技術書を執筆して技術書典9に出展するまでを振り返る
技術書典9に本を出展しました
9/12から22に開催されていた 技術書典9にはじめて作った技術書を出展しました。
AWSとM5StickCで作るIoT開発入門(技術書典オンラインマーケット)
※紙版はBOOTHで頒布継続しています。
自分自身、執筆から出展の準備に際して、先人達のノウハウにとてもお世話になりました。
恩返しの一環として、はじめて技術書典に出展する人に向けて、自分も今回の出展の記録を記事にまとめます。
執筆のきっかけ
自分は、もともと技術記事を書くことが好きで、会社のTechブログやQiitaに定期的に記事を出しています。
自然と「いつかは本を書きたい」という気持ちを持つようになっていたところに、技術書典9がオンラインで開催されるとのアナウンスが。
「これなら福岡にいながら参加できる!」と思い、座談会に参加したところ、一気にモチベーションが上がったので、すぐにサークル参加を申し込みました。
執筆作業
情報収集
実は自分自身、執筆・出展はおろか、そもそも技術書典に参加した経験がありませんでした。
すると、またしても朗報が。
深夜開催だったので朝型の自分はほとんど参加できませんでしたが、アーカイブが公開されていたので後追いで視聴するようにしました。
知らないと踏んでいたであろう地雷(執筆におけるハマりポイント)を事前に知ることができたので本当に良かったです。
アーカイブは今後も公開されるようなので、今後はじめてサークル参加する人は必見です。
テーマ選定
サークル参加が確定したのが8月初旬だったので1ヶ月で執筆完了できるテーマにする必要がありました。
個人的に興味がある技術要素はAWS AmplifyやNext.jsなのですが、まだ開拓中であり、8月後半には登壇の予定もあるため間に合わないと判断しました。
そこで8月後半の登壇にも関連があり、自分の普段の仕事でもある「IoT開発」をテーマに執筆することにしました。
表紙の作成依頼
今回、絵を描くのが趣味である私の妻に表紙を作成してもらいました。
妻自身もデザイナーやイラスト関連のお仕事の経験があるわけではないので、夫婦揃って手探りでの作業となりました。
スケジュール的には表紙の方が先に出来上がりました。
自分が執筆を始めた盆明け頃には、既に完成していたので執筆のモチベーションが上がったことを覚えています。
環境構築
Re:VIEW Starter
情報収集している中で「多くの著者さんがRe:VIEWというツールを使って執筆しているようだ」と感じました。
はじめての執筆で環境構築に手こずるのは避けたかったので、自分もRe:VIEWを使うことにしました。
後からTechBoosterさんのテンプレートが存在することを知ったのですが、自分はRe:VIEW Starterを使いました。
本家のRe:VIEWからブランチしていろいろ機能が追加されているとのことで、若干の不安はありましたが、結果的にはスムーズに執筆できたので良かったです。
textlint
こちらも多くの著者さんが使っていそうなツールです。校閲をある程度自動化することができます。
設定方法などはこちらの記事にまとめているので参照ください。
CI
GitHubにpushしたタイミングで自動的にtextlintを走らせるようにしていました。
さらに、masterブランチにmergeしたタイミングで紙版・電子版をビルドするよう設定していました。
merge後、すぐに紙面チェックができるのでやってよかったと思います。
執筆
ここはひたすら書くフェーズです。
ざっくり以下のようなスケジュールでした。
日付 | 作業 |
---|---|
〜8/14 | Re:VIEW、textlint、CIの環境構築 |
8/15 | 執筆開始 |
8/17〜8/21 | 登壇準備等のため執筆中断 |
8/22 | 執筆再開 |
8/30 | 一通り書き終える |
8/31〜9/6 | レビューおよび修正 |
9/7 | 脱稿 |
レビュー
レビューは社内の有志にお願いしました。本書の「まえがき」に謝辞を記載しています。
GitHubのリポジトリに招待して、指摘をIssueにあげてもらいました。
自分自身では気づいていない表記揺れやストーリーのぶれを指摘してもらえたのでお願いしてよかったです。
指摘がたくさん出るとしんどいですが、人に見てもらうのは本当に大事だと実感しました。
入稿
レビュー指摘への対処が一通り終わった9/6の時点で、技術書典9に電子版を提出しており、審査結果を待ってから入稿しました。
依頼先は、技術書典9のバックアップ印刷所である日光企画さんです。私は福岡にいますのでオンライン入稿を利用しました。
部数については悩みましたが、在庫を抱える前提で 100部 としました。
9/11に入稿できたので、ありがたいことに料金は全セット20%オフです。
技術書典9の最終日である9/22、紙の本が自宅に届きました。
宣伝
メインの宣伝手段はTwitterでした。
インプレッション | エンゲージメント総数 | 詳細のクリック数 | リンクのクリック数 |
---|---|---|---|
7610 | 489 | 190 | 158 |
CRは6%です。フォロワー400人のTwitterアカウントでこれだけインプレッション、クリック数を稼げれば上出来だと思っています。
書評記事を依頼
書評は効果が高いと聞いていたので依頼しました。
今回は、会社で自分の所属するIoTチームのリーダーにレビュー記事をお願いし、快く引き受けてもらいました。
【書評】AWSとM5StickCで作るIoT開発入門 #技術書典9
効果は計測できていませんが、書いてもらったこと自体がとても有り難いことだと思っています。
IoTLTに登壇
当初は予定していなかったのですが、ちょうど技術書典9の4日目(9/15)にIoTLTが開催されることを知りました。
【オンライン】IoT縛りの勉強会! IoTLT vol.67 @Youtube
当初、開催日時を9/14と勘違いしていたこともあって、慌ててLT資料を作りました。ネタは執筆した本を元にした内容になっています。
LTは約60人が視聴、SpeakerDeckはPV数が170、イベント直後に3件ほど購入があったので、そこそこの効果はあったものと推測しています。
頒布
技術書典9の期間中(9/12-22)に111冊を購入いただきました!
正直、想定以上の売れ行きで、購入いただいた方には本当に感謝しています。
電子版 | 電子+紙セット | 合計 |
---|---|---|
46 | 65 | 111 |
- このうち、会社の同僚やコミュニティといったリアルな繋がりのある方々による購入が、全体の2割程度とみています。(システムの仕組み上、誰に購入いただいたかはわからないため推測です)
- 「せっかく書いたなら応援するよ!」という善意で買ってくれた方もいると思うので、今回の頒布数はビギナーズラックも含んだ数値だと思っています。
もし、次回以降で出展する時には実力値が問われることになるので、どこまで頒布数を維持できるか腕の見せどころです。 - 「電子+紙セット」の方が多く売れることも予想外でした。
どちらも価格を1000円にしているので、当たり前といえばそれまでですが、多くの人に紙の本を届けられることは嬉しく思います。 - オフラインでの出展経験が無いので、オフラインの場合にどれだけ売れていたのかは正直気になります。
福岡からの交通費・宿泊費を加味しても、赤字を回避できるのか... - 最終日の駆け込み需要がすごかったです。
初日が頒布数のピークと予想していたので、嬉しい誤算でした。
振り返り
⭕ 地雷を回避できた
オンライン勉強会で情報収集していたこと、Re:VIEW Starterを導入したことが功を奏し、順調に執筆を進めることができました。
⭕ 早朝の執筆で効率良く進められた
自分自身が朝型なので、子供が起きるまでの1〜2時間を使って執筆するようにしていました。
周囲が静かなことはもちろん、頭の中が整理された朝は、作業効率が高かったと感じています。
⭕ 表紙が、( ・∀・)イイ!!
妻が書いた表紙なので身内自慢のように見えてしまいますが、表紙はとても気に入っています。
自分がこの表紙を本屋で見かけたら間違いなく欲しくなります。
⭕ 想定より売れた
表紙のおかげか、販促の成果か、技術書典9自体が盛り上がったからなのか、当初の想定より売れました。赤字を回避できただけで万々歳です。
自分自身、IoTに関わる仕事をしているので、本が売れてIoTの裾野が少しでも拡がると、嬉しいです。
❌ 表紙のフォーマットの存在を入稿直前に知る
エンジニアとしてあるまじき失敗なのですが、表紙にフォーマットがあることに入稿直前まで気づいていませんでした。
加えて、表紙はカラーモードをCMYKにする必要があることも、妻に共有できておらず、入稿前後に修正に追われました。
日光企画さん、妻の双方に迷惑をかけてしまいました。
次に執筆するときは気をつけようと思います。
❌ ページ数を全く意識していなかった
書籍全体のページ数は4の倍数にする、各章の扉を右ページに配置するので白紙ページが発生しないようにする、といったページ数調整ができていませんでした。
前者はなんとか調整しましたが、後者は調整が間に合いませんでした。
このため、2ページほど白紙のページが入ってしまっています。
次は改善したいポイントです。
次回に向けて
技術書典10が12月に開催されるらしいので、次もぜひ出展したいと思います!
テーマについては検討中ですが、もう1回「IoT」をテーマに本を書く可能性が高いです。
次回はまだ難しいと思いますが、いつかオフラインでも参加してみたいものです。
おわりに
本記事が次に本を執筆・出展する人の参考になれば幸いです。
執筆は楽しいので、みなさんもぜひ体験してみてください。
Discussion
はじめまして。技術書典9から参加した者です。
技術書の書き方について体系的にまとまっていて素晴らしいですね。
Re:VIEW Starterのことは知らなかったので後で参考リンクも読まさせていただきます。
貴重な情報共有をありがとうございました。