロジックで動かす」ツールと比較して、設計に一貫性があり、開発者のメンタルモデルがシンプルになり、問題切り分けもしやすくなっています。


今後の記事では、Viteのプラグインシステム、React/Vue/Svelteなどとの連携、TypeScript・PostCSS・Tailwindとの統合例など、より実践的な応用を掘り下げていきます。

この記事が「なんとなくViteを使っていた」という状態から脱却し、Viteというツールの本質的な強さを理解する第一歩となれば幸いです。

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