CQRSにおけるWriterとReaderの使い分けとは? - RDBMSクラスタの例を通して理解する
CQRSにおけるWriterとReaderの使い分けとは? - RDBMSクラスタの例を通して理解する
CQRS(Command Query Responsibility Segregation)は、Command(コマンド)とQuery(クエリ)を分離する設計手法です。
システムの状態を変更する操作(Command)と、データを取得する操作(Query)を分離することで、システムの整合性とスケーラビリティが向上します。
ここでは、RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)をクラスタ構成で運用するケースを交えながら、CQRSにおけるWriterとReaderの役割や使い分けを解説します。
CQRSの基本的な考え方
CommandとQueryの分離
- Command(コマンド):システムのデータを変更する操作(作成、更新、削除など)。データの整合性と一貫性が必要で、通常は厳密なトランザクションが求められます。
- Query(クエリ):システムのデータを取得する操作。データの整合性が多少遅延しても許容されることが多く、パフォーマンスやスケーラビリティが重視されます。
CQRSは、これらの異なる特性を持つ操作を別々のデータモデルやデータソースで処理することで、システム全体の効率を最適化します。
WriterとReaderの役割とRDBMSクラスタにおける構成
CQRSにおけるWriterとReaderの役割を理解するために、RDBMSでのクラスタ構成を例にします。
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Writer:Command(データの変更)を受け付けるデータベース。データの作成、更新、削除など、状態を変更するすべての操作をWriterノードが担当します。整合性を保つため、通常は単一のWriterノードが用意され、このノードがデータの「書き込み元」として機能します。
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Reader:Query(データの取得)を担当するデータベース。Writerによって変更されたデータが複数のReaderノードに同期され、クエリ用に最適化された形で利用されます。クライアントからの読み取り要求はReaderノードで処理されるため、負荷分散が可能であり、大量のクエリにも対応しやすくなります。
クラスタ構成の具体例
RDBMSクラスタの構成では、一般的に次のようなセットアップが考えられます:
- 単一のWriterノードが、データの一貫性を保つためにCommand(データの変更)を一手に引き受けます。
- 複数のReaderノードが、Writerノードのデータを非同期で受け取り、Query(データの取得)を担当します。クライアントからの読み取り負荷が高い場合でも、複数のReaderノードに負荷を分散できるため、効率的です。
この構成により、データの書き込みと読み取りが役割ごとに最適化され、パフォーマンスとスケーラビリティが向上します。
Writerの役割と使用タイミング
Command操作時には、Writerノードを使用します。具体的な役割は以下の通りです:
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データの一貫性の管理
Command操作はデータ変更を伴うため、トランザクション管理が求められます。Writerノードではデータの一貫性が保たれるように、更新や削除時のロールバック機能も備わっています。これにより、システムの整合性が確保されます。 -
集約の最新状態の保証
複数のデータを参照し、1つの集約(単位ごとのデータのまとまり)を更新する場合、最新の状態に基づいた一貫性のある操作が重要です。Writerノードから状態を読み出すことで、最新データを基に安全な更新が行えます。もしReaderから状態を読み出すと、非同期な更新が反映されるまで遅延が発生する可能性があり、不整合なデータで処理されるリスクがあります。
Readerの役割と使用タイミング
Query操作時には、Readerノードを使用します。以下がその特徴です:
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読み取り専用モデル
Readerノードは読み取り専用であり、クエリ処理に最適化されたインデックスやキャッシュが活用されています。複数のReaderノードでクエリを分散して処理できるため、大量のクエリに対しても安定した応答が得られます。 -
最終的な整合性の提供
Readerノードは非同期でWriterのデータを反映するため、データは最新でない場合があります。しかし、最終的な整合性を提供できるような仕組みになっているため、多少の遅延が許容される場合には十分に利用可能です。
CQRSとWriter/Readerの分離のメリット
CQRSでWriterとReaderを分離することで、次のようなメリットが得られます:
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集約の一貫性保持
Command操作はWriterノードで行うため、最新状態に基づく正確なデータ更新が保証され、不整合な状態が発生しにくくなります。 -
スケーラビリティの向上
Query操作は複数のReaderノードに分散されるため、クエリが大量に発生する場面でも負荷分散によりスケーラビリティが向上します。 -
役割の明確化による設計のシンプル化
CommandとQueryを分離し、それぞれの責務に応じた最適化が可能となることで、システム設計がシンプルになり、管理がしやすくなります。
CQRSとWriter/Readerの分離のデメリット
CQRSによるWriter/Readerの分離にはいくつかのデメリットもあります。
特に Writerノードのスケーラビリティ に関しては、以下の課題が考えられます:
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スケールアップが主な拡張手段となる
この構成では、Writerが1台であることが多く、書き込みの負荷に対して水平スケール(スケールアウト)ではなく、スケールアップ(ハードウェアの強化)で対応することが主になります。そのため、書き込みリクエストが増加する場合、1台のWriterでは対応が難しくなる可能性があります。 -
書き込み処理のシャーディングが必要になる場合がある
書き込み負荷が増大するシステムでは、複数のWriterノードを設けるためにシャーディング(データを分割して管理)を導入することが必要になるかもしれません。シャーディングを導入することで、データの特定の範囲やキーに基づき、負荷を分散できます。ただし、シャーディングの実装は、データ管理が複雑になるため、システムの要件に応じた慎重な検討が必要です。
このように、CQRSによるWriter/Readerの分離はパフォーマンスと整合性の向上に寄与しますが、特にWriterのスケーラビリティに関しては設計上のトレードオフが発生する可能性があります。
まとめ
CQRSにおけるWriterとReaderの使い分けは、RDBMSクラスタ構成を利用する場合に特に有効です。Command操作時にはWriterから最新の状態を参照し、Query操作は負荷分散が可能なReaderで処理することで、システムの整合性とパフォーマンスが両立されます。システムが大規模化するにつれて、CQRSの設計が活きてきますので、要件に応じた適切な使い分けを検討しましょう。
CQRSによる設計で、データの一貫性とスケーラビリティを高め、信頼性のあるシステムを構築していきましょう。
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