企業におけるDiscordコミュニティのすすめ
はじめに
Discordと聞いて、どんなものを思い浮かべますか。
- そもそも知らない
- 名前は知っているけど利用していない
- プライベートでは利用している
- 業務でもプライベートでも利用している
おおまかにこのように分かれるかと思います。
業務ですでに使われている方にとってこの記事は釈迦に説法かもしれませんが、この記事ではDiscordの企業利用について弊社での取り組みを交えて簡単にご紹介します。
そもそもDiscordについて
Discordは、大雑把にいうと、テキストチャットとボイスチャットが統合されたツール/サービスです。機能面だけ見ると、Microsoft Teamsに近いものがあるかもしれせんが、実際は両方同時に利用しても目的/達成したいことが重複しないサービスと言えます。このあたりについては後述します。
どんな場面でDiscordは使われているのか
Discordについて検索すると、「ゲーム向け」「ゲーマー」といったキーワードで語られることが多く、実際そういった用途で利用されることが多いです。
しかし実際には大きく5つのカテゴリに分かれており、ゲーム用途だけでなく広い用途で利用されていることがわかります。
- Gaming
- Music
- Education
- Science&Tech
- Entertainment
↑は公開サーバーを検索する画面の実際のスクリーンショット
5つのカテゴリと聞いて、Gamingはなんとなくわかるけどほかの用途は...となった方も多いかもしれません。
利用用途が多岐にわたりすぎているため、もちろん私も全て把握できていませんが、いくつか例を上げます。
Education
Educationでは、単語の意味通り様々な学習のためのサーバーが多く存在しています。↓のスクリーンショットを見るとわかりますが、英語学習のためのサーバーや、一緒にカメラを付けながら勉強できるサーバーなどがあります。
もちろん英語だけではなく、日本語や韓国語の対象にした学習サーバーも存在しています。
Science&Tech
Educationとの違いが少し分かりにくいですが、今回のメイントピックに一番近いのここのカテゴリになります。
PythonやNVIDIAなどの特定の技術についてのコミュニティが見受けられます。
そのほかのカテゴリについてはここでは触れませんが、どれも公開されているサーバーなので気になる方はのぞいてみてください。
招待制サーバーの実例
公開サーバーではありませんが、いくつか実例を紹介します。
クラウドファンディングで新しい製品や技術などを提供している企業などが招待制サーバーを作ったり、自社サービスや提供しているSDKのFAQに対応したりユーザ同士の交流、アイデアや要望などを議論できる場所を展開していることも最近多く見かけるようになりました。
-
Looking Glass Factory
https://lookingglassfactory.com/
裸眼立体視可能なホログラフィックディスプレイを開発/販売している企業です。アメリカの企業ですが、日本ユーザが多くサーバー内に日本語のチャンネルが用意されています。 -
Cluster株式会社
https://corp.cluster.mu/
バーチャルSNS「cluster」の開発・運営を行っている企業です。ワールドを作成するためのunity用SDK「Cluster Creator Kit」を利用するユーザ向けのコミュニティとしてサーバーが用意されています。
そのほかにも、DMM VR Connectを提供しているDMM VRlabやAIによる自動キャラクター生成サービスを展開しているwaifulabsなど、例をあげていけばキリがないほどに様々な企業がユーザ向けにサーバーを用意しています。
どんな目的でDiscordを企業が利用するのか
おおきく分けて企業がDiscordを利用する目的は二つあると思います。
- 社内コミュニケーションツール
- 企業を主軸にしたコミュニティ活動
ここでは、2の「企業を主軸にしたコミュニティ活動」について触れます。
※社内コミュニケーションツールや機能面については、下記に引用する記事が分かりやすくまとめられているのでそちらを参照してみてください。
具体的には?
「コミュニティ活動」が具体的には何を指すのかは企業によって変わると思いますが、ここでは下記と設定します。
- 採用や広報を目的とした企業文化を発信するため場所
- 会社主催の勉強会や懇親会などを実施するための場所
なぜDiscordなのか
チャットツールとしての側面
従来、こういったコミュニティを構築するときはFacebookやslackが選択肢としてあがると思います。それに対して、それぞれにメリット/デメリットがある前提でDiscordが分かりやすく優れている点は
- 音声(画面共有機能付き)とテキストどちらもシームレスに利用できる
- コミュニティにリアルの情報やメールアドレスなどが紐づかない
これにつきると個人的に思います。
業務のチャットツールがslackでない場合は、そのコミュニティのためだけにslackを利用するのはハードルが高くなりますし、Facebookの実名主義が受け入れられないケースも多いです。
また、今の若い層やクリエイター層の中ではかなりの利用率になり、特にクリエイター層では、現実での繋がりはないインターネット上の人とつながるためのツールとして選ばれる傾向にあると感じます。(このあたり数字やデータがあると良かったのですが、見つからなかった...のであくまでも主観です。)
普段から利用しているツールの方が、そのためだけにそれを利用するわけで無く、日常の延長線上で気軽に参加できることが望めます。
(個人的にはすでにアカウントがあれば、サーバーの招待リンクを踏むだけで良い点が非常に楽で良い。メールアドレスを入力したりなにかサーバーごとに毎回パスワード設定などそういったものは存在しない。)
ボイスチャットツールとしての側面
コロナ渦において、コミュニティイベントや企業説明会などは必然的にオンラインに移行されていることが多いかと思います。
しかし、それらのオンラインイベントは、下記のような遍歴をたどっているように感じます。
- zoomなどに部屋を立てて参加してもらう方式
↓ - 懇親会などイベント終了後に同時参加人数が多くコミュニケーションが取れない、トラブルが発生しがち
↓ - トラブルを避けるためやコミュニケーションがうまく取れないため、登壇者のみがzoomに集まり、その様子をyoutubeで配信する方式
↓ - 片方向のコミュニケーションになり、一般参加者が完全聞き専になりイベントに対するモチベーション低下、イベントから得られるものが変化。(オンライン飲み会が廃れてた理由と一緒)
おおよそオフラインでイベントが開催できなくなり1年半ほどたちましたが、どこのコミュニティを見ても同じようなところに着地しているように感じます。実際に私自身もイベントを主催していて、どうしてもコミュニケーションが一方通行になってしまうことが多く、非常に悩まされています。
こういった問題に対してDiscordは一つの答えになるのではいないでしょうか。
ポイントだけ述べると
- チャットツールが同じサービス内で完結すること
- ボイスチャット部屋を並列に簡単に増やせること
- 同時に複数人画面共有が可能なこと
複数のボイスチャット部屋を一つの会議でできるサービスやzoomにもこれに近い機能なども多くあります。しかし、それらは結局は”イベントのときだけ使う”ツールであり、日常使いできるツールのDiscordに勝てない。
さらに、部屋移動が容易な点や、同時入室人数を制限したり、様々な応用が基本的機能で行うことができるのは強みと言えます。
実際に利用するとどうなのか
先日開催されたxR転職合同相談会というイベントに弊社も登壇企業として参加しました。
イベント自体はclusterというサービスを利用し、登壇者はワールドの中にアバター姿で入りステージで登壇。一般参加者は、同じワールドに入るかyoutubeでの配信をそれを見るかといった形で参加できました。
イベントURLや配信リンク
さて、本題は、イベント終了後の懇親会です。
合同相談会では、弊社以外にも数社参加していましたが、懇親会は弊社のdiscordサーバーで単独で実施しました。
懇親会にどう使ったのか
ざっくりいうと、実際に働いている社員に質問や会話ができる雑談場所とより踏み込んだ内容を話せる個別面談を全て一つのDiscordで完結させました。
懇親会概要
- サーバー招待リンクをイベントやSNSで公開し、誰でも参加できる状態(申し込み不要)
- 途中参加/離席可能
- 転職目的だけでなく社員とコミュニケーションしたい人も参加可
- 基本的に雑談場所で好きに分かれて好きなテーマを話してok
懇親会進行
- 会の全体説明(ルールやそれぞれのチャンネルの説明)
- 雑談/個別面談開始~
- クロージング
チャンネル割り
懇親会ではDiscordを↓のような形にチャンネルを分割しました。
- テキストチャットチャンネル全体連絡:懇親会全体連絡を行う場所
- テキストチャットチャンネル交流用チャット:懇親会中に自由に使える交流用チャット場所
- ボイスチャットチャンネル宴会場_雑談場所➀~➄:自由に分かれて自由なテーマで話せる場所
- ボイスチャットチャンネル面談室:個人面談を実施する場所
開催してみた感想
所見として、Discordを利用して良かったと感じています。
イベント満足度アンケートなどは取っていませんが、参加者からはかなり楽しかったという声をたくさん聞くことができ、企画した身としては非常にうれしい結果となりました。
参加者からあがった具体的に良かったポイントは
- (参加者)最近のイベントは一方通行的なことが多いが、一般参加者も自由に発言できて自分が知りたいことを聞くことができた
- (参加者)実際に働いている社員と会話できることで、会社の雰囲気や実際のスキルレベルなどそういったものが知れてよかった。どうしてもコーポレートサイトや転職イベントの特定の人からの説明では分からないことが多い
- (参加者)人事担当や露出しがちなCEOからではなく、実際に働いている人と会話できることでモチベーションが上がった
などがありました。
開催側からも
- オフラインでイベントをやっていた時は”出会い”が多く、良い刺激があり雑にいろいろと話せていたものがオンラインになり失われてしまっていたが、今回はそれが得られたように感じた
- 雑多にわかれた複数の部屋を自由に行き来し、気になった会話があれば参加できる状態を作れたことで、オフラインイベント特有の廊下話ができてよかった
- オフラインだと会話から離脱しづらかったりするが、自由に別の会話に移動できるので自分が興味ある会話だけに懇親会の時間を使えて良い
- 部屋の切り替えが簡単なので、回遊性があがって良い
などがあがりました。
オフラインイベントの代替もしくはそれ以上に良い開催方式として、今後も開催していこうという声が上がっています。
個人的な振り返り
私自身は会の運営として懇親会を飛び回っていましたが、感じたことをポイントとしてまとめておきます。
※あくまでも個人的な感想です。
- 部屋ごとにまったく話している内容が異なった。これは一見当たり前に見えるがたとえば新卒採用のような場面だと画一的な質問(テンプレ)が多くなってしまう。あくまでも懇親会は一般参加者と企業参加者は対等な立場なので、自由な会話ができて非常に良かった。
- 転職のモチベーションはそこまで高いわけではないけど、どんな雰囲気なのか知りたい。久しぶりに知り合いの社員と話したい。そういった理由で参加してもOKとしていた。これは非常に正解だった。身内の雰囲気になってしまうのは避けなければいけないが、技術的な話で盛り上がったりすることで、社員がどれだけ流行を追っているのか、技術に対しての学習モチベーションなどそういったものが一般参加者にも伝わったのは良かった。
- 実際はどんな人がどんな仕事をしているかなど、外から見ているとあまり分からないものを自分が満足のいくまで会話できることで、一般参加者の企業に対する解像度があがって良かった。
- Discord以外で同じことをしようとするとかなり難しいと感じる。必ずしもすべての場合でDiscordが正解というわけではないが、弊社との相性は非常に良いと感じる。
今後改善したいこと
- 一部今回も行っていましたが、部屋の名前をリアルタイムに話している内容に変更する
- いくら部屋を自由移動してもOKとはいっても、一般参加者目線から一度入った部屋をすぐに離れるのは心理的ハードルが高いので、部屋ごとになにを話しているのかがわかるとより聞きたい話を聞くことができる
- Discordのロール機能を利用して、個別面談の仕組みをより改善する
- 人数制限をかけて、面談中に誤って入室することが無いようにしていたがもっとプライバシーに配慮したい
- 転職が今回のテーマだったので、もう少し詳細な会社紹介の時間をとって良かったかもしれない。イベントの目的に合わせていきなり雑談ではなく全体説明周りを改善したい。
おわり
まだまだ取り組み始めたばかりで手探りなところも多いですが、今後もDiscordを活用しイベントを開催していきたいと考えています。
また、Discordの企業利用についてはインターネット上にあまり情報がなく、もし利用しているよ。などがあればぜひをどんどん発信してください!情報お待ちしております!!
※追記(2021/06/11,18:57)
弊社Discordサーバーは原則イベント期間の前後のみ招待リンクを有効化しています。ご了承ください。
※追記(2021//6/14,0:48)
社内コミュニケーションツールとしての例として、ケータイwatchの記事のURLを追記しました。
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