コミュニケーションにおける「XY問題」に立ち向かう
概要
XY問題とは、本当に解決したい課題について直接聞くのではなく二次的な課題を解決する方法を聞くこと。こういったコミュニケーション上の問題を理解し、対処を考えていきましょう。
この記事を書くに至った背景
開発チームとは別で社内技術サポートチームがいます。プロダクトに関連する質問やトラブルを解決する業務です。こんな課題に直面しました。
- 繁忙期はチケットの量が増える
- 質の低い質問も増えてくる
- 解決までのリードタイムも増える
- チームのBandwidthを超えてくる
- 不満が積もる
さて、質の低い質問とはどんなものでしょうか。定義が難しいですが、この場面ではXY問題
という言葉が当てはまることに気づきました。
XY問題とは
XY問題とはどのようなものでしょうか。まずはwikipediaとstackexchangeを引用して紹介します。
XY問題とは「質問者が、本当に解決したい課題Xについて直接聞くのではなく、Yという二次的な課題を解決する方法を聞く」ことによって発生するコミュニケーション上の問題を指す語である。これはヘルプデスクや技術サポート、ソフトウェア工学、カスタマーサービスなどの現場でしばしば見られる。
wikipedia XyProblem
XY 問題に陥らないためには、今まで試してみた方法たちを全部書き、より広い視点で質問するようにしてください。詳細を求められたときはそれを追記してください。特に、より具体的な話を求められれば可能な限り答えるようにしましょう。もし既に試してみて駄目だったと思った解決法があるなら、それを試してみて駄目だったことも書いておきましょう。その部分についてのやり取りを繰り返さずに済みます。
stackexchange XyProblem
XY問題になっている悪い質問の例
具体的な例を1つ日本語訳で引用します。
<n00b>ファイル名の最後の3文字をechoするにはどうすればよいですか?
<feline> もし変数に入っているなら: echo ${foo: -3}
<feline> なぜ3文字? 本当にしたいことはなんですか?
<feline> 拡張子が必要ですか?
<n00b> Yes.
<feline> 最初からそういってくれ!
<feline> すべてのファイル名に3文字の拡張子が付くという保証はないから、やみくもに3文字を取得しても問題は解決されませんよ。
<feline> echo ${foo##*.}
これがXY問題です。背景・前提・目的が明らかでない状態で、2次的な課題の解決の仕方を質問してしまったことで、余計なやりとりが発生しました。回答者のfeline
さんが気を利かせてくれたおかげて課題は解決できましたが、そうでなければ質問者のn00b
さんはまだまだ調査や質問が必要になったでしょう。
いい質問の例
では、どのような質問にすべきだったのか、私なりに例を書いてみます。
<n00b>
`jpg`や`png`など、ファイルについている拡張子をechoする方法を知りたいです。
ファイル名の最後の3文字をechoするにはどうすればよいですか?
<feline>
拡張子は3文字とは限らないよ。ドットから後ろの部分を出力すれば解決だ。
echo ${foo##*.}
いいですね。背景が共有してあることで、やりとりが一度ですみました。
この例はごく簡単なものですが、実際は2次的だけでなく3次的な課題への質問がきたり、より複雑な背景や前提があったりします。そんなケースでXY問題が起こると、質問者も依頼者もやりとりで疲弊し、どちらも消耗して不満を持ち、解決までのリードタイムが伸び、しばしば本質的な課題が解決されず放置されます。いいこと無しです。
対処
XY問題について知ることができました。これが起きないようにするにはどうしたらいいでしょうか?
質問者、回答者の両方がXY問題が起きないよう注意する必要があります。コミュニケーション上の問題なので、これを解決する銀の弾丸などないです。あえていうなら、論点思考と仮説思考の文化を浸透させることで立ち向かう必要があると思います。
論点思考と仮説思考
- 論点思考
- 仮説思考
論点思考とは、問題解決や戦略策定をするにあたって「真に解くべき問題や課題」を設定する力です。一方で仮説思考は、そのように設定した論点に対する「今時点の答え」を設定する力です。
https://note.com/apple_ringo/n/ned1121461dbc
依頼よりも課題
- 「依頼」を見ている人と「課題」を見ている人
正確な用語を使う
「ユビキタス言語」とは、ドメインに対して、同じ言葉を使い、同じモノを認識するための定義のことを指します。
https://note.com/aguri/n/nc3478ea605b7
NOを言うべき時はNOを伝える
NOを伝える技術
組織の人々の透明性を高める
「情報の透明性」とは、意思決定と意思決定に関わる情報が、組織内に正しく整合性をもって伝達されるように継続して努力し、何かわからない決定があったとしても、それは隠そうとしたわけではなく、抜けてしまったのか、自分が聞き逃したのだから、直接聞いてみようという関係性を作ることです。情報公開が情報の透明性を作るわけではありません。
「透明性」とはつまり、継続したコミュニケーションや仕組みを通じて、コミュニケーションの不確実性を低く維持し、情報の非対称性が削減され、限定合理性の働きを弱められている状態のことをいうのです。
広木大地. エンジニアリング組織論への招待.
納得は全てに優先するぜ
「納得」は全てに優先するぜッ‼ でないとオレは「前」へ進めねえッ!「どこへ」も!「未来」への道も!探すことは出来ねえッ‼
ジャイロ・ツェペリ
余談
ChatGPTに質問するときも、XY問題に気をつけるといい回答が得られるかもね。
Discussion