1週間スプリントにおける時間の使い方のパタン・ランゲージ
前提として、スプリントを1週間として、1日8時間を勤務時間として、5日間働きますよーということで書いています。
スプリントを2週間にしたり、1日6時間を勤務時間にしたり、祝日があるので4日間になりますよという場合については、うまく調整して捉えていただければと思います。
1週間スプリントにおける時間の使い方のパタン・ランゲージ
スプリントの基本時間設定
問題
1週間スプリントで利用できる時間の上限が曖昧だと、スプリント計画が現実的でなくなり、過剰な計画や負担が発生し、スプリントゴールの達成が難しくなるリスクがある。
解決
1週間を5日間、1日を8時間の上限とすることで、合計40時間を1週間スプリントの上限として設定する。計画時に利用可能な時間を明確にし、無理のない作業量を設定する基準とする。
効果
上限が明確になることで、スプリントの計画が実現可能なものとなり、スプリントゴール達成に向けて効率的に取り組むことができる。
イベントデーの設定
問題
1週間スプリントでスクラムイベントにかける時間をどう配分するかが難しい。毎日の作業を安定して確保しつつ、スクラムイベントも必要とされる。
解決
1週間スプリント内で1日を「イベントデー」として設定し、この日にスクラムイベントを集中させる。具体的には、プランニングに1時間、レビューに1時間、レトロスペクティブに1時間、合計3時間を費やす。この日以外は「開発時間の確保」と「自己投資時間の確保」に集中できるようにし、スプリントゴールに向けた取り組みを高める。
効果
スクラムイベントを1日にまとめることで、他の日を「開発時間の確保」と「自己投資時間の確保」に集中できるようになり、スムーズな進捗が期待できる。また、イベントデーに残る5時間については「余剰時間の捉え方」のパターンを参照し、使えたら良いという柔軟な考えで対応することで、計画の現実性と柔軟性が高まる。
デイリースクラムの時間配分
問題
デイリースクラムは、スプリントゴールに向けたその日の計画を調整するために必要だが、開発者が開発に集中する時間を圧迫しないようにしたい。
解決
デイリースクラムは、「開発時間の確保」で設定された1日あたり4時間ではなく、「自己投資時間の確保」で確保した残りの4時間から15分を使う。デイリースクラムを通じて、開発者はその日達成すべき作業についてチーム全体で確認し、調整を図ることで、スプリントゴール達成に向けた明確な指針を持つ。
効果
デイリースクラムが「開発時間の確保」を妨げることなく、チームとしての一日の計画を調整しやすくなる。開発者はチーム内で進捗状況や課題を共有し、効率的にスプリントゴールへと取り組むことができる。
余剰時間の捉え方
問題
イベントデーにスクラムイベントを集中させても、残り時間が予測通りに使えるとは限らない。計画に取り込んでしまうと、結果的に計画が崩れる可能性がある。
解決
イベントデーでスクラムイベントに3時間を費やし、残りの5時間を「無いもの」として計画に組み込まず、使えたら良い程度に捉える。確実に使える時間としては頼らず、実行可能な計画を立てる。
効果
余剰時間をあてにしないことで、スプリントの計画が現実的かつ柔軟性を持つようになる。余裕のある計画を実行することで、開発者は過剰な負荷を避けつつ、スプリントゴール達成に向けて効率的に取り組むことができる。
開発時間の確保
問題
スプリント内でスプリントゴールに向けた開発に集中する時間をどのように確保するかが難しく、割り込みタスク(問い合わせやインシデント対応)に追われると、スプリントゴールの達成が困難になることがある。
解決
スプリント内で4日間、1日4時間(午前2時間・午後2時間)の「開発時間の確保」を設定し、この時間をスプリントゴールに専念する時間として活用する。スプリントゴールを達成するための作業はこの時間内で行い、これ以上の作業はプランニングで受け入れず、範囲を調整する。また、割り込みタスクについては「自己投資時間の確保」の中で対応することで、スプリントゴールのための開発時間をしっかりと守る。
効果
明確な開発時間と割り込みタスク対応時間を分けることで、スプリントゴール達成に向けた基準が明確になる。計画の段階で無理のない作業量を設定できるため、過剰な負荷を防ぎ、安定した進捗が期待できる。また、割り込みタスクに対応しやすくなり、開発者の負担が軽減される。
バックログリファインメントの時間配分
問題
スプリント内でバックログアイテムのリファインメントに必要な時間を適切に確保しなければ、プランニング時に十分な準備が整わないことがある。
解決
バックログリファインメントは、「開発時間の確保」で設定されたスプリントゴールにコミットする16時間ではなく、残りの16時間のうち、最大で何時間を使うかをプロダクトオーナーと合意する。リファインメントが不足しており、プランニングレディなバックログアイテムが足りない場合は、スプリント開始時に必要な時間を決定し、スプリントゴールに向けた作業時間から調整する。
効果
リファインメントに適切な時間を確保することで、次回のプランニングがスムーズに進み、スプリントゴールの達成に向けた計画が整う。リファインメントと開発時間のバランスが保たれ、計画通りのスプリント運営がしやすくなる。
自己投資時間の確保
問題
開発者としてのスキル向上や技術的負債の解消、CI/CDの改善などに取り組む時間を確保するのが難しい。個人の成長やチームの改善が後回しになるリスクがあり、これが原因で割り込みタスク(問い合わせやインシデント対応)が増えることもある。
解決
スプリント内の4日間×4時間を「自己投資時間の確保」として設定し、リファクタリングや学習、CI/CD改善、技術スパイクなどに取り組む。この時間を使ってチームの技術的基盤を強化することで、将来の割り込みタスクを減らすことを目指す。
効果
「自己投資時間の確保」によって、スキルアップや改善が進み、割り込みタスクの原因となる技術的負債や対応不足が軽減される。割り込みタスクが来た場合はこの時間を削ることになるが、むしろこの時間で割り込みの根本原因に対応していくことが、チーム全体の安定につながる。
チーム貢献の精神
問題
個人の成長とチームの成果を同時に高めるための方法が必要。個人のスキルアップだけではなく、チーム全体に還元する意識が求められる。
解決
「自己投資時間の確保」を使い、リファクタリング、
学習、ツールの改善など、チームに貢献できる活動を意識的に行う。チームにとって役立つ活動として取り組むことで、貢献の意識が強まる。
効果
開発者が自己の成長だけでなくチームへの貢献を意識して行動するようになり、スプリントの成功に向けた基盤が強化される。チーム全体の技術力も向上し、次のスプリントに向けた準備が整う。
OSS貢献とコミュニティ活用
問題
スプリントの成功と開発者のキャリアアップを短期間で行うための手段が必要。限られた時間で自分やチームにプラスとなる活動を実現したい。
解決
「自己投資時間の確保」を活用して、OSSツールやプラグインを開発し、外部コミュニティに貢献する。また、それをチームに導入し、スプリントの活動に役立てることで、自分の知識を広げ、チームの活動を効率化する。
効果
開発者のスキル向上とキャリアアップが実現し、チームにとっても新しい技術やツールが導入されることで、技術力が高まる。チームの成長と共に、外部への貢献が相互に作用し、より大きな価値が生まれる。
Discussion