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内部品質と外部品質のバランス戦略:市場投入後の改善サイクルを回すために

2024/12/10に公開

内部品質と外部品質のバランス戦略:市場投入後の改善サイクルを回すために

新規サービスや製品開発では、品質向上と市場投入スピードの両立が常に課題となります。
その品質には大きく分けて、 内部品質(Internal Quality)外部品質(External Quality) があります。

  • 内部品質:開発者視点の品質(コードの可読性・保守性・拡張性・テスト容易性、アーキテクチャの整合性など)。
  • 外部品質:ユーザー視点の品質(使いやすさ、パフォーマンス、信頼性、セキュリティなど)。顧客満足度に直結します。

過度な内部品質追求は市場投入の遅れを招く

内部品質を最高水準に引き上げてからリリースしたい気持ちはわかりますが、それでは市場投入が遅れ、フィードバックなしで試行錯誤することになりかねません。
初期段階では「後から改善可能な最低限」の内部品質ラインを設け、先行して価値を市場に届けることが有効です。

「最低限の内部品質」に含めるべき要素

「最低限」とは、後から改善が可能な状態を維持しつつ、迅速なリリースを可能にすることを意味します。
ここで重要なのは、単にコードを整理するだけでなく、 DevOpsの基盤を初期から整える ことです。

  • 定性指標による基本合意
    コードレビューなどで「著しく読みにくいコードを回避」「基本的な責務分離を維持」といった、経験的な最低ラインを設定します。
  • 簡易的なアーキテクチャ原則の遵守
    レイヤー分割や依存関係管理など、リファクタリングしやすい設計原則に準拠することで、後からの機能拡張・改善を容易にします。
  • 基本的なテストとCI/CDの導入(DevOpsの基盤づくり)
    コア機能にはユニットテストを整備し、CI/CDパイプラインによる自動テスト・自動デプロイを可能にしておくことで、将来的な品質ゲートや定量指標導入の土壌を作ります。
    また、SLO(Service Level Objective)の設定やエラーバジェット、DORAのFour Keysメトリクスを確認できる仕組みを用意しておけば、初期段階から組織全体で品質改善に取り組む文化を醸成できます。

初期フェーズは定量的な品質指標(テストカバレッジ目標や複雑度閾値など)を厳密に設けず、定性指標と基本的なDevOps基盤で内部品質の底上げを図ります。
そして後ほど必要に応じて定量指標を段階的に導入し、品質を引き締める計画を立てておきます。

外部品質は市場投入後のフィードバックで強化

外部品質を的確に改善するには、実際のユーザーの利用状況やフィードバックが不可欠です。

  • 定性的な外部品質評価:ユーザーインタビュー、ヒューリスティック評価、ブランドイメージ調査など。
  • 定量的な外部品質評価:レスポンスタイム、エラー率、NPS、CSAT、コンバージョン率、離脱率など、運用中のログや分析ツールで取得できる数値データ。

こうした実データから改善ポイントを抽出し、機能追加・修正を繰り返して外部品質を段階的に向上させます。

DevOpsによる継続的な品質改善サイクル

初期からDevOpsの基盤(CI/CD、SLO・エラーバジェット、Four Keysメトリクス活用など)を最低限の内部品質要件に含めておくと、以下のサイクルが回しやすくなります。

  1. 迅速なフィードバック反映
    CI/CDで速やかに修正を反映できるため、市場からのフィードバックに迅速対応が可能。

  2. 客観的な品質把握
    Four KeysメトリクスやSLO遵守状況、エラーバジェット消化率などで開発組織全体の健全性を客観的に測定し、内部品質強化の必要性やタイミングを明確化できます。

  3. 段階的な定量指標強化
    初期は定性的評価中心でも、必要に応じてテストカバレッジを引き上げたり、コードメトリクス基準を設定したりすることで、内部品質を徐々に引き締めていけます。

このようなDevOpsベースの改善サイクルは、内部品質と外部品質をバランス良く向上させ、顧客価値を持続的に高めるための基盤となります。

まとめ

  • 初期段階で「最低限の内部品質」を確保すると同時に、DevOps基盤を整備する:スピーディな市場投入を妨げない範囲で、CI/CDやSLO、Four Keysメトリクスなどの仕組みを導入し、後からの定量的品質管理・改善に備えます。

  • 外部品質は市場投入後の実データで改善:実ユーザーのフィードバックに基づき、使い勝手や性能を段階的に向上させることで、ユーザー価値を最大化します。

  • DevOpsが生み出す改善サイクル:初期の内部品質最低ラインとDevOps体制が整っていれば、外部品質強化フェーズで得た知見を素早く内部品質向上に反映し、持続的な改善サイクルを確立できます。

この戦略によって、過剰な内部品質追求によるリリース遅延や、外部品質改善が困難になる事態を避けながら、顧客価値を継続的に高めていくことが可能になります。

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