UI開発を10倍速くするための実戦ポイント
はじめに
多くの人は「UI開発=手の速さ」だと思っています。
でも実際のプロジェクトでは、進行を遅らせる原因はコードの速さではなく、データフローとUI構造設計の悪さです。
Unity(UGUI)で時間を食う典型的なポイントを挙げると、以下のようになります。
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データ前処理がバラバラ:ソートやフィルタが各UIに散らばっていると、UI層が処理待ちになる。
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階層構造が深すぎる:1回の更新で大量のTransformを走査、処理も重くバグも出やすい。
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アニメーション・状態管理が未抽象化:新しい状態を追加するたびにコードを壊す。
同じランキングUIでも、ある人は半日で完成、ある人は3日かかる。
その差は、手の速さではなく設計の差です。
データ層とUI層を明確に分離する
ありがちなアンチパターンは、OnClick()
の中で
データ取得 → オブジェクト生成 → UI更新を全部やるケース。
短期的には動いても、UI改修のたびに全部作り直しになります。
もっと良い設計はこうです👇
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DataService / Manager にデータロジックをまとめる
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UI は DTO(Data Transfer Object) を受け取って表示専念
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データ前処理は Python や外部ツールで事前に済ませる
こうすると要件変更が来ても、UI側はほとんど触らずに済みます。
データ層が変わってもUIは安定、これが真の開発効率化です。
リスト描画は「オブジェクトプール」が必須
ランキング、インベントリ、スキルリストなど、
毎回 Instantiate
+ Destroy
していると、
処理が重くなるだけでなく、開発時間も無駄に増えます。
対策:
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オブジェクトプールを構築する:
再利用可能なUI要素をキャッシュして、再描画時はデータだけ差し替え。 -
シンプルな PoolManager でOK:
使い終わった要素はSetActive(false)
して再利用。 -
ScrollRect の仮想化レンダリングと併用:
数千件でも軽く動作。
あるプロジェクトでは、インベントリUIの描画時間が
500セルで200ms → プール導入後は30msに短縮。
体感で「カクつき」が消えました。
UIアニメーションはモジュール化せよ
多くのチームでは、UIごとにアニメーションをバラバラに実装しており、
時間が経つと修正不能なスパゲッティになります。
ベストプラクティス:
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共通の UIアニメーションコントローラ を定義
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Show()
とHide()
を統一インターフェースとして提供
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DOTween / Animator を内部で使い分け
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イベント連携は「コールバック」で行い、アニメーション内にロジックを書かない
こうしておけば、デザイン変更が入ってもコントローラだけ差し替えで済みます。
UIロジックは一切手を触れずに済むのです。
ツールと自動化こそが最大の効率化手段
「早く書く」ことより、「書かなくても済む」環境を作るほうが強い。
おすすめのツール化:
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自動バインド生成
Editor拡張でPrefabに紐づくUI要素を自動コード生成。
手動のFind()
は完全廃止。 -
データ駆動UI
レイアウトを設定ファイルで制御し、
プランナーがExcelを編集するだけでUI更新可能。 -
一括編集ツール
フォントやアンカーを一括変更できるツールを用意。
機械的な作業を全削減。
チーム全体の標準化が本当の効率化
個人が速くても、チームがバラバラなら総合的には遅くなります。
本当に効率が上がるのは「統一された開発文化」があるとき。
成功チームに共通するポイント:
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UI規約ドキュメントの整備
Prefab命名、コンポーネント構成、命名規則を統一。 -
共通UIフレームワーク
全UIがBaseUI
を継承し、ライフサイクルが統一されている。 -
ホットリロード対応
UIロジックをホット更新できるようにして、
プランナーが自分で調整できる。
こうした共通基盤が整うと、チーム全体のスピードが倍以上に跳ね上がります。
まとめ
UI開発の効率差は 10倍 ついても不思議ではありません。
その分かれ目は、次の4点にあります。
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データとUIを分離できているか
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リスト描画に再利用設計があるか
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アニメーションをモジュール化しているか
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ツールとチーム標準が整っているか
「全部自分で書くしかない」と思っているうちは、
まだ本当の効率化に到達していません。
UIは「見た目」ではなく、設計と工程の芸術です。
速く書けるのは職人。
壊れずに書けるのはエンジニア。
速くて壊れないのが、本当のプロ。
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