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給与所得者の自作キーボード活動における税金の話

2024/09/14に公開

一般的な給与所得者が趣味の範囲で有償頒布を伴う自作キーボード活動をするにあたり、適切に税金を納めながらも手間を最小化するための考え方のメモ。

結論としては、活動による所得を0円以下(赤字)に抑え、PCB等を海外サービスに発注する際は送料等込み費用が1万円以下となるようにすれば、特に気にすることはない。

なお、JLCPCBでOCS Expressを配送業者に指定する場合は、送料を除外した費用が1万円以下かどうかで考えて良いので少し余裕ができる(インコタームズがC&Fとなるようなので)。

本記事の対象

下記を全て満たす人が対象。

  • 1箇所の一般法人のみに所属する給与所得者で給与収入が2000万円以下
  • 税金の納付は源泉徴収。確定申告はしていない
  • 法人登記や個人事業主としての開業届は出していない
  • 活動による所得は年間20万円を超えていない

所得税、住民税

活動による所得が20万円以下であれば所得税に関する申告は不要だが、住民税の申告は必要(※)。これを避けるために活動による所得はマイナス、赤字になるように調整することが望ましい。

  • 活動による取得が20万円を超えない場合は確定申告不要。源泉徴収のままでよい
  • 但し雑所得に対する住民税については所得額にかかわらず申告が必要
    • 雑所得が発生しないように活動による所得を赤字にする
    • 会社が対応可能ならば、住民税のみ一般徴収として自分で納める
    • 素直に確定申告に切り替えて対応する

https://www.yayoi-kk.co.jp/fukugyo/oyakudachi/fukugyo_20manika/

雑所得が20万円以下でも1円でも利益がある場合は市区町村に対して住民税の申告が必要です

輸入関税、輸入消費税

中国の製造サービスを用いる場合。中国で製造したPCB、ケースの輸入関税は無税(※1)だが、輸入消費税は課税される。但しCIF価格(※2)の合計が1万円以下であれば免除される(※3)ので、このラインを意識する。

納付が必要な場合は通関業者(配送業者が兼ねる場合が多い)が代理で納付し、その額に手数料を足して輸入者に請求となる。手数料額や具体的な手続きは配送業者ごとに異なる。

有償での頒布を考えているならその所得によらず一般輸入扱いにする必要がある。

  • CIF価格が1万円以下の場合
    • 個人輸入/一般輸入ともに免除。納付の必要なし
  • 1万円を越える場合
    • 個人利用の場合 (個人輸入)
      • 16,666円までは納付不要、それを越えると必要
    • 有償での頒布を予定している場合 (一般輸入)
      • 所得額にかかわらず、販売目的である以上納付が必要
      • 一般輸入として処理してもらえるように、発送元や配送業者に対して依頼や手続きが必要

※1 PCBは8534や8537、アルミ製自作ケースは7616などに該当。中国はLDCなのでその列を見る
https://www.customs.go.jp/tariff/2024_04_01/data/j_85.htm

※2 運賃と保険料を含んだ輸入価格。要は送料込みで支払った額と思えばいい・・のだが、間に通関業者(OCS Express等)が挟まっている場合は発送元と通関業者の契約内容に依存するように見える。実際、JLCPCBでOCS Expressを配送業者に指定した場合のインボイスはCFR(C&F)となっているため、CIF価格に送料や保険料は含まれていない。

https://www.upr-net.co.jp/articles/knowledge/logistics/cfr/

輸入港までの海上運賃および海上保険料は売主(輸出者)の負担
...
輸出側通関費用は売主、輸入側通関費用は買主
...
CFRは貿易や海運に利用されますが、海上保険は含まれていません

※3 一般利用だと10,000円、個人利用だと16,666円(10000÷0.6)まで免除
https://www.customs.go.jp/tsukan/kanizeiritsu.htm

個人の方がご自身の個人的使用の目的で輸入する貨物の課税価格は、海外小売価格に0.6を掛けた金額

一般輸入としてもらう方法(OCS Expressの場合)

個人住所宛への送付は個人輸入として自動処理されてしまうことが多い。これを避け、一般輸入扱いにしてもらうには配送業者ごとに手続きが必要となる。

なお送付先に屋号が付いていれば一般輸入と見做してくれる可能性があるが、確実ではない。

  • OCS Expressでは輸入者情報としてあらかじめ住所氏名を登録しておくと、送付先がマッチした場合に一般輸入として処理してくれる運用がある。特に書式とかはないので電話やメールで依頼する(※1)
  • もし誤って個人輸入と見做され、適切な課税がなされなかった場合は修正申告が行える。これも配送業者にて行う。同様に電話やメールで相談する(※1)

もちろん、法人登記や適格請求書発行事業者の登録がある場合は、配送先法人番号や適格請求書発行事業者番号等、税関が輸入者を事業者であると認識できる情報がインボイスに記載されるよう発注時に手続きすることで、税関が一般輸入と見做してくれるはずである。

例えばJLCPCBでは配送先住所や請求先住所にCompanyを選択し、EORI/VAT/Tax number欄にそれらの番号を入力することでインボイスに記載してもらえる(※2)。

※1 OCS Expressや税務署、税関への電話での問い合わせ結果より。
※2 メールでの問い合わせ結果より。

副業

副業で20万円以上の所得があると、確定申告が必要になる。やはり収益は出さないに越したことはない。副業の定義や就業規定上の扱いは会社により異なるので、所属する企業に相談する。

活動で所得を得ようと思うなら、個人事業主として開業して屋号を付け、会社に副業の手続きを取って確定申告に切り替えるのが一番クリアに思える。

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