WEB+DB PRESSの執筆を振り返る
はじめに
参加してきました。Web業界の生き字引みたいな方々と交流できて、大変楽しい会でした。
感化されて、自分も書こうと思います。
自分はWEB+DB PRESS vol.129の特集3「レコメンドエンジン総実装 協調フィルタリングから深層学習まで」を担当させていただきました。
執筆のきっかけ
当時は「深層学習×推薦」技術というテーマで研究・開発を進めており、あまり発信活動には積極的ではなかったのですが、会社のテックブログを見ていただき、Facebook Messengerで編集の方から直接お声がけいただきました。
「検索」というテーマが良かったので、次は「推薦」だということで探してところ、会社のテックブログを見たそうです。
「深層学習」というと、ほとんどが画像処理か、ついで自然言語処理の話が多く、推薦に関しては日本には全くと言っていいほど実例がありませんでした。もちろん、深層学習を使ってより良い推薦をしていこうという記事や発信はありますが、実践投入できるだけの情報、そしてコードベースでは皆無でした。そのため、海外でレコメンドを積極的に行っている特定の企業(NetflixやSpotify)の情報や、レコメンド系のカンファレンスの論文などにアクセスし、かなりニッチなことをやっていたなという自覚があります。
以上のことを踏まえても、WEB+DB PRESSでは次世代に流行りそうな尖った技術テーマを扱いたい、またWEB開発の現場で実践投入されるような粒度で執筆して欲しいので最適だという御返事をいただきました。自分のやっていることが大きく取り上げていただける良い機会で、滅多にないチャンスだったので、執筆させていただけることになりました。
企画会議
執筆するにあたっては企画会議を通す必要があります。今見返してみると、企画会議用の資料だけで7ページ書いています(本誌が30ページなのに)。表には出ないのにそれなりのタスクですね。
企画会議では以下の点で判断されていた気がします。
- なぜ今このテーマで特集するのか
- なぜこの著者にこのテーマで書かせるのか
企画会議のフィードバックにコメントが残っていました。(以下引用)
なぜ今特集するのかを明確にし、それに即した構成案にしたい
「レコメンドエンジン」だけだと現在はキャッチではない
「レコメンドエンジン」だけでなく、「深層学習」と合わさってまだ世に広く普及していない新しい技術だということで納得していただき、深層学習に関する内容を詳細に書いていく方向性で無事企画会議を通していただきました。
執筆
いざ執筆となって、企画会議の段階でコンテンツのアウトラインは固まっていたので、中身に関してはスラスラ書けたと思います。歴代の著者の方々が築いてきたinao記法や、どうしても1行が長くなりがちな機械学習系Pythonコードを紙面でも見やすいように細かく改行していったりと、Web記事では味わえないような体験も紙媒体ならではですね!
執筆のプロセスを通じて、技術評論社という会社は技術コミュニティへのリスペクトがありつつ、出版物への質の担保にもしっかり気を配り、校正の入らないWeb記事よりも信頼性の高い情報を世に出す仕組みが整っていると感じました。もっとも苦労した点は、普段は機械学習エンジニアやデータサイエンティストといった方々をコミュニケーションをとるため、本誌の中心ターゲットであるWebエンジニアにとっては慣れない専門用語が多く、解説してくれないとわかりづらいというレビューをたくさんいただきました。(その際は大変お手数おかけしました。)
深層学習系のレコメンドアルゴリズムに関してTenserflow 1系で書かれていたものを2系にリライトしたり、論文では数式でしか解説されていなかったものをPythonコードに落とし込んだりと、オリジナリティあふれるコンテンツになったのではないかと思います。
出版とその後
執筆が終わり、データでも献本も渡されていましたが、出版された当日は近所の書店にいって、自分の執筆した本が並んでいることに感動を覚えました。仕事の同僚から感想の連絡が来たり、新しく会う方々にも先にWEB+DB PRESSを読んだよと言及されたり、エンジニアにとっては大変影響力のある雑誌だと実感し、執筆して良かったなと思います。
またありがたいことに推薦技術をプロダクトに活用したいといくつかお声いただき、開発に携わらせていただいています。読者の皆さんの生活にも結びついていると嬉しいです。
最後に
推薦に関してはBytePlusといった中国系の企業も盛んに投資するようになり、AIに関してはChatGPTをはじめとする生成AIがブームの中心にいます。日本ではまだまだ推薦ブームが来るのは先かもしれませんが、この執筆を通して少しでも技術コミュニティへの貢献ができたことを誇りに思います。機会を下さった技術評論社の方々には感謝でいっぱいです。
「WEB+DB PRESSの休刊は文字通り休刊であって廃刊ではありません。これからも雑誌の良さを活かしながら特別号を作っていきます。」WEB+DB PRESSの特別号でもそうじゃなくても、自分もレベルアップして、またどこかで自分の執筆で技術コミュニティへの貢献をしたいと思います。
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