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ObsidianにCursor?それ本当に必要ですか?

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ObsidianにCursorを使おうというトレンドから漂う腐臭にどうしても我慢ならなくなった。ここに一つ主張を置く。
インフルエンサーが言った、というだけで1アウトなところではあるが、そこにcursorを使うのにZettelkastenを絡めるというので2アウト、手を加えた結果不完全な連携になってそれを良しとすることで3アウトだ。

Obsidian に Cursor を使うとは?

Obsidian の Vault を Cursor で開き、メモを書くことだ。

Obsidianとは、エディタだ。

Markdownに特化したエディタだ。そしてナレッジベースアプリでもある。
Markdownファイルを編集できるし、プレビューもできる。その真の実力はリンクによって構成されたネットワークによるナレッジベース化によって発揮される。

このナレッジベースをして、Obsidianは「第2の脳を作る」と謳っている。

Cursorとは、エディタだ。

VSCodeのforkだ。そしてVScodeとはもちろん、エディタだ。
ではどう違うかといえば、AI(LLM)との連携に主眼を置き、入力の補助やエージェント機能によるコンテンツの生成を統合している。

預かり知らぬ変更が起きる。

Markdownをただ編集するだけならば、別に好きにすればよい。
だが、Cursorを使うのであれば、当然エージェントを活用していくだろう。

プロンプトに従って無数のファイルに手を出し、改変を進めていくエージェントに、ワークスペースのファイルを破壊される瞬間が訪れるだろう。
機械による編集の強みは、その圧倒的な手数だ。その手数が自分の意図を離れたとき、Vaultは崩壊する。
自分の手によって編集しているのならば、そんな事故は幾度も起こることはない。

ありのままの Vault は、第三者と使うにはあまりに脆い。
その対策のひとつにバージョン管理システムを導入することが考えられ、その選択肢に上がるのは「Git」だろう。

さて、Gitを使う…?

Gitで同期?どうして手足を縛ってるの?

Vaultの同期にGitを使う方式がある。
これはVault内のファイルをGitで管理し、同期するものだ。

Gitは自由なソフトウェアだし、リポジトリのホスティングをGitHubで行えば無料で同期できる。
Cursorの編集による破壊行為を防ぐためのバージョン管理以上に、安上がりで共有することを主目的にGitを採用しているのが実情だろう。

しかし、だ。当然、Gitを扱う上でのトラブルを抱えることになる。

Git運用で抱える問題

たとえば、テキストファイルではないものの扱いが難しくなる。
それでもバージョン管理システムだ。ファイルを共有するくらい、わけはない。

ある状況を除いて。そう、モバイルだ。

重要なことだが、スマートフォンにGitはインストールされていない。
つまり、Gitの機能によって実現される状態を、代替処理で実装するか、あるいはGitを再実装する必要があるということだ。
そんな複雑なソフトウェアがまるまる単品でObsidianにプラグインとして組み込まれなくてはならない。

バイナリファイルの扱いも困るだろう。バイナリファイルとは大きい。ちょっとした写真などでもテキストの何千倍の容量にもなる。
LFSという仕組みはあるが、繰り返すがスマートフォンにGitはインストールされていない。
ただダウンロードするならまだしも、Gitリポジトリから取り出したりLFSから取り出すということは、相応に複雑な振る舞いをさせることになる。

そして、競合(コンフリクト)の問題がある。
複数のデバイスで同じファイルを編集でもすれば、容易に競合は発生する。
競合を解決するには、手元のファイルに書き込まれた競合の状況を表す複雑な改変を直し、ステージング反映させ、Gitリポジトリに対して操作しなくてはならない。
それは、もはやプラグイン上で対処するものではない。

もちろん、競合を回避する手段はある。丁寧にGitを扱うことだ。
書きたい内容ごとにブランチを切り、編集し、ステージ、コミット、マージ、プッシュ。 この一連の操作を正しく行えばいい。
そんな工程をメモを取るたびいちいちやってられない?
確かにそうだ。だから一定時間ごとに自動記録するような機能がプラグインに生まれる。そして執筆者の意思によらないコミットで、競合する。

結果、Obsidianモバイルからは 読み取り専用で扱う、などという運用になるのだ。

答えは一つ。 Obsidian Syncを使え。

Obsidian Syncなら完全に動作する。モバイルのObsidianと連携してもスムーズに同期されるし、編集するたびにコミットメッセージを書く必要もない。
しかも編集の履歴まで確認でき、過去のバージョンを復元することもできる。
Obsidian Syncはコアプラグインで、利用には課金を要する。

ああそうだ。Obsidianは無料で使えるソフトウェアだし、利用に制限をかけることのないソフトウェアだ。
あなたの知識はあなたのもの、それこそがコンセプトにあるソフトウェアであるから、それを妨げることはない。

だがプロダクトを支えるのは金だ。
歪に動作する手弁当の傍らで、完全に動作する機能を妥当な価格で販売している公式の機能があるのなら、それを使うことに迷うことがあるか?(Obsidianファン目線)

離席してみた

本記事を書いている途中、映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning』再上演版を見るために離席した。 するとどうだろう、続きが書けないではないか。

zenn記事はGitで管理してVSCodeで執筆している(更に今回はcursorを使った)のだが、編集中のワークスペースファイルは見れないし、既に書いた分もPushされてないから当然閲覧出来ない。
いや、Pushされていたとて、モバイル端末で十分に読む手段があっただろうか。GitHubアプリ越しか?

これをObsidian で書き、Obsidian Syncで共有していれば問題は起きなかっただろう。
実践による発見だ。

Vault は肥大する

第2の脳、ナレッジベースとして育てる Vault は、前提として肥大していく。
知識は日々追加され、追記で変化することはあれど、内容を消すことはない。
Zettelkastenにしろ、KJ法にしろ、発見のカードにしろ、それは変わらない。

ひとつのことをひとつのファイルに書く。それらを繋ぐ。
繋げて見比べて、新たな発見がまた新しいファイルを作る。

そこにGitを組み込み、しかも意味のある単位ではなく時間ベースでコミットされるとしたら、コミットグラフはファイルの何倍にも膨れ上がる。
その履歴のどこに戻ることがあるのか、どこを振り返る価値があるのか。考えてみるべきだろう。

自分で考えず、自分で紡がないなら、自由になれ。

Obsidian は、エディタである。Cursorも、エディタである。
Cursorを使って書くということは、Obsidianを使って書いていないということだ。

なぜ使ってもいないのにObsidianの名前を出すんですか?
それ本当に必要ですか?

Cursor + Git でいいじゃん。

CursorはVSCodeのforkだ。つまりGit操作に関する機能が組み込まれている。
ステージングもコミットも自在、ブランチ操作も自在、コンフリクト解決だってサポートできる。

ファイル間の関わりの洞察だって自分で読んで見比べることもないのでしょう?エージェントに訊いて終わりにしてしまうのだから。

モバイルでの閲覧には多少の苦労があるかもしれない。
だがGitHubホスティングにするならば、GitHubアプリでリポジトリを閲覧すればMarkdownは適切にHTMLレンダリングされたものが見れるだろう。
なんならWebブラウザからリポジトリを見れば良い。

Cursor + Dropbox でいいじゃん。

前述の通り、Gitで Vault を事細かに管理するのは手間だ。
しかしコミットを自動化するならば、Gitリポジトリとしての意味はなくなってしまう。

必要なのはなにかを見つめ直すべきだ。
本当に求めているのは、そのファイルが、その編集内容が、直ちに共有されることだ。
ファイル単位で歴史が管理されていればなお嬉しいということだ。
それならば、ファイルの変更に機敏に反応する Dropbox を使えばいいじゃないか。

モバイルから内容が確認したければ、Dropboxのアプリでファイルを閲覧すれば良い。
そこにはピュアなMarkdownファイルがある。

別解:AIエージェントにVaultをくれてやれ。

結局のところ、第2の脳に、自分の言葉で取り組まない姿勢に腹の虫がおさまらないのだ。
取り組むための道具である Obsidian を蔑ろにしているにも関わらず、名前だけ祀り上げることに我慢がならないのだ。

それならば、AIエージェントにVaultをくれてやれ。
その Vault は第2の脳ではなく、第三者の脳であればよいのだ。

ノートの生成や編集にCursorさえ使わず、エージェント(たとえばClaude Code)に一切の権限を渡し移譲するのだ。

そして、Obsidian をリーダーとして使う。
気になることを問い合わせてはノートを作らせ、Vault に反映させる。
リンクになっていない単語ひとつを選択すればオンデマンドに稼働して新たな知識を蒐集させる。
宙ぶらりんになった記事を見つけては既存の知識と関連を見出すように発想させる。

Obsidian のPC版では編集でき、モバイル版では閲覧だけという不均衡を、閲覧専用に揃えることで解決するのだ。

これならば文句はない。むしろ面白そうだ。

Refs

Obsidian - Obsidian 日本語ヘルプ - Obsidian Publish
https://publish.obsidian.md/help-ja/Obsidian/Obsidian

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