レベニューオペレーションは「仕組み」の話ではない 『RevOpsの教科書』を読んで見えてきたもの
はじめに
「マーケと営業の連携がうまくいかない」
「部門ごとにKPIが違い、評価基準がバラバラ」
「便利なツールを入れたのに、結局現場で使われない」
もしあなたが、こんな状況に心当たりがあるなら――それは“仕組み”の問題ではなく、“構造”の問題かもしれません。
私はこれまで、社内のデータ分析基盤の整備に取り組んできました。BigQueryを中心に、各種データを収集・統合し、分析や意思決定に役立てられる環境を構築してきた。便利で、価値がある――そう信じて疑わなかった。
ところが現実は違った。
データ基盤の存在自体が、社内で「認知されていない」。活用どころか、“あったの?”という反応すら珍しくない。仕組みとしては整っているのに、浸透しない。使われない。繋がらない。
「なぜ、これほど便利なものが、届かないのか?」
「なぜ、正しい仕組みが、人の動きにつながらないのか?」
そんなときに出会ったのが、『レベニューオペレーションの教科書』でした。
読んでわかったこと
この本を通じて、私がまず感じたのは、「RevOpsは“仕組み”の話ではない」ということでした。
マーケティング、営業、カスタマーサクセス、それぞれが個別に最適化された世界の中で活動している──その状態は、私の会社でも他人事ではありません。
RevOpsは、すべての部門を“収益”という共通目標で接続する、構造そのものを設計し直す思想だったのです。
さらに、RevOpsの中にある各種Ops(MarketingOps、SalesOps、CSOps)を横断してつなぐものとして、“中立で全体最適な分析基盤”の役割が重要であるということも腑に落ちました。
また、テクノロジーの導入も全体最適であるべきという指摘はとても現実的です。
SaaSやCRM、営業支援ツールなどが、現場単位で導入され、結果として“他部門とつながらない”という課題は私たちにも起きています。
ツールは“誰かの業務効率化”ではなく、“組織全体の協調と成果のための装置”であるべきという視点が刺さりました。
特に響いたポイント
特に印象に残ったのは、「数値の可視化ではなく、数値を生み出すオペレーションの可視化」という考え方でした。
私はこれまで、KPIや施策をデータで分析し、ダッシュボードで可視化することに重きを置いていました。
けれども、本当に大事なのは「その数値がどんな行動や判断、プロセスから生まれているのか」を組織全体で理解できる状態を作ること。
RevOpsは、施策の事前予測と事後の比較が機能するための構造設計そのものであり、分析基盤はその中立的な観測装置になるべきだと強く感じました。
そして、「論理だけでは人は動かない」という言葉。
正しいことを言っているだけでは組織は変わらない。
人が納得し、共感し、自ら動ける“つながりの構造”を設計することこそが、私の仕事だと再認識しました。
この本を読む前に知っておきたかったこと
もしこの本をもっと早く読んでいたら、私は「なぜデータが活用されないのか」を現場のリテラシーや関心の問題だけにしなかったと思います。
SaaS、CRM、BIツール――いずれも「良いもの」なのに、なぜかつながらない。
そのもどかしさの背景には、「全体最適の構造設計がなされていなかった」という問題があったと、今は言えます。
仕組みを整えれば文化が生まれるわけではない。
文化や成果を生み出すには、「構造・意味・関係性」が接続された“動ける状態”を設計する必要がある。
この本は、そのための思想を与えてくれました。
いまの自分が見えている景色
いま私は、分析基盤を「中立的な観測装置」として再定義しようとしています。
それは、バラバラのKPIをつなぎ直し、施策と収益を因果で接続する役割です。
SaaSやサービス導入の際も、それが「部門最適」に留まらず、**レベニュー全体の流れと整合するよう設計されているか?**という視点が不可欠です。
かつては「なぜ使われないのか?」と問い続けていました。
いまは、「どうすれば“動ける仕組み”として機能するか?」という問いへと、確かにシフトしています。
おわりに
この本は、単に業務改善やツール導入のハウツーではありませんでした。
それはむしろ、**「人と組織が、どうすれば同じ方向を向いて力を合わせられるか」**という問いへの答えを、構造的に示してくれる一冊でした。
私は、整える人から、“つなげる人”“問いをつくる人”“意味を定着させる人”へと、自分の役割を少しずつ再定義しつつあります。
この記事は、かつての自分に向けて、そしてこれからの自分への指針として残しておきたい記録です。
迷ったときには思い出そう。
RevOpsは、仕組みではなく「人が動ける構造」を設計する営みだったということを。
Discussion