はじめに
こんにちは、ウェルスナビの金融システム開発チームでマネージャーをしている冨里です。
金融システム開発チームでは、
- お客様が直接利用する諸手続きまわりのバックエンド開発
- 社内のオペレーターや、提携先の営業員が利用する業務システムの開発
といった、ウェルスナビのサービスの利用申込から解約までを支える幅広い開発を行なっています。
本記事ではウェルスナビの口座開設にフォーカスして、複雑な社内業務フローと、開発・テストの利便性を両立する取り組みについてご紹介します。
ウェルスナビの口座開設業務
ウェルスナビの口座開設が申し込まれてから口座開設されるまで、社内外のオペレーションチームにより下記のような作業が行われています。
これらの作業は、オペレーションチームが毎日大量の件数をなるべく事故なく迅速に行えるよう設計されています。
そのため、各工程によって一件ずつ処理したり数百件まとめて処理したりと、処理単位が異なります。
また、ウェルスナビにはさまざまな提携先があり、その提携先のサービスにより固有のチェック処理が行われていたりもします。
テストしたいのに、ユーザーを作るだけで一苦労
前述のように口座開設に必要なステップはたくさんあり、またどのような経路でサービスを申し込むかによって必要な作業が異なります。
そのため、口座開設を完了してサービス利用開始後のテストを行えるユーザーを作るまでの学習コストはとても大きなものでした。
口座開設を完了するためのフローは正常パターンのみのため例外パターンは学習しなくてよいものの、正常パターンだけでも申込経路によって異なる複雑なフローを把握する必要がありました。
申込経路によって異なる複雑なフロー
全体の操作を習熟したとしても、開発時にただ1件テストデータを作成したい場合に3分半ほどの時間がかかってしまいます。
当初はTampermonkey[3]を使って入力や次の処理画面への遷移を補助していましたが、それでも3分ほどの時間は必要でした。
テストユーザーの作成をもっと簡単にするために
テストユーザーの作成コストをなんとかしたいと思いつつも、通常業務でなかなか改善に手がつけられない日々が続いたのですが、改善にもってこいのイベントが開かれました。社内ハッカソンです！
ウェルスナビでは、「ヨクスルハッカソン」[4]と題して不定期に社内ハッカソンイベントを開催しています。
毎回異なるテーマで開催されており、このときのテーマは「普段できていないことをやる」だったので、テスト口座開設を誰でもできるようにしたいと思いハッカソンに臨みました。
そのときの成果物が「ショートカット口座開設」機能で、口座開設に必要な数多くの作業をワンクリックで完了できるようになりました。
申込経路ごとの複雑な口座開設フローをボタンひとつに隠蔽し、学習コストと作業時間の大幅削減を実現しています。
複雑なフローがワンステップに
自動テストツールを利用した方法も考えましたが、多くの画面遷移が発生し実行に時間がかかってしまうため、内部の処理のみ順番に動かす機能を新たに作成しています。
この機能を利用することで、テストユーザーの口座開設にかかる時間が3分から10秒ほどに短縮されました。
まとめ
1日のハッカソンで作った機能ですが、実行ログから調べてみたところ半年で30時間以上のエンジニアの工数が削減されていました。
副次的な効果として、
自動テストのテスト範囲を広げることができた。また、自動テストシナリオのステップが削減され実行時間も短くなった
という声を品質向上チームからいただいています。
二の次になりがちな開発・テスト方法の改善ですが、それがサービスの改善スピードを上げていくことにつながるので、折に触れ時間をとって取り組んでいきたいですね。
明日は、開発推進 林 の「金融レガシーシステムを保守するSIerからフィンテックベンチャーに転職した話」です！
お楽しみに！
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著者プロフィール
冨里 とわ (とみさと とわ)
2017年9月、ウェルスナビにバックエンドエンジニアとして入社。
現在は金融システム開発チームのマネージャーを務めながら、社内イベントの企画・運営も兼任。
趣味の陶芸で作った作品で、カフェオレやお酒を飲むのが休日の楽しみです。
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証券業界では、自主規制規則において、初めて有価証券の売買その他の取引等に係る口座を開設しようとする顧客が反社会的勢力に関わるものでないか確認することが義務付けられています。反社会的勢力を排除する取組みの一環で、指定されたシステムを利用します ↩︎
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犯罪による収益の移転防止に関する法律の定めにより、取引に先立って顧客の本人確認が必要となります。ウェルスナビでは本人確認の方法として、本人確認資料の提出と簡易書留（転送不要）の送付や、オンラインで完結する「クイック本人確認」など、複数の方法から選択できます ↩︎
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ブラウザ拡張機能。任意のサイトに対してユーザースクリプトを実行させることができます ↩︎
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エンジニアリングで何かを 改善する＝ヨクスル ことから名付けられており、個人的にこの名前がとても気に入っています ↩︎
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