ゲームプログラマーとして成長するために大切な3つの力
はじめに
「どうすればプログラミングが上手くなるのか?」
これは、ゲーム業界を目指すエンジニアにとって、常につきまとうテーマです。
Unity や Unreal Engine などの便利なエンジンやライブラリが整っている時代でも、「本当にゲームを作れる」プログラマーになるためには、言語やフレームワークの知識以上に重要な根本的スキルがあります。
本記事では、ゲームプログラマーとして実務を経験する中で特に大事だと感じる3つの力を紹介します。
① 抽象化の力 —— 巨大なコードを「分けて」考える
ゲーム開発は、数千〜数百万行にもなるコードの集合です。
その全てを頭に入れることは不可能なので、必要な部分だけをブラックボックスとして扱う考え方が必須になります。
例えば、「プレイヤーが持つ全ての武器を取得する」処理を作る場合を考えます。
// Repositoryパターンによる例
class WeaponRepository {
public List<Weapon> GetAllWeapons(PlayerId playerId);
}
この WeaponRepository
クラスを作るときは、
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DBやセーブデータへのアクセス
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ログやエラーハンドリング
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フォーマット変換
など、たくさんの下位レイヤのライブラリを呼び出しますが、上のレイヤからは「GetAllWeapons」だけ見えればよいのです。
これが抽象化であり、モジュールを積み重ねて大規模ゲームを成立させる基本です。
実戦ポイント
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オブジェクト指向(OOP)、関数型(FP)、手続き型といった 複数のパラダイムを状況に応じて使い分ける
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トップダウン(設計から実装)とボトムアップ(共通処理の抽出)を行き来しながら開発する
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抽象化しすぎると開発が重くなり、抽象化しなさすぎるとコピペ地獄になるため、バランスを取る
② デバッグの力 —— ブラックボックスを「開ける」技術
抽象化したコードは便利ですが、バグが起きたときには中を開ける必要があります。
たとえば「インベントリ画面に武器一覧が表示されない」と報告されたとき、どこから原因を追うべきでしょうか?
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F12(DevTools)や
curl
でクライアント→サーバ間通信を確認 -
サーバで
WeaponRepository.GetAllWeapons()
の戻り値をログ出力 -
DBにクエリを直打ちして期待通りの結果か確認
こうして層を一つずつ下って調査するのがデバッグの基本です。
このスキルはバグ修正だけでなく、新しいプロジェクトやチームに参加したときにコードを理解する力にもなります。
実戦ポイント
ログやアサートを常に入れておく
デバッガでステップ実行できるように設計する
バグ報告を「再現可能な条件」に落とし込む
③ 規律と習慣 —— 安定して動くコードのために
多くの人は天才ではありません。
「バグを生まない」のではなく、「バグが出ても壊れない」ようにするのが現実的な戦い方です。
そのためには、個人の感覚ではなく規律とプロセスが必要です。
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入力値を常に疑い、防御的にコーディングする
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単体テスト・統合テストを用意する
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ログとエラーハンドリングを丁寧に書く
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コードレビューやペアプロを習慣化する
実戦ポイント
「人は必ずミスする」前提で設計する
pageSizeなど外部入力は必ずバリデーションする
「動いたコードをそのまま放置」せずリファクタする
技術はあくまで手段
最新のツールやフレームワーク、AI補完やIDEは開発効率を大幅に上げますが、
それらは本質ではなく、「抽象」「デバッグ」「規律」を支えるための手段です。
ゲーム開発では、
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便利なエンジン機能(UnityやUE)を理解し使いこなす力
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その内部が壊れたときに調査・修正できる力
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チーム全体が安定して動けるようにする力
が求められます。
つまり「何を使うか」ではなく、「どう考えるか」「どう学ぶか」が最も重要です。
何より、たくさん手を動かして失敗し、改善すること。
その経験こそが、最も確実にあなたを「強いゲームプログラマー」にしてくれます。
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