プラットフォームとサービスの役割分担
プラットフォームとサービスの役割分担: 効果的な展開と運用の最適化
はじめに
近年、プラットフォームエンジニアリングが注目を集めており、多くの組織がサービス開発とプラットフォーム運用を分離する動きにシフトしています。しかし、プラットフォームの活用方法を誤ると、かえって運用が複雑化し、期待される効果が得られないことがあります。本記事では、プラットフォームとサービスの役割を明確にし、それぞれの適切な関係性について解説します。
プラットフォームとサービスの役割
プラットフォームの役割
プラットフォームは、実績のある良い手法を抽象化し、汎用化して横展開する基盤です。これにより、以下のメリットが得られます:
- 車輪の再発明を防ぐ:同じような仕組みを再度作り直す手間を省ける。
- 効果を波及させる:成功した方法論を組織全体で共有し、標準化できる。
- 安定性の確保:長期的な運用を前提とした信頼性の高い仕組みを提供できる。
プラットフォームは、その性質上、 System of Record (SoR) として安定性を重視します。
サービスの役割
サービスは、市場や顧客に新たな価値を迅速に届けることを目的としています。市場の変化や顧客の反応をいち早く反映し、柔軟に対応する能力が求められます。そのため、サービスは System of Engagement (SoE) としてスピードと適応力を重視します。
サービスのミッションは、次のような性質を持ちます:
- 市場への即応性:顧客のニーズに迅速に応える。
- 価値提供の最大化:新たな価値を創出し、提供する。
プラットフォームへの要求と運用の考え方
プラットフォームの即時拡張は避けるべき
サービスがプラットフォームに不足を感じた場合、直接プラットフォームに機能追加を要求するのではなく、まずはサービス側で必要な機能を一時的に 実装(オーバーライド) し、市場に価値を届けるべきです。
特に避けたいのは、以下のような状況です:
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他のサービスとの整合性を考慮する必要性が増す
新しいサービスを市場に迅速に届けるためには、そのサービスの要求だけに集中する方が効率的です。しかし、プラットフォームに変更を加える場合、他のサービスとの整合性や影響を考慮しなければなりません。この追加の考慮事項が、新しいサービスの市場投入を遅らせる要因となります。
フィードバックを活用したプラットフォームの進化
サービスが得たフィードバックをプラットフォームに共有することで、プラットフォームは以下のプロセスを実現します:
- 要求の整理:複数サービスからの要求を蓄積。
- 抽象化と蒸留:成功事例を基に汎用的な手法を抽出。
- 展開:次のサービス立ち上げ時に利用可能な形で機能を提供。
これにより、プラットフォームは進化し続け、新たなサービスの迅速な開発を支援します。
既存サービスの運用負荷を削減する方法
プラットフォームが新機能を提供した後、既存サービスは次のように対応することで運用コストを削減できます:
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プラットフォームの利用に置き換える
先んじてプラットフォームをオーバーライドして価値を提供していた部分を、プラットフォームが提供する標準機能に置き換えます。 -
運用負荷の低減
オーバーライド部分の運用負荷がプラットフォームに移行することで、サービス側の負担が軽減され、コスト削減につながります。
チームトポロジーの観点からの整理
この考え方は、チームトポロジーにも通じます:
- ストリームアラインドチーム(サービス):顧客価値を迅速に届けることに専念。
- プラットフォームチーム:サービスを支援するための安定した基盤を構築・提供。
ストリームアラインドチームが柔軟に対応し、フィードバックをプラットフォームに還元することで、組織全体の効率と効果が最大化されます。
おわりに
プラットフォームとサービスの役割を明確に分け、それぞれが本来の目的に沿って運用されることで、組織全体の柔軟性と生産性を向上させることができます。サービスは価値提供を最優先とし、プラットフォームはその支援基盤として進化する。この相互作用が、組織の成長を支える強力な仕組みとなります。
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