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サブスクリプションの平均継続期間(デュレーション)の数式変形

2023/10/22に公開

「経営学部のためのSaaSとサブスクリプションのデータ分析入門」の「SaaSの管理会計と経営データ分析」の章で平均継続期間(Average Duration)の式を紹介しました。

AD=\frac{1}{CCR}

この平均継続期間ADの式を導出します。(数式でも式変形でも検索に引っかかりやすいように「数式変形」というタイトルにしてみました)
なお、等比級数の和の公式は私が覚えられないので使いません。

平均継続期間というように継続期間tに関する平均\mathrm{E}[t]をとります。継続期間tは課金(支払い)回数ともいえます。一度でも課金した顧客の継続期間なのでtt > 0の自然数です。\mathrm{E}[t]

\begin{aligned} AD&=\mathrm{E}[t]\\ &=\sum_{t=1}^{\infty}t\mathrm{P}[t]\\ \end{aligned}

です。ここでは、顧客がどのくらい継続するかの期間を考えています。例えば、N人の顧客がいたとき、顧客一人ひとりごとの継続期間は1,2,\cdots,T,\cdotsと自然数のいずれかになります。継続期間tとなる顧客数を考えます。t回以上継続している顧客数は解約率CCRとするとN(1-CCR)^{t-1}です。t回継続している顧客数は、t回以上継続している顧客数からt+1回以上継続している顧客数を引いたものなので、

\begin{aligned} N_t&=N(1-CCR)^{t-1}-N(1-CCR)^{t}\\ &=N(1-CCR)^{t-1}(1-(1-CCR))\\ &=N(1-CCR)^{t-1}\cdot CCR\\ \end{aligned}

となります。全顧客数Nに占めるt回継続した顧客数の割合は

\mathrm{P}[t]=\frac{N_t}{N}=\frac{N(1-CCR)^{t-1} CCR}{N}

です。よって、平均継続期間AD

\begin{aligned} AD&=\mathrm{E}[t]\\ &=\sum_{t=1}^{\infty}t\mathrm{P}[t]\\ &=\sum_{t=1}^{\infty}t\frac{N_t}{N}\\ &=\sum_{t=1}^{\infty}t\frac{N(1-CCR)^{t-1} CCR}{N}\\ &=\sum_{t=1}^{\infty}t(1-CCR)^{t-1} CCR\\ &=\lim_{T \to \infty}\sum_{t=1}^{T}t(1-CCR)^{t-1} CCR\\ &=CCR \lim_{T \to \infty}\sum_{t=1}^{T}t(1-CCR)^{t-1} \\ \end{aligned}

となります。最終時点Tとした場合の平均継続期間AD_{(T)}

\begin{aligned} AD_{(T)}&=CCR \sum_{t=1}^{T}t(1-CCR)^{t-1} \\ &=CCR (1+2(1-CCR)+\cdots+T(1-CCR)^{T-1} )\\ \end{aligned}

とします。両辺に(1-CCR)を掛けると

(1-CCR)AD_{(T)}=CCR (1-CCR+\cdots+(T-1)(1-CCR)^{T-1}+T(1-CCR)^{T} )

です。AD_{(T)}から(1-CCR)AD_{(T)}を引くと

\begin{aligned} AD_{(T)}&=CCR (1+2(1-CCR)+\cdots+T(1-CCR)^{T-1} )\\ (1-CCR)AD_{(T)}&=CCR (1-CCR+\cdots+(T-1)(1-CCR)^{T-1}+T(1-CCR)^{T} )\\ CCR \cdot AD_{(T)}&=CCR (1+1-CCR+\cdots+(1-CCR)^{T-1} )-CCR \cdot T(1-CCR)^{T}\\ \end{aligned}

となります。CCR>0として、両辺をCCRで割ると

AD_{(T)}= (1+1-CCR+\cdots+(1-CCR)^{T-1})- T(1-CCR)^{T}

です。

UAD=1+1-CCR+\cdots+(1-CCR)^{T-1}

とします。両辺に(1-CCR)を掛けると

(1-CCR)UAD=(1-CCR)+\cdots+(1-CCR)^{T}

です。UADから(1-CCR)UADを引くと

\begin{aligned} UAD&=1+1-CCR+\cdots+(1-CCR)^{T-1}\\ (1-CCR)UAD&=(1-CCR)+\cdots+(1-CCR)^{T}\\ CCR \cdot UAD&=1 - (1-CCR)^{T}\\ \end{aligned}

となります。両辺をCCRで割ると

UAD=\frac{1 - (1-CCR)^{T}}{CCR}

です。AD_{(T)}は、

\begin{aligned} AD_{(T)}&=UAD- T(1-CCR)^{T+1}\\ &= \frac{1 - (1-CCR)^{T}}{CCR}- T(1-CCR)^{T+1}\\ \end{aligned}

となります。よって、ADは、

\begin{aligned} AD&=\lim_{T \to \infty}AD_{(T)}\\ &=\lim_{T \to \infty}\sum_{t=1}^{T}t(1-CCR)^{t-1} CCR\\ &= \lim_{T \to \infty}(\frac{1 - (1-CCR)^{T}}{CCR}- T(1-CCR)^{T+1})\\ &=\frac{1-0}{CCR}-0\\ &=\frac{1}{CCR}\\ \end{aligned}

となります。
デュレーションと解約率変化に対するLTV変動率の関係は別記事で書きます。

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