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Linux, from top to bottom #1

2023/12/06に公開

はじめに

筆者がGNU/Linuxに触れたのは、一般から言って遅く、大学生になってからであった。

中学の時分には、我が家にWindows 98 が入ったパソコンがあったが、今となっては考えられないけれども体育会系の部活に勤しんでいたし(と言っても卓球なのだが)、パソコンを使うのはゲームをちょっと遊ぶぐらいで、プログラミングとか、そういうITっぽい部分にはほとんど触ることはなかった。いろいろなことに興味を持ち始める高校の頃はどうだったかというと、筆者は寮生活であって、身の回りに情報端末と呼べるものは一切なかったわけである。

筆者はパソコンとは縁遠い人生を歩んでいた。

そんな筆者が何を間違ったのか情報系の大学へ進学し、そんな大学で、学生共用として配置された端末には当然のように大学謹製のLinux ディストリビューションがインストールされていて、それが初めての出会いだった。
今思えば、KDE環境が入った謹製Linuxに、据え付けのキーボードがHHKB Liteという、明らかに誰かの趣味を反映したような奇特な設備だったと思う。

そんな環境で、半ば強制的にLinuxに入門したわけである。
しかし慣れとは恐ろしいもので、大学4年になるころには、Linuxはもはや必須スキルになっていて、研究を進めるにも、研究室のインフラを操作するにも、Linuxが必要だった。そしてなぜかGPSデバイス用のドライバを開発したりした。

ここまで来ると、当初”パソコン”ぐらいにしか考えていなかった筆者にも、末席のITエンジニアという自覚がでてきて、自分のブログにいろいろなLinuxディストリビューションをインストールした記録を書いてみたりするまでになっていた。ちょうどその頃、Androidがリリースされていて、タッチパッドのないPCに突っ込んでみて途方に暮れたこともあった。

アンドリュータネンバウム氏のOS本とMinixのソースコードを手に入れて、読み解きとコードの解析を始めたのはこの頃である。いっぱしのエンジニア気取りで、いつかは自分でもOSを書いてみたいなんて思ったりしたものだ。

さようならLinux

社会人になると、大学までの知識をフル活用しつつ、業務プログラミングを行って、産業用コンピュータ向けのソフトウェアの開発とメンテナンス、OSのサポートを行っていた。きつい職場環境であったが、能力をフル活用できていた時期ではあったと思う。RedHatの高いトレーニングを受けたり、内容が濃い日々であった。

しかし悪いことに体調を崩し、2年間の休息を経ることになる。

その間に、ITはクラウドになりつつあった。

復職後の配置換えで、筆者はクラウドを学ばねばならなくなった。

ああ煌びやかなクラウドの日々

いくら知らなかろうが、やれと言われれば学んでSIに役立てなければならない。
私の業務は、クラウドのその志向から、「ビジネスセントリック」なものへと変わっていき、OSとその技術は過去の遺産となっていった。
勉強会やカンファレンスでは、どこでも「ビジネス」「サービス」が主体となっていて、筆者はクラウドをうまく使って、ビッグなビジネスを成功させようというキラキラした雰囲気に飲まれていったのである。

筆者はエンジニアから、ビジネスエンジニアにジョブチェンジしていた。

筆者の周りでLinuxは、もはやクラウドプラットフォーマーがメンテナンスしてくれる、間借りの環境でしか無くなった。そこではGRUBもデスクトップ環境も、カーネルもなにもない。ただ使うだけである。

それで良いのだろうか?

Hello, Linux, Again

かつて、筆者がこの業界に入る下地となったのは、間違いなくLinuxとGNUとUNIXの哲学であったはずだ。筆者は、いかなる時代となっても、果たしてそれが直接的に我々の目の前に現れないものであっても、OSだけは存在し続けると信じていた。今でもそう信じている。

昨今では、Linuxのメンテナーの激務がニュースとなっていた。

ここからの記事

Linuxの技術情報はさまざまなカンファレンス、Qiitaなどの技術系ブログで公開されているし、入門書籍も、このご時世簡単に手に入るようになった。しかしながらそれは莫大なバックグラウンド知識がなければ理解できなかったり、バラバラの技術情報は、統合して理解するのには時間がかかる。
初心者向けはある、上級者向けはある、しかし中級者向けの技術書がない。

そこでこの記事である。
ここからは、ちょっとニッチなLinuxの情報を、(筆者の気力が続く限り)上はデスクトップ環境から、下はブートコードまで一気通貫で紹介しようという一連の記事を後悔したい。

あって当然、使うだけな「ビジネスエンジニア」に変異しつつある筆者の、最後の恩返しとならんことを。

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