【リーン生産方式】「一個流し」の方が「バッチ方式」より速い根拠【Kanban】
概要
「バッチ方式」では:
- 主要な作業に付随する小さなプロセスが発生するにも関わらず、
その部分の時間が事前の見積では算入されないため - 繰り返すほど作業に習熟するはずという思い込みがありますが、
プロセス全体のパフォーマンスに比べて各工程のパフォーマンスは影響が小さいため - バッチサイズが大きい場合、作業を根本的に見直さなければならないような失敗に
作業がかなり進んでからでなければ気づけないため
方式 | 説明 |
---|---|
一個流し | 全工程を何巡もすること リーン生産方式でそう呼ばれます |
バッチ方式 | 各工程をまとめて作業すること |
「一個流し」(One Piece Flow) とは
- 製品をバッチではなく1つずつ個別に生産工程に投入します
- 品質上の問題を早期に発見できます
- リーン生産方式で「一個流し」と呼ばれています
「バッチ方式」(Batch Processing) とは
各工程をまとめて作業すること
その他の用語
仕掛り作業 (WIP: Work in Process)
- 同時に作業している作業項目数のこと
- WIP を減らすとリードタイムが短くなり、プロセスがより速く流れるようになる
リードタイム
- 発注から納品までのすべての工程にかかる合計時間
- Kanban ボードでは、
一つの作業項目が最初の列に入ってから、最後の列に入るまでにかかった時間
バッチサイズ
一度に処理する量のこと
リソース
- 作業を行うための人や機械などのこと
- 「リソース」の稼働率を重視して WIP を多くしたために
すべての作業を調整する新たな作業が発生する負のスパイラルに制御不能になり、
作業の調整ばかりしている組織の「リソース」とは、ほとんどが人を意味している
(書籍「カンバン仕事術」より)
検証動画
様々な書籍で紹介されている検証動画の作者が再作成した動画
(オリジナル版は現在は見ることができません):
次の記事のための動画です: One Piece Flow versus Mass Production | Gemba Academy
二人で検証する動画
書籍「リーン・スタートアップ」での解説の概要
書籍「リーン・スタートアップ」第3部 スピードアップ 第9章 バッチサイズで、
次のような書き出しで触れられています
書籍 "Lean Thinking" に、
ニュースレターの発送作業をまだ小さい子どもたちふたりに手伝ってもらった話が出てくる
ここで「証拠となる動画もある」と、
上記の動画のオリジナル版 (現在は見ることができません) が紹介されています
書籍中で解説されている「一個流し」の方が速い理由
バッチ方式では:
- 途中まで処理した封筒を次のようにしなければなりませんが、
その部分の時間が直感では算入されないため- 並べる
- 積みかさねる
- 動かす
- 繰り返すほど作業に習熟するはずという思い込みがありますが、
プロセス全体のパフォーマンスに比べて各工程のパフォーマンスは影響が小さいため - もし、折ったニュースレターが封筒に入らなかったら、
バッチサイズが大きい場合、
作業がかなり進んでからでなければこの失敗に気づけないため- 全部の封筒からニュースレターを取り出し、
新しい封筒を用意してそちらに詰め直さなければなりません
- 全部の封筒からニュースレターを取り出し、
具体的にどこで時間が無駄になっているのかの分析
次の記事より: A Response to the Video Skeptics | Gemba Academy
- ステップ間で山を動かすたび 2 秒から 5 秒が無駄になります
- 山は何度も修正を行う必要がありますが、一個流しならその回数を大幅に減らせます
- 次で無駄が出ます
- 仕掛け品在庫を保管する
- 移動する
- 取ってくる
- 探す
同じ原理は工場にも適用できます
書籍「カンバン仕事術」での解説の概要
書籍「カンバン仕事術」 第 I 部 カンバンの学習 第 1 章 チーム「カンバネロス」のはじまり
1.5 コイン渡しで触れられています
書籍中で解説されている「一個流し」の方が速い理由
あまり明確には語られていませんが、次のような内容が書かれています:
- 少しずつ、より重要なものを提供できるため
- やり方を間違えていたら、全部やり直しになるため
- (「バッチ方式の方が速い」と思い込んでしまうのは)
それぞれの作業者 (工程) の効率性に注意が向いてしまっているため- 個別の工程の効率は低下しますが、流れ全体の効率は向上します
「一個流し」と「バッチ方式」の比較
方式 | 一個流し | バッチ方式 |
---|---|---|
各工程の効率 | 悪くなる | 良くなる |
「リソース」の稼働率 | 下がる | 上がる |
リードタイム | 短縮 | 長くなる |
流れ全体の効率 | 向上する | 低下する |
手戻り時などのリスク | 下がる | 大きくなる |
プロセス改善の機会 | 増える | 減る |
上記は次より:
- 第 I 部 カンバンの学習 第 1 章 チーム「カンバネロス」のはじまり 1.5 コイン渡し
- 第 II 部 カンバンの理解 5 章 仕掛り作業 5.1 仕掛り作業 (WIP) を理解する 5.1.1 仕掛り作業とは何か?
- 第 II 部 カンバンの理解 5 章 仕掛り作業 5.2 WIP が多すぎるときの影響 5.2.3 リスクの増大
- 第 II 部 カンバンの理解 5 章 仕掛り作業 5.2 WIP が多すぎるときの影響 5.2.4 オーバーヘッドの増大
一個流しの 10 の利点
次の記事より: 10 Benefits of One Piece Flow | Gemba Academy
- 安全性の向上
- 品質の向上
- 柔軟性の向上
- スケーラビリティの向上
- 在庫の削減
- 生産性の向上
- 資材の補充の簡素化
- フロアスペースの解放
- 改善活動の定着
- モラルの向上
安全性の向上
全体の生産性を維持しつつ、各リソースの稼働率を下げることができるため
品質の向上
顧客のフィードバックを早期に得ることができるため
柔軟性の向上
バッチ方式より高速なので、その分スケジュール調整に時間を使うことができるため
スケーラビリティの向上
大量の材料を猛スピードで生産する必要がなくなるため、
設備をより小型かつ低コストで設計できます
在庫の削減
仕掛品 (WIP) が大幅に削減されるので、大量の在庫の移動、保管、管理が不要になるため
生産性の向上
バッチ方式に付随する多くの無駄 (動作、輸送、待機など) が大幅に削減されるため
資材の補充の簡素化
タクトタイム で歩調を合わせた一個流しは、次によって材料の調達が可能となります:
- 時間指定の巡回集荷
- 一定量の供給
この予測可能性により、水すまし の作業がはるかに簡単に遂行できるようになります
フロアスペースの解放
フロアに保管する仕掛品 (WIP) が大幅に削減されるため
改善活動の定着
(納期の?) バッファや在庫のバッファがなくなるので、
改善するべき課題がバッファに隠れることがなくなり、可視化されるため
モラルの向上
従業員が考えている次のことを実現できるため:
- 良い仕事をしたい
- 進捗を確認したい
- 積極的に関わりたい
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