☁️

AzureとAWSのCAFを比較してみた

2024/04/14に公開

はじめに

「CAFってなに?」の記事で、CAF(Cloud Adoption Framework)とは、クラウドの導入で失敗しない、成功するためのフレームワークと説明しましたが、AzureのCAFとAWSのCAFがどのような内容なのか簡単に比較してみました。

概念の比較

AzureのCAF

Azureでは、7つのステージで構成されたフレームワークで表現されていて、「戦略」⇒「計画」⇒「準備」⇒「導入」の順にクラウド導入を実行するのと、それと並走する形で「セキュリティ」、「管理」、「ガバナンス」を実装することでクラウドトランスフォーメーションを実現する内容となっています。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/cloud-adoption-framework/overview

AWSのCAF

AWSでは、6つのパースペクティブ(ビジネス、ピープル、ガバナンス、プラットフォーム、セキュリティ、オペレーション)と4つのトランスフォーメーションドメイン(テクノロジー、プロセス、組織、製品)で表現されていて、これを「構想」⇒「調整」⇒「リリース」⇒「スケール」の4つを反復することでクラウドトランスフォーメーションを実現する内容となっています。

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/aws-cloud-adoption-framework-caf-3-0-is-now-available/

比較評価

いずれもビジネスのことに触れ、クラウドトランスフォーメーションを推進するための組織、合理化、継続的に運用管理するためのガバナンスに触れた内容となっており、本質的な部分においては変わりません。

クラウド移行計画の比較

Azureの場合

Azureでは、既存システムをクラウドへ移行、あるいはモダナイズする方法を"5R"と表現して合理化する内容となっています。

# 5R 概要
1 Rehost “リフト アンド シフト” 移行とも呼ばれ、アーキテクチャ全体への変更を最小限に抑えて、IaaS に移行します。
2 Refactor アプリケーションが新しいビジネス機会を実現できるようにコードをリファクタリングして PaaS あるいは IaaS に移行します。
3 Rearchitect​ クラウドと互換性がない、あるいはビジネス成果を達成させるためクラウドネイティブなマイクロサービスアーキテクチャになるよう再設計し、PaaS に移行します。
4 Rebuild クラウド化するには問題が多いため、費用対効果を考慮して現行のデジタル資産を廃止し、ビジネス成果を達成させるためクラウドネイティブなマイクロサービスアーキテクチャになるよう PaaS でアプリケーションを再構築します。
5 Replace ホストされるアプリケーションに必要なすべての機能が、SaaS アプリケーションから得られる場合、SaaS に置き換えます。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/cloud-adoption-framework/digital-estate/5-rs-of-rationalization

AWSの場合

AWSでは、既存システムをクラウドへ移行、あるいはモダナイズする方法を"7Rs"と表現して移行戦略を計画する内容となっています。

# 7Rs 概要
1 Refactor/re-architect​ クラウドネイティブ機能を最大限に活用してアプリケーションを移動し、そのアーキテクチャを変更して、俊敏性、パフォーマンス、およびスケーラビリティを向上させます。
2 Replatform​ アプリケーションをクラウドに移動し、クラウドの機能を活用するためにある程度の最適化を導入します。
3 Repurchase​ 別の製品に切り替えます。通常は、従来のライセンスから SaaS モデルに移行します。​
4 Rehost クラウドの機能を活用するために、変更を加えずにアプリケーションをクラウドに移動します。
5 Relocate 新しいハードウェアを購入したり、アプリケーションを書き換えたり、既存の運用を変更したりすることなく、インフラストラクチャをクラウドに移行します。
6 Retain アプリケーションをソース環境に保持します。
7 Retire ソース環境で不要になったアプリケーションを廃止または削除します。

https://docs.aws.amazon.com/whitepapers/latest/aws-caf-business-perspective/portfolio-management.html

比較評価

いずれもIaaSに移行するのか、PaaS化するのか、SaaSへ移植するのか、といったクラウド化の方法に触れていますが、特徴的なのはAWSではネガティブな方法にも触れています。これは、あまりにもレガシーなシステムでは、アプリケーションの互換性などさまざまな問題を抱え、クラウド化することは困難、できないと判断するための選択肢を用意しています。

まとめ

Azure CAFもAWS CAFも、重要となるポイントの考え方は変わりませんが、各々の成功体験や失敗体験からいくつかパターンが違っており、独自の色を持っています。
まだまだどちらも内容は深く、もっと比較するところはありますが、まずは概要比較をしました。

クラウド導入の進め方やクラウド化パターンなど、AzureとAWSのCAF両方から好いとこ取りで参考にすると、柔軟でより最適なクラウドトランスフォーメーションを実現できるのではないかと思います。

おわりに

参考にしたAzureのPDFファイルは 3,785 ページ、AWSのPDFファイルは 45ページとなっており、Azureはかなりのボリュームがあるため、Microsoft社の成功体験、失敗体験がふんだんに盛り込まれた内容だと思いました。

Discussion