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アジャイルでも工程は飛ばさない – ウォーターフォール、V字モデル、W字モデルの役割と関連性

2024/11/12に公開

アジャイルでも工程は飛ばさない – ウォーターフォール、V字モデル、W字モデルの役割と関連性

1. はじめに

ソフトウェア開発において、効率や柔軟性を重視するあまり、工程の重要性が見落とされることがあります。特にアジャイル開発のように短いサイクルで作成物を出すことが求められる場合、「アジャイルだから工程を飛ばしてよい」という誤解が生まれることもあります。

本記事では、ウォーターフォールモデルを起点として、V字モデルやW字モデルがどのように開発工程における品質保証を支えているのかを確認し、アジャイル開発においても欠かせない工程の役割について考えます。アジャイルであっても、品質を保つための工程を省略せずに進めることの重要性を見直すきっかけとしていただければ幸いです。

2. ウォーターフォールモデル – 基本的な開発工程とその意義

ウォーターフォールモデルは、要件定義、設計、実装、テスト、運用、保守という順序で進める直線的な開発手法です。このモデルの利点は、工程が明確に区分されており、進捗が管理しやすいことです。しかし、進行が後戻りしにくく、変更に柔軟に対応しづらいという課題もあります。

実際には、ウォーターフォールモデルの起源とされるウィンストン・W・ロイス氏の1970年の論文「Managing the Development of Large Software Systems」では、手戻りを許容する考え方が示されており、各工程の確認とフィードバックを重視していました[1][2]。その後、ウォーターフォールモデルが手戻りを避ける一方向の進行として広まりましたが、本来の意図としては、工程をしっかりと踏み、適宜確認・修正する姿勢が大切にされています。

3. V字モデル – 開発工程と品質保証の緊密な連携

ウォーターフォールモデルの一方向的な進行には、早期の不具合発見の難しさ、品質管理の一貫性不足、手戻りコストの増加といった課題がありました。これらの課題に対して、V字モデルは開発とテストを各工程で連携させることで品質保証を強化し、工程の重要性を再認識させるものです。

  • 早期の不具合発見: 各工程に対応するテストを事前に計画し、設計段階からテスト準備を進めることで早期に不具合を発見しやすくしています。

  • 一貫した品質管理: 各工程でのテストがあらかじめ組み込まれているため、プロジェクト全体で品質が一定に保たれやすくなります。

  • 手戻りコストの抑制: 工程ごとにテストが行われることで、後工程での大幅な手戻りを減らし、コストを抑えられる効果もあります。

このように、V字モデルは品質保証の観点から、各工程を省略せず確認作業を徹底する手法であり、アジャイル開発においても重要な考え方が含まれています。

注釈: V字モデルはウォーターフォールの補完モデルとして、テスト工程を各段階で対応付けています source

4. W字モデル – 品質保証と効率の両立

W字モデルは、品質保証をさらに効率化するためのアプローチです。要件定義や設計段階からテスト設計を並行して進めることで、品質保証の工程を圧縮し、効率を高めることができます。

アジャイル開発においても、品質保証を確保しながらスピード感を持って進めるためには、W字モデルのように工程を並行して行う手法が有効です。W字モデルが示す「工程と品質保証の並行進行」は、アジャイルのイテレーションでも参考にできる考え方であり、各工程を省略せずに進めるための助けとなります。

注釈: W字モデルは開発工程とテスト工程の並行進行で品質保証の効率化を図ります source

5. アジャイル開発と工程の重要性

アジャイル開発では、短いイテレーションや柔軟な対応が求められますが、それが「工程を飛ばしてよい」ことを意味するわけではありません。むしろ、ウォーターフォール、V字モデル、W字モデルが示すように、開発工程と品質保証の各プロセスを省略せずに行うことが、高品質な作成物を提供するために重要です。アジャイルであっても、各イテレーション内で要件定義や設計、テストといった工程をしっかりと行い、確認を怠らないことが、成功に欠かせません。

6. まとめ – アジャイルでも工程を省略しないことの大切さ

ウォーターフォール、V字モデル、W字モデルという各モデルの考え方を理解することで、アジャイルだからといって工程を省略してよいわけではないことが再認識されます。むしろ、短いサイクルで効率よく進めるためには、各工程を省略せず、丁寧に進めることが大切です。

品質を保ちながら柔軟に対応するために、各工程をしっかり踏み、確認を怠らない姿勢がアジャイルにも不可欠であると理解し、取り組むことが成功への鍵となります。

脚注
  1. ウィンストン・W・ロイスによるウォーターフォールの原論文(note.com↩︎

  2. 後に手戻りを避ける進行が一般化された背景(simplearchitect.hatenablog.com↩︎

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