プロアスリート化するAI時代のエンジニア
はじめに
AIが当たり前に使われる時代になり、エンジニアの生産性はここ数年で爆上がりしました。昨日まで数日かかった作業が、今では数時間で片づくような世界です。
アメリカGAFAMなどメガテックは軒並みリストラを実施しています。エンジニアの競争力は「人数」ではなく「生産性」に移っているのがわかります。
エンジニア個々人の視点からみると、これまで以上に“個としてのアウトプット”が強烈に求められる時代に突入しています。
個々人の力で勝負する職業というと“プロアスリート”
アスリートと比較することでは今後のキャリア戦略のヒントになるのではないでしょうか。
プロアスリートの働き方の変遷
個人的な話ですが、私はプロ野球再編問題が起こった2004年に楽天に新卒入社し、楽天イーグルスの立ち上げメンバーとして球団の設立に関わっていました。その中で野球選手をはじめプロアスリートの働き方やキャリアにについても身近に考えてきました。
プロアスリートの世界も、最初から自由で成果主義だったわけではありません。
むしろ「選手がキャリアを自分で選べない」時代が長く続いていました。
日本プロ野球(NPB)
昔のプロ野球では「保留権」という制度がありました。
これは、契約が切れても球団が選手の権利を一方的に握り続けられる仕組み。
選手に移籍の自由はなく、条件交渉すらしづらい時代でした。
そんな中で1990年代に始まったのが「ポスティング制度」。
これによって、イチローがマリナーズへ、松坂大輔がレッドソックスへ、田中将大がヤンキースへと飛び立っていきました。
最近では皆さんご存知大谷翔平がエンゼルスからドジャースに移籍し、史上最高額の10年7億ドル契約を結んでいます。
野茂英雄が近鉄を”裏切った”とバッシングされながらメジャーに挑戦したのが1995年、30年で隔世の感があります。
「球団に一生を捧げる」のが当たり前だったプロ野球も、今では「成果を出せば世界へ挑戦できる」仕組みに変わりました。
メジャーリーグ(MLB)
アメリカでも事情は似ていました。1970年代までは「リザーブ条項」で、選手は球団に生涯縛られていました。
しかし1975年、フリーエージェント(FA)制度が生まれると状況は激変。実力と成果を出した選手は、契約が切れれば自由に移籍し、正当に評価されるようになりました。
その結果、日米での平均年俸には大きな差が生まれています。
日本プロ野球(NPB)の平均年俸が約4,000〜5,000万円程度であるのに対し、MLBの平均はおよそ6億円前後。
成果に応じて報酬がはね上がる「市場原理」が、ここまで明確に働いています。
ヨーロッパサッカー
ヨーロッパサッカーの働き方を大きく変えたのは、1995年の 「ボスマン判決」 でした。
当時は、契約が切れても移籍先クラブが移籍金を支払わないと選手は自由に動けず、事実上クラブに縛られていました。
ベルギーの選手、ジャン=マルク・ボスマンが起こした裁判の結果でた判決によって、
- 契約満了後の自由移籍(ボスマン・フリー)
- EU域内選手は外国人枠の対象外
というルールが一気に整備されました。
その影響は凄まじく、ヨーロッパ中で移籍が活発化し、スター選手の年俸は跳ね上がり、外国籍選手の流入でリーグのレベルは急上昇しました。
クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシといったスターが超高額契約を結べるようになった背景には、この「ボスマン判決」による自由化があります。
さらに近年では、走行距離、スプリント回数、パス成功率、xG(ゴール期待値)といった詳細なデータ分析が選手評価の中心になりました。
単に「活躍している」ではなく、データで価値を証明し、その結果が移籍金や契約金に直結する時代です。
アスリートから考えるAI時代エンジニアの働き方の未来
アスリートの歴史から見えてくるのは、契約の柔軟化、報酬の高騰、そしてデータによる評価方法の整備です。
プロスポーツの世界では、数字や成果がそのまま市場価値となり、契約や移籍のルールを変えてきました。
エンジニアの世界もまた、AIの浸透によって「やった時間」ではなく「生み出した成果」で評価される職業へとシフトしつつあります。
スポーツの進化を鏡にすると、エンジニア組織の未来像がより鮮明になります。
| 要素 | スポーツ界の特徴 | AI時代エンジニア組織への示唆 |
|---|---|---|
| 成果主義 | 成績・スタッツ・勝敗が評価の全て | 個人・チームのアウトプットをデータで可視化し評価 |
| データ分析 | 選手のパフォーマンスをデータで測定(走行距離、シュート成功率等) | コード生産性・リリース速度・品質指標のデータ活用 |
| 流動性 | トレード・移籍で常にチーム最適化 | 社外タレントや副業人材の積極活用 |
| 高い自己責任 | プロ意識が求められ、自分の数字で語る | 成果を数字・プロダクトで示す文化 |
ここから今後みえてくることはエンジニアの現場でも、生産性の可視化と評価方法の確立が進み、それに伴って個人へ報酬の高額化と、逆にキャッチアップできない人の淘汰が進むのではないでしょうか。
メンバーエージェントについて
プロスポーツの世界では、選手のキャリアを支える存在として「エージェント」がいます。
契約交渉や移籍のサポート、スポンサーとの調整、そして長期的なキャリア設計。
選手が成果に集中できるよう、裏側で伴走する大事な役割です。
プロアスリートがエージェントと共にキャリアを築くように、エンジニアにもまた「成果とキャリアを支える存在」が必要になってきています。
変化が激しく、成果が常に問われるAI時代。エンジニアは“ひとりで戦うプロ”であると同時に、“支えてくれる誰か”がいることでパフォーマンスを最大化できます。
クロステック・マネジメントでは、今後エンジニアに限らず、デザイナー、ビズデブ、バックオフィスも同様、”プロ化”が進むという考え方をもとに「メンバーエージェント」という社内エージェント制度をつくりました。(一般的な人材エージェントとは異なる制度です)
メンバーエージェントは、組織とメンバーの間に立ちながら、次のような支援を行います。
組織とのコミュニケーションサポート
組織と個人のコミュニケーションの橋渡し役を担います。プロジェクトにおける立ち位置の明確化や、目線・期待値の調整を通じて、相互理解と信頼関係を構築します。
報酬適正化のための支援
業界や職種別の報酬水準をもとに、スキルや成果に見合った報酬が支払われるよう、組織側へ可視化・提案を行います。報酬評価における参考項目の洗い出しや透明性向上も推進します。
バリュー・成果最大化のための支援
定期的な対話を通じて、成果を出すための状態を共に整えます。業務の振り返りや目標の更新、次のステージへの移行支援なども含め、心身のケアも行いながら並走します。
プロアスリートがエージェントに支えられながらキャリアを築くように、エンジニアもまた、伴走してくれる存在によって成果や成長を加速できる。**メンバーエージェントは、**まさにそのための社内にいるエージェントを目指しています。
まとめ
クロステックマネジメント(京都芸術大学)では、プロ志向のエンジニアをはじめ幅広く人材を募集しています。AI×教育に興味のある方のエントリーをお待ちします!
京都芸術大学のテックブログです。採用情報:hrmos.co/pages/xtm/jobs 芸大など5校を擁する瓜生山学園は、通信教育で国内最大手、国内で唯一notionと戦略パートナー契約を結ぶなどDX領域でも躍進、EdTech領域でAIプロダクトを開発する子会社もあり、実は多くのエンジニアがいます。
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