EndeavourOS ではじめる Windows & Arch Linux デュアルブート環境構築
はじめに
はじめまして、翠川です。
私用の Windows のインストールされている PC に Arch Linux(EndeavourOS) とのデュアルブート環境を構築したときの備忘録をまとめました。
私の PC 環境
仕事では Mac で開発をして、私用では Windows を使っていました。
Windows でも今では WSL(Windows Subsystem for Linux)が使えるようになったため、ほぼ完全な Linux 環境が使えるようになり、とても開発しやすくなりました。
しかし、WSL 上で開発している状態がなんとなく二人羽織感があって違和感があったり、WSL 上で GPU を使って機械学習をしたい場合は素の状態では GPU を十分に使えなかったり(Windows11 にする or Windows insider program に登録する、さらに CUDA on WSL2
を導入する、etc)、考慮しなくてはならないことがまだまだあるなと思っています。
そこで、私用の開発環境を Linux ベースの OS に移行したのでその方法と感想を載せたいと思います。
考慮すべき点
Windows で使用しているツールへの影響
私用で使っているツールについて Linux で動作可能かどうか調べました。
種別 | 名前 | Linux 対応 | 備考 |
---|---|---|---|
開発環境 | VS code | ◎ | |
開発環境 | Docker | ◎ | |
ゲーム | Apex legends | ◯ | Steam Proton で動作可能(Gold) |
イラスト作成 | Clip studio | △ | wine を使用することで制限付き動作可能 |
Windows 環境から完全移行可能か
完全移行(Windows 環境を削除して完全に移行する)できるか考えましたが、使いたいツールの関係で完全移行は諦めました。
代案
- 基本的には Linux に移行し、必要なときには Windows も使用できるようするデュアルブート環境を作成する
デュアルブート環境を考える
Windows と Linux のデュアルブート環境は昔構築していたのですが、不安定になりがちなのでできるだけ安全な環境を考えます。
考慮する点として、
- Windows のアップデート(特に大型アップデート)時に環境が壊れる
- 同一のストレージに共存させるとパーティションが複雑化する
- トラブル時の復旧作業が複雑化する(片方を修復しようとしてもう片方も環境が壊れることもある)
があります。
これを回避するために、
- Windows と Linux のインストール場所を物理的に分ける(ディスク 0:
Linux
ディスク 1:Windows
) - ブートローダーはディスク 0:
Linux
に作成し、こちらからの起動を優先にする
こうすることで、どちらかの環境が壊れた場合もディスクを物理的に外すことでもう片方だけは起動できるようになります。
※このように分けてもちょっとしたことで環境が破壊されることもあるので運用には細心の注意を払ってください。
ハードウェア構成
参考に載せておきます
種別 | メーカー | 名前 | 備考 |
---|---|---|---|
CPU | AMD | Ryzen 5 5600X | |
GPU | Gainward | GeForce RTX3060 Ghost 12g | |
マザーボード | MSI | MAG B550M MORTAR WIFI | |
メモリ | ADATA | AX4U3200716G16A-DCBK20 | |
ストレージ | サムスン | 980 MZ-V8V1T0B/IT | Windows |
ストレージ | Western Digital | WD_BLACK SN770 NVMe SSD 1TB | Linux |
Linux ディストリビューション
ディストリビューションとは Linux カーネルを元にユーザーが利用しやすいようにソフトウェアなどをパッケージにまとめたものです。
代表的なディストリビューションには Debian
Ubuntu
Fedora
Cent OS
Arch Linux
Gentoo
などがあります。
通常は Linux カーネルそのものではなく、公開されたディストリビューションを選択し、Linux を利用していくことになります。
ディストリビューションの情報は distrowatch にまとまっているのでご確認ください。
ディストリビューションの選択
今回使用するディストリビューションは Ubuntu
と Arch Linux
を候補としました。
理由は以下のとおりです。
- Ubuntu
- 使い慣れている
- ユーザーが多いので大抵の問題は検索すれば解決する
- Arch Linux
- 軽量
- パッケージマネージャーが優秀らしい
- 勢いがある
この2つを候補として両者の比較を行いました。
Ubuntu | Arch Linux | 備考 | |
---|---|---|---|
OS のバージョン | 6ヶ月ごとにリリース | ロングリリース(常に最新) | |
パッケージマネージャー | apt | pacman*, AUR** | pacman の方が apt より早い |
パッケージ数 | 約5万 | 約5.5万(pacman + AUR) | |
運営元 | Canonical Ltd. | コミュニティ | |
サポート | 記事多数。日本語の情報も多い | 公式 wiki が充実している | |
インストール | インストーラーが完備 | 難しい(あまりの難しさから Arch Linux Install Battle とも言われる) |
- Arch Linux 公式で管理しているリポジトリです
** Arch User Repository の略。Arch Linux ユーザーが主体となって管理しているリポジトリです
EndeavourOS
最新のカーネルが使えたり、軽量なことが魅力なものの、いきなりデュアルブート構築で Arch Linux Install Battle
をする気にはなれなかったので、無難に Ubuntu を使おうかなと思っていたのですが、EndeavourOS
という良さそうな Arch Linux
派生のディストリビューションを見つけました。
ふむふむ。
簡単にまとめると GUI のインストーラーが完備された Arch Linux
のようです。
これなら最初の最低限の設定を自動でやってくれるので安心ですね。
distrowatch でも過去6ヶ月のページヒットランキングが全ディストリビューション中2位と、とても人気なようです。
せっかくなので今回はこちらの EndeavourOS
で Arch Linux デビューしたいと思います。
環境構築
インストールメディア作成
インストールメディア作成は 公式のマニュアル があるのでそちらに従います。
.iso
ファイルを公式サイトからダウンロードする
1. EndeavourOS 公式サイト へアクセスし、DOWNLOAD & HELP
のプルダウンから Latest release & download
のページへ遷移します。
遷移後のページを下までスクロールすると.iso
ファイルをダウンロードできる各種ミラーサイトのリンクが確認できます。
どのミラーサイトでのいいので ISO
カラムをクリックしてファイルをダウンロードしてください。
.iso
ファイルからインストールメディアを作成する
2. 筆者の母艦のPCが Windows だったため、USBWriter for Windows
を使用してインストールメディアを作成します。
USBWriter for Windows をインストールします。
起動した USBWriter
上で ダウンロードした .iso ファイル
と インストールメディア作成用の USB メモリ
を選択し、Write
で書き込みます。
※最新の.iso ファイル
が 1.8GB程度サイズなので、これ以上の容量の USB メモリを使用してください。
※インストールメディア作成に使用した USBメモリに元々保存されていたデータは消去されます。事前にデータは退避させてください。
インストール
起動
作成したインストールメディアをインストール先の PC に接続し、PC を起動します。
インストール済みの Windows よりもインストールメディアが優先されるので EndeavourOS x86_64 UEFI Default
を選択します。
※インストールメディアが優先されない場合は BIOS からディスクの起動順位を変更してください。
Start the Installer
起動に成功すると以下のようなダイアログが開きます。
Start the Installer
Online
の順に選択します。
言語設定
言語、タイムゾーン、キーボードの設定をします。
パーティションの設定
EndeavourOS をインストールためのパーティションの設定を行います。
今回は Windows とデュアルブートにするため、Windows がインストールしてあるものとは別の空ストレージを用意しそこにインストールするようにします。
select storage device
のプルダウンで想定通りのストレージが選択されていることを確認します。
Erase disk
-> swap to file
を選択します。
※同じストレージにパーティションを区切ってインストールすることも可能ですが、経験上 Windows
Linux
どちらかに不具合が起きた場合に両方とも起動しなくなる恐れがあるため推奨しません。
デスクトップ環境の選択
EndeavourOS では複数のデスクトップ環境が用意されており、この中から好きなものを選択できます。
それぞれ特徴があるので自分が使いやすそうものを選択してください。
個人的には、軽量かつ Windows や Mac からの移行コストの低い Xfce4
推しです。
簡単に各デスクトップ環境の説明があるので参考にしてください。
複数選択して後で切り替えることも可能です。
ユーザーネームとパスワードの設定
好きなユーザーネームとパスワードを設定します。
こちらは起動時に使用します。
最終確認
設定した項目の概要が表示されます。
意図した設定になっているか最終確認します。
インストール実行
完了
完了したら再起動します。
再起動すると起動ドライブ(EndeavourOS
がインストールされているドライブ)から、OS を検出してくれます。
EndeavourOS
Windows
を選択できるようになっているか確認します。
おまけ:Windows と linux の時刻ズレを修正する
無事インストール出来ましたが、Linux 側は日本標準時(JST)になっているのに、Windows 側が協定世界時(UTC)(JST -9 時間) となっていました。
不便なので以下のコマンドを Linux 側で実行し、修正します。
sudo timedatectl set-local-rtc true
実行後、Windows を起動すると修正されています。
参考
おわりに
この記事は EndeavourOS
、Lily58 Pro
で執筆しました。
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