「経営学部のためのSaaSとサブスクリプションのデータ分析入門」の「SaaSの管理会計と経営データ分析」の章で顧客生涯価値(LTV,CLV)の式を紹介しました。
LTV≃r+CCRARPA(1+r)≃CCRARPA
このLTVの式を導出します。(数式でも式変形でも検索に引っかかりやすいように「数式変形」というタイトルにしてみました)
なお、等比級数の和の公式は私が覚えられないので使いません。
期間t、カスタマーチャーンレートCCR(>0)、割引率r(≥0)とします。顧客生涯価値LTVは
LTV=t=0∑∞(1+r)tARPA(1−CCR)t=t→∞limt=0∑T(1+r)tARPA(1−CCR)t
です。期間を無限大ではなく、期間Tまでの総和で考えます。
LTV(T)=t=0∑T(1+r)tARPA(1−CCR)t=ARPA+(1+r)ARPA(1−CCR)+⋯+(1+r)TARPA(1−CCR)T
両辺に、1+r1−CCRを掛けたものは、
1+r1−CCRLTV(T)=(1+r)ARPA(1−CCR)+⋯+(1+r)TARPA(1−CCR)T+(1+r)T+1ARPA(1−CCR)T+1
です。LTV(T)から1+r1−CCRLTV(T)を引きます。
LTV(T)1+r1−CCRLTV(T)(1−1+r1−CCR)LTV(T)=ARPA+(1+r)ARPA(1−CCR)+⋯+(1+r)TARPA(1−CCR)T=(1+r)ARPA(1−CCR)+⋯+(1+r)TARPA(1−CCR)T+(1+r)T+1ARPA(1−CCR)T+1=ARPA−(1+r)T+1ARPA(1−CCR)T+1
左辺は、
(1−1+r1−CCR)LTV(T)=1+r(1+r)−(1−CCR)LTV(T)=1+rr+CCRLTV(T)
です。一方、右辺は、
ARPA−(1+r)T+1ARPA(1−CCR)T+1=ARPA(1−(1+r)T+1(1−CCR)T+1)
です。CCR>0のとき、両辺にr+CCR1+r
を掛けると、
LTV(T)=r+CCRARPA(1+r)(1−(1+r)T+1(1−CCR)T+1)
となります。
t→∞のとき、(1−CCR)T+1は0で、(1+r)T+1は割引率r(≥0)より1以上なので。
LTV=t→∞limr+CCRARPA(1+r)(1−(1+r)T+1(1−CCR)T+1)=r+CCRARPA(1+r)(1−0)=r+CCRARPA(1+r)
となります。特に、r=0のとき、
LTV=CCRARPA
です。
デュレーションやユニット・エコノミクスの式変形は別記事で説明します。
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