新しいNISAの制度対応におけるUI/UXの取り組み
はじめに
こんにちは、プロダクト開発チームで開発プロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャーをしている高橋(@wn_takahashi)です。
ウェルスナビが展開しているロボアドバイザーは資産運用をおまかせできるサービスです。法律や日本証券業協会のルールを遵守するため、臨機応変に対応していく必要があります。こういったことから案件の優先度が変わる側面もあります。
2024年から始まる新しいNISAもその一つであり、2022年末に新しいNISA対応は最優先プロジェクトとなりました。
本記事では、新しいNISAのUI/UXを担当することで取り組んだことを備忘録的に記載しています。誰かの気づきになることがあれば幸いです。
新しいNISAとは
新しいNISAについてはWealthNaviのページでまとめられているので興味があれば見てください。
新しいNISA概要表
UI/UX担当としてやったこと
さて、本題に入りますがUI/UX担当として主に以下の業務を進めてきました。
大枠の流れと簡単にやったことをまとめていきます。
1. 新しいNISAに関する法律や指針の理解
まずは新しいNISAがどういったものか、租税特別措置法と呼ばれる法律や日本証券業協会から発表されている資料を読んで解釈、理解に努めました。
特にWealthNaviは一般NISA(以下:旧NISA)を扱っていたため、新しいNISAと旧NISAでどのような制度の違いがあるのか。オペレーションの違いがあるのかを意識的に確認していきました。
e-Gov法令検索
2. 新しいNISAに対するユーザー状態を具体化
大枠の制度を理解したあとはサービスに落とし込んでいきますが、いきなり画面のデザインや要件から入ると目的からズレる可能性があります。
そのため、いくつか切り口を用意してユーザー像を作成することから始めました。
新しいNISAは年間360万円、生涯で1,800万円の非課税枠と変更されており旧NISAに比べて大幅に非課税枠が増えました。このことから長期投資を前提とした制度設計になっていると理解することができます。
そのため、切り口も投資できる期間である「年代」と投資できる金額である「所得」を定義しました。(さらにそれぞれ3つに分類)
別の切り口として、WealthNaviは金融サービスであること、NISA制度は一般的に見ると複雑な制度であることから「NISAを利用した投資経験の有無」も切り口として加えました。
なので、最終的なペルソナはこれらを掛け合わせた18通りのパターンになります。
ユーザー像(18パターン) = 年代(3パターン) x 所得(3パターン)x NISAを利用した投資経験の有無(2パターン)
とはいえ、18パターンもユーザー像が存在すると各ユーザー像の違いがわからないので、
-
各ユーザー像が対照的になっていること(似たようなコンセプトはデザインに差分が出にくい)
-
一定数のユーザーが存在すること
これらを前提に3つのパターンに絞りました。
# | 年代 | 所得 | NISAを利用した投資経験の有無 | ペルソナ像 |
---|---|---|---|---|
1 | 若年層 | - | なし | 社会人3年目の投資初心者 |
2 | 中年層 | 中所得 | - | 役職も上がってきて仕事や育児に忙しい人 |
3 | 高齢層 | 高所得 | あり | すでに退職している投資に詳しいお金持ち |
各ペルソナ像のユーザーストーリーも作成しました。
ここでは詳細を割愛しますが、以下のようにユーザーストーリーを作成してユーザーの解像度を上げるための作業を続けていきました。
ユーザーストーリー
作成したユーザーストーリーをベースに各ペルソナが新しいNISAに対してどういった要望がありそうか、その要望をデザイン作成のとっかかりとして2つのコンセプト案に落とし込みました。
コンセプト案をベースに画面の方針や具体的なデザイン案を考えていきます。
3. 新しいNISAに対するUI/UXの考え方を整理
画面の方針や具体的なデザイン案を考える前にUI/UXの考え方を整理していきます。
どういったコミュニケーションを前提にUI/UXを考えていくかなど、デザインを作成する上での指針やルールとなるようなものを作りました。
一般的に新しいNISAの制度は複雑で難しいため、すべてを説明しようとすると情報量が増え、画面も複雑になってしまいます。そのため、法律や顧客説明の観点で必須なものだけを画面上で表現して一歩踏み込んだ難しい話はコラムなど別ページで説明していくと合意して画面の方針の検討を始めました。
4. 考え方、制度に合わせた機能変更をもとに影響画面の洗い出し
新しいNISA対応によってどこの画面に影響が出るのか、どの画面から検討を始めるべきかの全体像の整理を行いました。
これを行うことによってどこまで検討が進められているのかなどを把握することができますし、客観的に伝えることも可能になります。
新しいNISAの全体像
5. 各画面の方針と要件
新しいNISAに対応していく中で影響する画面の洗い出しと対応方針を決めていきます。
各画面で必要になる情報は1番のUI/UXの考え方をベースに整理をしていきます。
顧客説明の観点はカスタマーサポートチームからご意見をもらうことでより納得感のある方針にしていきました。また法律の観点はどこまで表示する必要があるかコンプライアンスチームと連携をとっていきました。
6. 具体的な画面デザインと詳細仕様
具体歴な画面デザインは2番の画面方針とセットで進めていきますが、UI/UXの考え方や各画面の方針をもとに実際のデザインを検討していきます。
方針を事前に合意できていれば、あとは見せ方の問題となり、感性が出てくるポイントになります。一定のロジカルさは担保しつつ、デザインのパターンにあえて幅を持たせることに意識しました。
ある程度幅を持たせたデザインと画面方針について客観的に評価することで合意形成がうまく行えたと思います。
さいごに
金融の知識は難しい単語や制度が多いため、理解できずに避けてしまうものでもあります。
私もNISAという制度はしっかりと活用できるとメリットが享受されるものと聞いていながらも漠然とした制度の難しさから避けてきました。
こうしたユーザーを一人でも多く、ウェルスナビのミッションでもある「働く世代に豊かさを」を体現できる業界は社会的にもインパクトが大きく、そこに対して自分が考え抜いたものが反応として表れてくることに、とてもやりがいを感じることができます。
明日は、バックエンド開発マネージャー 大友 の「金融未経験からFintechベンチャーにJoinした今の感想」です!
お楽しみに!
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著者プロフィール
高橋 洸介 (たかはし こうすけ)
<プロフィール>
2019年7月、ウェルスナビにiOSエンジニアとして入社。
現在は開発PdMやPjMとして案件の推進に従事。
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