生成AIがあったから、一人でもDX推進できた話
「一人で何でもやってください」
そう言われたのが、2024年1月。従業員12人のアルミダイカスト製造業に転職した時です。
IT環境はほぼゼロ。私一人でDX推進を担当することになりました。
普通なら「無理だろ...」って思うところですよね。
でも私は、「いけるやろ」 って思ってました。
なぜなら、生成AIがあったから。
生成AIとの出会いは、入社する前だった
2023年の終わり頃、エンジニア仲間から「Claude使ってみたら?」って紹介されたんです。
当時の私は、SES企業でシステム開発をやってました。Vue.js、Python、AWSとか触ってて、コードは書ける。でも、効率が悪いなって感じてた。
「もっと速く開発できないかな」
そう思ってた時に、Claudeと出会いました。
最初は半信半疑でしたよ。「AIでコード生成?本当に使えるの?」って。
でも、試しに使ってみたら...
文章生成が、めちゃくちゃ速い。
提案書とか、設計書とか、メールとか。自分で書いたら1時間かかるようなものが、15分で形になる。
コード生成も、かなり使える。
「こういう関数作って」って頼んだら、数秒で返してくれる。しかも、だいたい動く。
「これは使える」って、その時に確信しました。
その後すぐ、Cursorっていうエディタも使い始めて。
Cursorは、VSCodeベースなんですけど、AIが統合されてて、コードを書きながらリアルタイムで補完してくれる。
「これがあれば、一人でも大規模開発できるな」
って思いましたね。
で、そのスキルを持った状態で、2024年1月に製造業に転職したんです。
「一人でDX推進」を任されたけど、怖くなかった
入社初日、社長から言われました。
「IT環境、ほぼゼロです。でも、DX推進やってください。予算はあまりないけど、必要なものは相談してください」
普通なら、プレッシャーですよね。
でも私は、「生成AIがあるから、なんとかなる」 って思ってました。
実際、やることは山ほどありました:
- 産業機器へのIoT導入
- データ収集アプリの開発(Python)
- ダッシュボードの開発(Next.js)
- 業務効率化ツールの開発(Google Spreadsheet・GAS)
- NASサーバー構築
- WiFi環境整備
- ネットワーク管理
- ドメイン管理
これ全部、一人でやるんです。
しかも、現場作業もやりながら。
GASのコードも、書いたことなかった
例えば、Google Apps Scriptで業務効率化ツールを作る時。
私、GASのコード、実は書いたことなかったんですよ。
でも、Claudeに聞けばいい。
「Google Spreadsheetの特定のシートからデータを取得して、別のシートに転記するGASのコードを書いてください」
そしたら、Claudeが数秒で返してくれる。
function transferData() {
  const ss = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet();
  const sourceSheet = ss.getSheetByName('元データ');
  const targetSheet = ss.getSheetByName('転記先');
  
  const data = sourceSheet.getDataRange().getValues();
  targetSheet.getRange(1, 1, data.length, data[0].length).setValues(data);
}
コピペして実行したら、動いた。
「GAS、書いたことないけど、なんとかなるな」
って思いましたね。
もちろん、最初から完璧に動くわけじゃないです。エラーが出ることもある。
でも、そのエラーメッセージをClaudeに見せれば、「ここが問題です」って教えてくれる。
修正案も出してくれる。
こうやって、「できないこと」が「できること」に変わっていく。
現場作業中の隙間時間が、開発時間になった
製造現場にいると、機械のサイクルタイムっていう隙間時間があるんですよ。
ダイカストマシンが製品を作ってる間、2〜3分くらい待つ時間。
この時間、普通は何もできないんです。
でも、Cursorを使い始めてから、この隙間時間が開発時間になりました。
- サイクルタイムの隙間にPCを開く
- Cursorに「この関数を実装して」って指示を入力
- 機械が止まる
- 製品を取り出して、次の作業
- また隙間時間
- PCを開くと、コードができてる
- 動作確認
これ、実質無限に開発時間が取れるってことなんですよ。
現場作業中でも、開発が進む。
もちろん、集中して開発する時間も必要ですけど、この「隙間時間開発」ができるようになったのは、本当に大きかった。
Cursor vs Claude:使い分けのコツ
2年間使ってきて、だんだん使い分けが分かってきました。
Cursorを使う場面
- コーディング(Python、TypeScript、GAS)
- バグ修正(エラーが出た時、すぐに相談)
- リファクタリング(コードをきれいにしたい時)
- 設計書の修正(Markdownで書いた設計書の調整)
Cursorが得意なのは、複数のプロジェクトファイルのコンテキストを保持してコーディングを実施すること。
例えば、Next.jsでダッシュボードを作ってる時、pages/とcomponents/とlib/の3つのディレクトリにまたがってコードを書く必要がある。
Cursorは、この3つのディレクトリのファイル全部を理解した上で、整合性のあるコードを生成してくれる。
Claudeを使う場面
- アイデア出し(「こういう課題があるんだけど、どう解決する?」)
- 企画(DX推進の方針を考える時)
- 設計(システムの全体像を整理する時)
- 提案書作成(経営層に見せる資料)
- メール文章作成(ベンダーへの要件定義メール)
- 課題解決(抽象的な問題を構造化する)
- 技術情報調査(「Next.jsの最新のベストプラクティスは?」)
- 長文を作成する時(特にドキュメント関連)
Claudeが得意なのは、Cursorよりも文章が人に寄り添っていること。
例えば、経営層に見せる「DX推進に向けた現状課題分析と投資方針」っていう資料を作った時。
私がバラバラに書いたメモをClaudeに見せて、「これを経営層向けの資料にまとめて」って頼んだら、すごくきれいに構造化してくれた。
しかも、言葉選びが適切で、「経営者が読みたくなる文章」になってる。
両方使う場面
Cursorで生成したコードをClaudeに見せて相談する、みたいなこともよくやります。
例えば:
- Cursorで関数を実装
- 動くけど、なんか冗長な気がする
- Claudeに「このコードをレビューして」って相談
- Claudeが改善案を提示
- Cursorで修正
この流れで、コードの品質が上がる。
生成AIなしでは仕事できない、って本気で思ってる
今、プロプランからMaxプランに変更するくらい、毎日使ってます。
なぜそこまで使うのか?
「一つ一つのドキュメントやコードを作成している暇がない」
これに尽きます。
製造現場で働きながら、IoT導入して、ダッシュボード開発して、業務効率化ツール作って、ネットワーク管理して...
全部を自分一人でやるなんて、生成AIなしでは無理です。
しかも、品質も落とせない。現場の人が使うシステムだから、ちゃんと動かないといけない。
生成AIがあるから、なんとか回ってる。
逆に言えば、生成AIがなかったら、今の仕事の半分もできてなかったと思います。
ドキュメント作成での使い方:実例
Claudeでドキュメント作成する時の具体例を一つ。
「DX推進のための議事録作成」っていうチャットがあって、そこでClaudeに相談しながら資料を作ったんです。
私がやったことは:
- 
マインドマップ風に、課題をバラバラに書き出す - 「売上高の減少」
- 「人員の減少」
- 「生産量の減少」
- 「品質の低下」
- 「材料費の高騰」
- ...(こんな感じで20個くらい)
 
- 
Claudeに「これを経営層向けの課題分析資料にまとめて」って依頼 
- 
Claudeが構造化して、因果関係を整理してくれる 
- 
私が細かい数字を追加 
- 
完成 
この作業、自分一人でやったら3時間かかる。Claudeと一緒なら30分。
しかも、Claudeが作った資料の方が、論理構造がしっかりしてて、経営層に伝わりやすい。
企画・アイデア出しでの使い方:実例
「こういう課題があるんだけど、どう解決する?」みたいな抽象的な相談も、めちゃくちゃ役に立ってます。
例えば、「現場の人がシステムを使ってくれない」っていう課題があった時。
Claudeに相談したら:
- 「まず小さく始める」
- 「Excelベースで慣れさせる」
- 「段階的に移行する」
- 「現場の意見を聞きながら改善する」
こういう提案をしてくれた。
で、実際にその通りにやったら、うまくいった。
「一人で考えてると煮詰まる」っていう時、Claudeに相談すると、視野が広がる。
これ、すごく大事です。
READMEもコメントも設計書も、ぜんぶClaudeに任せてる
コード書くのは好きなんですけど、ドキュメント書くのって、正直面倒じゃないですか。
でも、ドキュメントがないと、後で自分が困る。
だから、Claudeに任せてます。
- README:プロジェクトの概要、使い方、インストール方法
- コメント:コードの複雑な部分の説明
- 設計書:システムの全体像、データフロー、API仕様
全部、Claudeに「このコードのREADMEを書いて」って頼めば、数分でできる。
しかも、ちゃんと読みやすい文章になってる。
正直、最初は「AIに頼りすぎじゃない?」って思ってた
でも、使ってるうちに考えが変わりました。
「AIは道具。使わない理由がない」
ハンマーを使わずに、素手で釘を打つ人はいないじゃないですか。
生成AIも同じ。使える道具があるなら、使った方がいい。
もちろん、生成AIが出したコードをそのまま使うわけじゃない。
- エラーがないか確認する
- セキュリティ的に問題ないか確認する
- 性能的に問題ないか確認する
最終的な判断は、人間がやる。
でも、「最初の80%」を生成AIがやってくれるなら、残り20%は自分で調整すればいい。
それだけで、開発スピードが10倍になる。
これから製造業DXに取り組む人へ
もしあなたが、「一人でDX推進を任されて、どうしたらいいか分からない」って状況なら。
生成AI、使ってみてください。
Claudeでもいいし、ChatGPTでもいいし、Cursorでもいい。
ただ、一つだけ言いたいのは:
「完璧を目指さない」
生成AIが出した答えが、最初から完璧なわけじゃない。でも、それでいい。
80%できたら、あとは自分で調整すればいい。
それだけで、「できないこと」が「できること」に変わります。
最後に:生成AIは「できないこと」をできるようにする道具
私は、生成AIのおかげで、2年間でこれだけのことができました:
- 産業機器4台へのIoT導入
- リアルタイムデータ収集基盤の構築
- 稼働状況可視化ダッシュボードの開発(Next.js)
- 業務効率化ツール開発(Google Spreadsheet・GAS)
- NASサーバー構築
- WiFi環境整備
一人で。
もし生成AIがなかったら、この半分もできなかったと思います。
いや、正直言うと、多分GASのツール作成の段階で挫折してたと思う。
「できないこと」が「できること」に変わる。
それが、生成AIの本当の価値だと、私は思ってます。
【追記】
この記事を読んで、「自分も試してみようかな」って思ったら、まずClaudeかCursorの無料プランから始めてみてください。
いきなり有料プランにする必要はないです。まず触ってみて、「これは使える」って思ったら、そこから課金すればいい。
私も最初は無料プランから始めました。
今は、Maxプラン使うくらいヘビーユーザーですけど。
それくらい、生成AIは私の仕事に欠かせないものになってます。
執筆者プロフィール
27歳、製造業でDX推進を担当。IT環境ほぼゼロの状態から、2年かけて社内システム基盤を構築。生成AI(Cursor・Claude)を活用した高速開発で、一人でも大規模プロジェクトを実現。
GitHub: https://github.com/yamato-snow
技術ブログ: https://zenn.dev/yamato_snow



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