エンジニア歴12年がマーケターにキャリアチェンジした結果
株式会社バイオフィリアという会社でマーケター兼エンジニア兼COOをしているやはぎ@yahagi1989です。
学生エンジニアから始まり 12年ほどエンジニアを続けていましたが、およそ5年前にマーケティングと事業作りへと主なロールが変わりました。
(とはいえ今もコードは1日平均3commitくらいは書いてます)
かなり珍しいキャリアだと思うので改めて振り返りました。
- コード書いているだけではこの先のキャリアが心配
- 本当はビジネス作りに興味があり、手段としてエンジニアをしている
- 一通りがコードを書けるが マネジメント方面以外でもキャリアを模索したい
と考えている方に
- エンジニアからBIZ職にキャリアチェンジするとどうなるか?
の1つの参考にしていただけるかと思います。
エンジニアからPdMやCPOに進む人は多いですが、WEB広告を運用するようなマーケターになる人は少ないので BIZ職に超振り切るとどうなるか?の特殊ケース としてみていただけると幸いです。
自己紹介
バイオフィリアという会社は、代表の岩橋と自分が共同創業した、現在シリーズB・社員50名程度のスタートアップです。
主力事業はココグルメというペットフードD2Cで、お陰さまでARR20億を超える規模感まで成長しています。
その中で自分の現在の役割は
- マーケティング責任者 40%
- 自社ECなどのシステム開発 30%
- DXとデータ分析による全社の業務改善 15%
- 経営 15%
と幅広く動いています。
自分が死んでも「世界に残るものを作る」という想いで起業
自分は2012年に大学の研究の関係でプログラミングを触り始めました。(当時はC++)
「普通のバイトより稼げるらしい」という理由でiOSアプリエンジニアとして何社かのベンチャーで働き始めたことから、少しずつ「自分が作ったものが動く楽しさ」に魅了されていきました。(当時はObj-C)
その後も、日本オラクルというITインフラの会社にJavaのコンサルタントとして新卒入社しつつ、傍で個人開発のアプリを作ったり受託開発を受けたりしていました。
(当時はSwift/CakePHP/Rails/jQueryなど)
その当時は今のようにコミュニティが発達しておらず仲間も少なかったため、デザインから実装まで一人で完結する野良エンジニアでした。
1から作ったサービス・システムは、すでに100を超えているはず。
そうしているうちに「自分でも何かサービスを作れるんじゃないか?」と思い起業を決意しました。
そんな時に偶然再開したのが、高校の同級生である共同創業者の岩橋でした。
岩橋は「動物の殺処分をなくしたい」という想いをもち、
自分は「エンジニアリングで世界に残るものを作りたい」という夢を持っていたため、
その間を取った「ペット × IT」を軸にして株式会社バイオフィリアを創業しました。
ピボットを繰り返すうちに気づいたらマーケターに
ペット × ITで事業を考えては1ヶ月で作るも全く伸びる気配がなく2~3ヶ月後にはピボットする。そんな日々の繰り返しでした。
WEB系、アプリ系、メディア...など、ペットという軸でITっぽいことは全てトライしましたが、全て上手くいきませんでした。
そうしているうちに2年が経ち、会社の資金も個人の資金も使い果たし、残高は残り3万円にまで。
(もちろん資金調達も全て断られてます)
どうしようもなくなった自分と岩橋は、
渋谷にあるビール1杯390円の居酒屋に集まり
「ペットというドメインと、ITで事業を生み出すのは難しい」
「ITにこだわるのは一回やめよう」
「ピュアに一番市場が大きいペットフードを作ろう」
という話をしたことで最終的に今のココグルメに辿り着きました。
この時に今まで続けていた
- 岩橋がBIZサイド全般(=売る)
- 矢作がエンジニア(=作る)
という体制から逆転し、
自分がWEBデザインも少し齧っていたこともあり
- 岩橋が商品開発(=作る)
- 矢作がマーケティング(=売る)
という体制に自然と変わりました。
創業メンバーにエンジニアがいるのに、
ITを完全に捨ててペットフード事業にピボットするのはクレイジーな選択だったと思います。
ですが結果的には大正解でした。
マーケターになって気が付いた「エンジニアの甘え」
エンジニア時代の自分は「コードを書きさえすればバリューが出せている」と思っていました。
そして 「これだけ一生懸命作ったのに、なんでマネタイズしてくれないんだ」と、他責思考にすらなっていた と思います。
これが大きな間違いでした。
「多忙は怠惰の隠れ蓑」という諺の通りで、 確かに時間を使ってコードを一生懸命書けばどこか仕事した気になれます。
ですが、どれだけコードを書いていたとしても
「プロダクトに対してお金を払ってくれる人がいなかった」
「プロダクトを通してマネタイズできなかった」
当時の自分のバリューは正真正銘ゼロ だったと考えています。
「作りさえすれば誰かが売ってきてくれる」
この考えこそがまさに「エンジニアの甘え」でした。
そしてマーケターになってから 「お金を払って使ってくれる人を探す」ということがいかに難しいか を思い知りました。
そして同時に「エンジニアとして正しくやること」が全く売上に寄与しないということも知りました。
- 仕様が綺麗に整理されていること
- 拡張性が高い実装をすること
- 設計に矛盾がないこと
- 最新の技術を使っていること
などはバリューをほとんど産まず、
- 素人目線でもいいから自分で要件を定義しにいく
- 拡張性がなくとも最速で動く
- 設計に矛盾があってもCVRを高めること
- 成熟した技術を使い、古いPC・古いOS・古いブラウザでも動くこと
こそが最重要でした。
エンジニア視点では「イケてない」のかもしれませんが、お客様には確実に喜んでいただいており、事業としても着実に伸びています。
自分が本当にやりたかったことは、
技術的にイケてるサービスを作ることではなく、人が使ってくれるサービスを作ることである と、改めて気付かされました。
「エンジニア」であることが「マーケターとしての強み」へ
マーケターに転身したにもかかわらず、現在も業務の3割近くコードを書いている理由は、「マーケティングの成果最大化のため」です。
日用品・消費財でもBtoB SaaSであっても、現代の マーケターの仕事はもはや「クリエイティブで創造的な何か」ではありません でした。
むしろマーケティングのコアは 「正しくデータを取り、判断し、次のアクションを実行する」というサイクルを合理的な判断のもとに続けること にあり、これを 「最速かつ低コストに進められるか?」 が肝だったのです。
そのなかで一番のボトルネックになるのが「データを取ること」と「次のアクションの実行・実装」であり、デジタルマーケ領域ではこのほぼ全てがシステムの実装に紐づいているので、 実質的にはエンジニアリングが大きな割合を占めています。
しかし優秀で著名なマーケターであっても、実は簡単なHTMLすらも書くことはできません。
そしてマーケターの横には必ずエンジニアチームが必要になり、 施策の立案から実行までの間には一定以上のタイムラグが発生 してしまうのです。
一方で、 仮に十分にコードが書けて実装ができるエンジニアがマーケターになったとするならば、そのタイムラグは一切起きません。
- LPの画像を変えたければ、自分で更新する
- 新しいページが必要ならば、自分で作る
- ちょっとしたアニメーションや仕組みが必要なら、自分で作る
- 毎日のルーティンがあるなら、自動化する
自分はたまたまエンジニアがバックグラウンドだったおかげで、 普通のマーケターの3~4倍早くPDCAが回せていた と感じています。
自分は至って普通なマーケターだと思いますが、 コードを自分で書けたことによる手数の多さによってグロースできた と考えています。
エンジニアを辞めてマーケターになったことで、結果的にエンジニアスキルのバリューが飛躍的に高まった と感じています。
今こそエンジニアがマーケターなるべき理由
自分がエンジニアとしてのキャリアを歩み始めた2010年頃は、今の待遇や組織運営とは大きく異なりました。
給料も今と比べて半分くらいですし、エンジニアが特別扱いされるような福利厚生も当然ありません。
仕事の進め方も
- 現場とPMが要件を調整し、エンジニアが書きやすくコントロールしてくれる
- CPOやPdMが、現場が書きやすい業務設計をしてくれる
- EMやBizサイドが開発者を気遣ったコミュニケーションをしてくれる
- スクラムマスターが自分は次何をやるべきかを教えてくれる
というものではありませんでした。
今からすると「不遇の時代」とも取れますが、むしろ「過保護すぎるのでは?」という危機感すらも感じてしまいます。
こういった環境に馴染みすぎると、まもなく生成AIに食われる日が来るかもしれません。
実際エンジニアの高待遇を加速させていたSaaS系企業の資金繰りはかなり厳しくなっており、逆回転はすでに始まっています。
今一度10年前の環境に戻るとするならば、 「作れること」ではなく「売れること」が求められ、エンジンア領域であっても「売り方を考えながら作れる人」が生き残れる ようになると思います。
だからこそ、 今は一旦「作ること」は傍において「売ること」を極める(=マーケターとして結果を出す)方向へキャリアの舵を切ってみるのもアリ だと思ってます。
今ならまだ殆どのマーケターがHTMLを書くことができないので、HTMLをサクサクかけるだけでも優位に立てます。
BIZ職からエンジニアスキルを身につけるのは学習コストが大きすぎますが、 エンジニア職がBIZスキルを身につけるのは圧倒的に踏み出しやすいはず。
今がチャンスだと思います。
マーケターになりたいエンジニアにやってほしいこと
まずは先入観を捨ててマーケティング・事業づくりに関するインプットをしてみてほしいです。
自分がマーケターにキャリアチェンジした際、特に参考になった本は
- ハッカーと画家
- マイクロコピー
ですので、是非一度読んでみてください。
また、マーケティングは実務で学ぶのが最も効果的なので、実務に飛び込むのもおすすめです。
その際は是非
- 社内にエンジニアがいない会社
- テック感からより遠い会社
- 売ることに注力すべきプロダクトがある会社
-マーケティングドリブンで伸ばしている会社
で働くのがお勧めです。
ちなみに弊社もエンジニアポジションをオープンしています。
弊社は
- 社内にエンジニアはやはぎ1人のみ
- 年間200%成長しているペットフードD2C(テック感が薄い)
- 社内システムはスクラッチで頑張っている
- ECカートは自社開発
- MAツールも一部自社開発
と、エンジニアがマーケティング領域でバリューを出すチャンスが山ほどある環境です。
是非気になった方お気軽にご連絡ください。
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