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散文コード詩「記憶=セグフォ」

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散文コード詩「記憶=セグフォ」

記憶を呼び出そうとするたび、
どこかで嫌な文字が走る。

Segmentation fault (core dumped)

そこには触れてはいけない領域があった。
過去の痛み、
忘れたはずの後悔、
そして二度と会えない人の顔。

アクセスしようとするだけで、
プログラムは落ちる。
心はフリーズし、
再起動まで長い沈黙が続く。

医者は言う。
「老化でしょう。単なるメモリの劣化です」
でも僕は知っている。
これはバグなんかじゃなく、
生きることそのものの仕様だ。

愛した記憶も、
失った記憶も、
全部同じアドレスに混在している。
触れるたびに世界は壊れ、
コアダンプとして吐き出される。

それでも僕はキーを叩く。
危険だとわかっていても、
あの日の笑顔にアクセスしたいから。

画面に浮かんだ最後の行は、
淡く揺れていた。

// memory violation, but worth it

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