生成AIの利活用についてまとめてみた
はじめに
生成AI(生成的人工知能)は、文字などの入力に対してテキスト、画像、動画などのメディアを応答として生成する人工知能システムのことを指します。近年ではChatGPTやMicrosoft Copilot、Geminiなどが代表的なサービスとして挙げられます。本記事では生成AIの利活用について簡単にまとめてみました。
業界別の生成AI利活用
生成AIは、業界ごとにさまざまな利用方法があるため、各業界でどのような生成AIの利用がされているのか、以下の表に主な例をまとめてみました。
# | 業界 | 主な生成AI利活用 |
---|---|---|
1 | 製造 | コンピュータ設計支援(CAD)、性能シミュレーション・モデリング |
2 | 金融 | 顧客チャットボット、商品販売状況分析 |
3 | 流通小売 | 市場分析、商品検索・提案 |
4 | 広告 | キャッチコピー生成、広告デザイン生成 |
5 | エンターテインメント | 楽曲生成、動画生成 |
6 | 行政 | アンケート生成、住民向け挨拶文などの生成 |
生成AI利用におけるリスク
ハルシネーション
ハルシネーションとは、AIが学習データにはない誤った情報を生成してしまうことをいい、これは金融などの顧客チャットボットなどで発生すると信用問題に発展します。
もっともらしい内容で誤った情報が生成されるため、ユーザーがそれを鵜吞みにして誤った判断をし、その後の何かしらのトラブルにつながる可能性があります。生成AIによるサービスをリリースするまでにPoCなどでチューニングが必要となります。
著作権
文化庁が公開する「AIと著作権」の資料には、"AIが自律的に生成したものは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではなく著作物に該当しない"と示している一方、"人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者となる"と示されています。要は、創作意図があって生成したものかどうかがポイントになります。
著作権侵害のリスクを回避するには、生成AIの出力結果を直接利用するのではなく、作業効率化の手段としての間接的な利用が推奨されます。
AI規制法
生成AIを利用する際にAIへ送信する指示文、命令のことをプロンプトといいます。このプロンプトに個人情報や企業の機密情報を入力することによる、想定外の情報流出を防止するため、2024年5月21日に「欧州(EU)AI規制法」が成立しました。
これは、AIをリスクレベルで分類し、そのレベルに応じた規制が適用されます。EU域内に所在していない日本企業であっても、EU所在の人をターゲットにAIシステムサービスを提供すれば日本にも適用されます。そのため、AIシステム導入時には十分注意する必要があります。
さまざまな参考情報
東京都が公開する「文章生成AI利活用ガイドライン」
東京都デジタルサービス局が公開する「文章生成AI利活用ガイドライン」には、生成AIの利用環境や利用上のルール、効果的な活用方法などが分かりやすく説明されています。これは、生成AI導入時の参考資料になるかと思います。
横須賀市が運営する「自治体AI活用マガジン」
日本国内でいち早く生成AIへの取り組みを始めた横須賀市が運営するポータルサイト、「自治体AI活用マガジン」では、東京都を含む複数の自治体が参加して、生成AIの活用法を共有しています。生成AIの活用方法についてアイデアを出す際に参考になるサイトかと思います。
米サンノゼ市が公開する「生成AIガイドライン」
米サンノゼ市では市職員向けに、ChatGPTなどの生成AIを、サイバーセキュリティなどのリスクを最小化し、ガバナンスを効かせた環境で生成AIによる業務効率化を進めるための「生成AIガイドライン」を策定しました。
このガイドラインには、「機密情報や個人情報を入力しない」、「生成AIによって出力された情報は、複数の情報源によって事実確認し、不正確な情報であれば修正する」、「画像生成AIを活用して生成したものを最終成果物として使用する際には、生成方法を専用の記録フォームにログとして残すこと」など、具体的な使用方法について記載されているため、社内での生成AI利用を検討する際に参考になるかと思います。
まとめ
生成AIは急激な進化を遂げて、文章だけではなく画像や動画、音声までも生成することができるため、クリエイティブな作業を行うクリエーターたちの仕事が生成AIに奪われるのではないかと思われますが、生成AIは人が行うプロフェッショナルな仕事を代替するのではなく、そういった人たちの仕事を支援するためのツールです。
生成AI利用のリスクを理解した上でどれだけAIを利活用できるか、どれだけAIと共存したビジネスに変革できるか、それが今後のビジネスに求められるスキルになるものと思われます。
おわりに
生成AIは思いもつかないことを実現してくれるため、逆にどう使えばいいのか想像できないのが生成AIの利活用を妨げる要因なのかと考えます。例えば、3Dアセットを生成するAIでは、車のボディカラーや質感、ライトの動作などを文章(プロンプト)で設定できます。従来ではパラメーターを選択、設定するのが当たり前でした。
今後生成AIで何ができるのか、ユーザーが実際に目の当たりにして経験することで、生成AIを中心としたビジネスへとシフトしていき、あらたなビジネスモデルが生まれていくのだと理解しました。
Discussion