its v0.3.0: 追加機能と破壊的変更
みなさんこんにちわ、 youta-t です。
go のマッチャライブラリ its をつくってます。
機能拡張やバグフィックスなどを含む v0.3.0 をリリースしようとしつつあります。
今日は、その v0.3.0 の変更点と、特に破壊的変更について説明します。
バグフィックス: structer & mocker
これまで structer[1] や mocker[2] では、いくつかの条件にあたる型についてマッチャやモックを生成しようとすると、うまくいきませんでした。
- private な型を参照する型
- 例:
type S struct { Field privateType }
- 例:
- 型引数に型制約がかかっているような型
- 例:
type [T interface { ~int | ~uint }] ...
- 例:
- 他の
interface
を埋め込んでいるinterface
や、それをフィールドにもつstruct
- 例
type I interface { J; io.Reader }
- 例
これまでは、こうした型を含むファイルについて structer や mocker を使ってコード生成をすると、コンパイルできないファイルが生成されてしまっていました。
v0.3.0 以後は、そうした対象を含むファイルでもコンパイル可能な実装を生成するようになります。
具体的には...
- mocker は private な型を利用している interface や func については、モックを生成しなくなりました
- mocker は型制約である interface や他の interface を埋め込んでいる interface については、モックを生成しなくなりました
- structer は、private な型のフィールドについては、マッチャの対象としないようになりました
- structer は private な型を利用している interface や func のフィールドについても、マッチャの対象としないようになりました
これで、生成されたコードが参照できない型を参照しようとしてコンパイルエラーになる、ということは起きなくなるはずです。(たぶん...)
今回は仕様外とした「interface を埋め込んでいる interface」については、将来制限が緩和される可能性はあります[3]。
its.ClosedChan
機能拡張 & 破壊的変更: its.ClosedChan
はこれまで、受信側 channel (<-chan T
)についてだけサポートしていました。
ところで、channel が閉じているかどうか判断できるのは受信側だけではありません。双方向チャネル (chan T
)もそうです。
v0.3.0 からは、its.ClosedChan
が受信側 channel も双方向 channel も、両方ともマッチできるようになります。
ただし、この変更のために、 型引数の表現が v0.2.x 系から変化 しています。
- これまでは
its.ClosedChan[Elem]
のように、channel の要素の型を型引数に指定する必要がありました。 - これからは、
its.ClosedChan[<-chan Elem]
のように、channel としての型を指定するようにしてください。
its.Property
機能整理: なにかの値についてマッチするとき、その値のもつ属性(property)について検証したいことがあります。たとえば、Stringer()
な型の String()
メソッドの戻り値とか。
こうしたものは、従来一度メソッドの戻り値を変数かなにかに取って、その上で its.EqEq
に掛ける必要がありました。
var someStringer SomeStringer := ...
its.EqEq(want).Match(someStringer.String()).OrError(t)
しかし、そうすると、テストログとしてはただ文字列を比較しただけ、という結果しか残らず、「何の値を検証したのか?」という文脈が失われます。
こういうときに役に立つのが Property
です。
これは「ある値 got
から、別の値 v
を取り出して、v
についてマッチをかける」ということができるマッチャです。
先ほどの例は、こう書き直すことができるようになります。
someStringer := ...
its.Property(
".String()",
SomeStrnger.String,
its.EqEq(want),
)
これで、このテストケースが fail したときも、 .String()
に問題があったのだ、ということがログに書き出されます。
ところで、この関数は新設されたものではありません。
もともと v0.2.x 系では itskit
パッケージから公開されていたものだったのです。
しかし、この関数の有用性を鑑みて、 v0.3.0 からは 普段遣いするパッケージである its
に移動することにしました。
its.EqEqPtr
Deprecated: v0.3.0で 、its.EqEqPtr
を Deprecated に指定します。
というのも、its.Pointer
というマッチャが入ったことが原因です。
its.EqEqPtr
は its.Pointer
と機能が重複しているうえに、カバーしている範囲が小さいです。
これまで 次のように書いていたテストは...
its.EqEqPtr(want).Match(got).OrError(t)
v0.3.0 以後は、
its.Pointer(its.EqEq(*want)).Match(got).OrError(t)
と書き直すことをおすすめします。
まとめ
...と、以上の変更を含む v0.3.0 を公開しようとしています。何事もなければ、 明日にも公開される 見通しです。
追記
以上の内容のほか、 シナリオテスト(its/mocker/scenario
)の Next
の戻り値も変更しようと考えています。
これまで、
token, trackedFn := scenario.Next(dsc, fnImpl)
としてきましたが、 token
側に今のところ需要がありません。これを削除しようと考えています。
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