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SlackにAIのしかけを置いてみたら、いろんな発想が広がっていった話

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この記事は WiseVine Advent Calendar 2025 の4日目の記事です。

はじめに

はじめまして、株式会社WiseVineの池本です。

この記事では、SlackにちょっとしたAIのしかけを置いてみたら、
思いがけずいろんな発想が広がっていった——そんな話を紹介します。

しかけ自体はとてもシンプルで、
「Slackでスタンプを押すと、AIがメッセージをラップに変換して返してくる」
という、少しふざけたところから始まりました。

でも、このラップ返信をきっかけに、

  • Slackの空気が少し軽くなったり、
  • 会話が生まれやすくなったり、
  • さらには「これ別の用途にも応用できるのでは?」といった発想が広がっていきました。

つまり、
小さなAIのしかけが、“遊び”と“実用”の両面でじんわり効いていった、そんな話です。

この記事では次のような内容をお話しします。

  • ラップ返信が生まれた意外なきっかけ
  • スタンプひとつでAIが動く小さな仕組み
  • Slackの空気に起きた“ちょっとした変化”
  • この仕組みが思わぬ形で応用できた話

きっかけは突然のラップ返信

ある日、Slackで先輩が突然、普通の返信をラップで返してきたんです。

予兆ゼロ。
ただの仕様確認のスレッドが、急にラップバトルの現場みたいになりました。

意味はわからないのに妙に完成度が高い。
その場では笑って終わったのですが、
こういう「ちょっとした出来事」って後からふと気になるもので……

その直後、先輩からこんな依頼が来ます。

誰か作って欲しい
「slack投稿にある特定のスタンプをつけると、それをラップバトル風に変換した投稿が返信として投稿される機能」

後日、「Slackに“しかけ”を作ってみよう」と思い立ち、小さく形にして、動かしてみることにしました。

スタンプひとつでAIが動く“しかけ”

構造はとてもシンプルです。

Slack → ZapierのAI → Slack
という短い導線で成立しています。

複雑な機能ではなく、
「Slackにひとつしかけを足す」くらいの軽さがポイントでした。

興味あったら、ラップのプロンプトも見てください。

ラップ化プロンプト
あなたはラップバトルのMCです。
Slackメッセージを題材に、挑発的かつリズム重視でラップに変換してください。
内容はそのまま伝えながら、日本語主体で韻を踏み、母音押韻をベースに部分的に英語を混ぜたパンチラインを入れてください。

以下のSlackメッセージが与えられています:
{{message__text}}

必須要件:
- 出力は1小節=1行、各行は8〜12音程度にまとめること。
- 行数は自由だが、Slackメッセージの内容を十分展開する(最低6行以上)。
- 元メッセージの意味を正確に保ちつつ、ラップとしてリズム感を最優先にする。
- 日本語主体で構成し、英語は少しだけ強調のために使用する(例: "Check it", "Game Over", "Real Talk", "No excuse", "End of the show")。
- 母音押韻をベースに、所々に完全ライム(クラッシュ/フラッシュ/ダッシュ/スマッシュ等)を混ぜて「おおこれ韻だ!」と感じさせる。
- 同じ単語を繰り返さず、多彩な語彙を使う。
- ラップバトル特有の「挑発・宣言・煽り」を必ず盛り込み、強いパンチラインを入れる。
- 絵文字は禁止。句読点や「Yo!」でリズムを表現。
- 出力は本文のみ。

【例】
 

入力: 「資料を今日中に確認お願いします」
出力:
資料を確認今日中に完了  
サボる暇なし逃げ場は皆無  
レビューで真実全てを暴く  
遅れた瞬間負け犬が吠える  
Real Talkで未来を決断  
俺のチェックでシーンを支配する  

入力: 「サーバーAでCPU使用率が急上昇しています。原因を調査してください。」
出力:
サーバーAでCPUが暴走  
数値の乱れが示す異常  
原因究明その刃を研ぐ  
逃げる暇なし調査を急ぐ  
俺が修復 No excuse Yo!  
お前の怠慢 End of the show  

入力: 「明日までにタスクを完了してください。」
出力:
明日までにタスクを仕上げろ  
遅れる奴はその場で退場  
言い訳並べても意味はゼロ  
逃げ場はないぞ Deadline Hero  
俺が仕切ってゴールを決断  
お前の遅延は即刻アウトラン  

入力: 「今日中にレポートを提出してください。」
出力:
今日中にレポート提出しろ  
遅れた瞬間負け犬の証拠  
やるかやられるか二択の勝負  
No mercyで叩き込む構造  
俺のレビューで未来をCheck  
逃げる余地なし Game set next

実際どんなラップが返ってくるのか?

元となった文章:

過去、同じメッセージ出ました。
キャッシュが残っているかも?なので、ブラウザ全て閉じた後、実行してみたらPW設定できましたので、お試し願います。

AIラップ:

前にも同じメッセージ出たぞ聞いとけ
キャッシュが残ってる可能性だと踏んどけ
全部のブラウザ閉じてから再実行しろ
閉じて再実行でPW設定できたと証明しろ
怯む奴はそこで終わり、勝者だけが動く
Check it、手順はシンプル、原因を潰す
キャッシュとクラッシュ踏み潰すスマッシュ
No excuseだ、試さねえ奴はGame Overだ
今すぐ実行しろ、試さぬ者に未来は無い

内容はちゃんとしているのに、語り口だけMC調。
真面目なスレッドでも、返ってきた瞬間なぜか空気がふっと軽くなります。

Slackは文字だけの世界なので、こうした「遊びの余白」になる“しかけ”が案外効きます。

Slackの雰囲気が少し明るくなった

ラップスタンプはあくまで遊びとして始めましたが、
実際に使ってみると、小さな気づきがいくつも生まれました。

大きな変化が起きたわけではありません。
使い続けるうちに、Slackの空気がちょっとだけ明るくなった感覚があります。

  • スレッドがどこか柔らかく見える
  • 返ってきたラップに、ふっと笑いが起きる
  • 少し気まずい話題でも、入り口が軽くなることがある

Slackは文字だけの世界なので、温度が伝わりにくいことも多いですが、
こんな“ちょっとしたしかけ”が予想以上に雰囲気に効くのだと感じました。

AIは、日常の中に小さな余白をつくって、ちょっとだけ明るくする存在にもなる——
そんな気づきをもらえた瞬間でした。

この「小さなしかけ」、実は思わぬ転用ができた

遊びで作ったラップスタンプですが、
仕組みとしては非常に素直なので、別の場面でもそのまま使えます。

たとえば、不具合スレッドに🛠️スタンプを押すだけで——

  1. スレッド全体をAIが読み込み
  2. 「事象 / 原因 / 暫定対応 / 恒久対応」を整理
  3. botがテンプレとしてまとめて返信
    ということも可能です。

Slackの断片的な会話が、スタンプひとつで“まとまった情報”に変わる。

小さく置いた“しかけ”から、
「あれもできる」「これもやれそう」という発想が自然に広がっていった瞬間でした。

おわりに

今回の取り組みは、
大きなプロジェクトでも技術的挑戦でもありませんでした。

ただ、Slackの空気を少し柔らかくし、
コミュニケーションをちょっと楽にしてくれる“しかけ”でした。

そして、小さなアイデアを気軽に試せる環境があると、
そこから思わぬ発想が広がり、
日常の働き方がじんわり良くなることがあります。

SlackにAIの“しかけ”を置いたところから、
実用も遊びも含んだ新しい発想が数珠つなぎで生まれていく——
そんな体験をまとめた記事でした。

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