「経営学部のためのSaaSとサブスクリプションのデータ分析入門」の「SaaSの管理会計と経営データ分析」の章で平均継続期間(Average Duration)の式を紹介しました。
この平均継続期間ADの式を導出します。(数式でも式変形でも検索に引っかかりやすいように「数式変形」というタイトルにしてみました)
なお、等比級数の和の公式は私が覚えられないので使いません。
平均継続期間というように継続期間tに関する平均\mathrm{E}[t]をとります。継続期間tは課金(支払い)回数ともいえます。一度でも課金した顧客の継続期間なのでtはt > 0の自然数です。\mathrm{E}[t]は
\begin{aligned}
AD&=\mathrm{E}[t]\\
&=\sum_{t=1}^{\infty}t\mathrm{P}[t]\\
\end{aligned}
です。ここでは、顧客がどのくらい継続するかの期間を考えています。例えば、N人の顧客がいたとき、顧客一人ひとりごとの継続期間は1,2,\cdots,T,\cdotsと自然数のいずれかになります。継続期間tとなる顧客数を考えます。t回以上継続している顧客数は解約率CCRとするとN(1-CCR)^{t-1}です。t回継続している顧客数は、t回以上継続している顧客数からt+1回以上継続している顧客数を引いたものなので、
\begin{aligned}
N_t&=N(1-CCR)^{t-1}-N(1-CCR)^{t}\\
&=N(1-CCR)^{t-1}(1-(1-CCR))\\
&=N(1-CCR)^{t-1}\cdot CCR\\
\end{aligned}
となります。全顧客数Nに占めるt回継続した顧客数の割合は
\mathrm{P}[t]=\frac{N_t}{N}=\frac{N(1-CCR)^{t-1} CCR}{N}
です。よって、平均継続期間ADは
\begin{aligned}
AD&=\mathrm{E}[t]\\
&=\sum_{t=1}^{\infty}t\mathrm{P}[t]\\
&=\sum_{t=1}^{\infty}t\frac{N_t}{N}\\
&=\sum_{t=1}^{\infty}t\frac{N(1-CCR)^{t-1} CCR}{N}\\
&=\sum_{t=1}^{\infty}t(1-CCR)^{t-1} CCR\\
&=\lim_{T \to \infty}\sum_{t=1}^{T}t(1-CCR)^{t-1} CCR\\
&=CCR \lim_{T \to \infty}\sum_{t=1}^{T}t(1-CCR)^{t-1} \\
\end{aligned}
となります。最終時点Tとした場合の平均継続期間AD_{(T)}を
\begin{aligned}
AD_{(T)}&=CCR \sum_{t=1}^{T}t(1-CCR)^{t-1} \\
&=CCR (1+2(1-CCR)+\cdots+T(1-CCR)^{T-1} )\\
\end{aligned}
とします。両辺に(1-CCR)を掛けると
(1-CCR)AD_{(T)}=CCR (1-CCR+\cdots+(T-1)(1-CCR)^{T-1}+T(1-CCR)^{T} )
です。AD_{(T)}から(1-CCR)AD_{(T)}を引くと
\begin{aligned}
AD_{(T)}&=CCR (1+2(1-CCR)+\cdots+T(1-CCR)^{T-1} )\\
(1-CCR)AD_{(T)}&=CCR (1-CCR+\cdots+(T-1)(1-CCR)^{T-1}+T(1-CCR)^{T} )\\
CCR \cdot AD_{(T)}&=CCR (1+1-CCR+\cdots+(1-CCR)^{T-1} )-CCR \cdot T(1-CCR)^{T}\\
\end{aligned}
となります。CCR>0として、両辺をCCRで割ると
AD_{(T)}= (1+1-CCR+\cdots+(1-CCR)^{T-1})- T(1-CCR)^{T}
です。
UAD=1+1-CCR+\cdots+(1-CCR)^{T-1}
とします。両辺に(1-CCR)を掛けると
(1-CCR)UAD=(1-CCR)+\cdots+(1-CCR)^{T}
です。UADから(1-CCR)UADを引くと
\begin{aligned}
UAD&=1+1-CCR+\cdots+(1-CCR)^{T-1}\\
(1-CCR)UAD&=(1-CCR)+\cdots+(1-CCR)^{T}\\
CCR \cdot UAD&=1 - (1-CCR)^{T}\\
\end{aligned}
となります。両辺をCCRで割ると
UAD=\frac{1 - (1-CCR)^{T}}{CCR}
です。AD_{(T)}は、
\begin{aligned}
AD_{(T)}&=UAD- T(1-CCR)^{T+1}\\
&= \frac{1 - (1-CCR)^{T}}{CCR}- T(1-CCR)^{T+1}\\
\end{aligned}
となります。よって、ADは、
\begin{aligned}
AD&=\lim_{T \to \infty}AD_{(T)}\\
&=\lim_{T \to \infty}\sum_{t=1}^{T}t(1-CCR)^{t-1} CCR\\
&= \lim_{T \to \infty}(\frac{1 - (1-CCR)^{T}}{CCR}- T(1-CCR)^{T+1})\\
&=\frac{1-0}{CCR}-0\\
&=\frac{1}{CCR}\\
\end{aligned}
となります。
デュレーションと解約率変化に対するLTV変動率の関係は別記事で書きます。
Discussion