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散文コード詩「別れはキルで」

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散文コード詩「別れはキルで」

君と僕の関係は、長く走り続けたプロセスだった。
最初は軽快で、
互いにリソースを分け合い、
並列に動作していた。

だがいつしか競合が増え、
デッドロック寸前の沈黙が日常になった。
CPUは疲弊し、メモリは消耗し、
それでも止められずに動き続けていた。

そしてある夜、
君は静かにコマンドを叩いた。

kill -9 us

一瞬で、全てのスレッドが切断された。
未保存のログも、
書きかけの未来も、
まとめて強制終了された。

画面は暗転し、
ただプロンプトだけが虚しく点滅していた。

「なぜ graceful shutdown を選ばなかった?」
そう問いかけても、答えは返らない。
SIGKILL は決して捕捉できないのだ。

残された僕は、
立ち上がらないプロセスの残骸を見つめる。
top コマンドの結果には空白が広がり、
世界は少し軽くなったように見えた。

けれど胸の奥には、
ゾンビプロセスのように残り続ける記憶がある。

最後に僕はログに書き足す。

// process terminated: goodbye forever

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